ティッシュよし

ハンカチよし

携帯はこのスペースに入れてー

あ、財布財布・・・・っと


あーとーはー・・・・・


「栄口君のタオル!!」


そうだよ、忘れるところだった。

あたしは歯ブラシをくわえたままうろうろと部屋を歩き回る。
「友達から借りたやつだからしまわないでね!」と親に言っておいたら綺麗な紙袋に丁寧にたたまれて入れられていた。


・・・・あの泣いていた時がずいぶん昔の事のように思える。
喫茶店で栄口君に話をきいてもらった事。
そのあと隆也の家に行ってキャッチャー宣言したっけ・・・。
まぁ・・・・結局キャッチャーにはなれなかったのだけどね。
ってどんな思いでぇええーーー!!!?


自分で自分にツッコミを入れながらあたしはちゃくちゃくと支度を勧めていく。

うわーなんか緊張する。
一応にはついてきてもらうけど、そーゆーんじゃなくって。
なんかもうよくわかんないけど緊張する。
これが好きってことなのかな、そう思うだけで余計に心臓が五月蝿く感じた。


そんな時、ポケットの中で携帯が振動した。





「うわぁっとはい!!」

『ちょっと、今何処にいんのあんた。』

「は?家だよ。」

『・・・・は?』

「ああ、ハウス!ハウスハウス!」

『そーゆー意味じゃねーよ!!なんでまだアンタ家にいるのさ!?』

「え、だって・・・」


あたしは家の壁掛け時計に目をやる。


時間は9時45分。
試合は確か10時ぐらいからだからー・・・・・
とは30分に約束してたよね、うん。




・・・・・・うん?





「遅刻・・・してる?」

『してます。』

「・・・・うわーーーーーー!!!ごっめん!マッハで行くから!ちょ、待ってて!!ごめん!マジごめん!!」

受話器ごしでいつものため息が聞こえたあとに『待ってる』とあきれた声。
電話を切ったあとあたしは鞄と栄口君のタオルが入った袋を手にもって急いで家を出た。













「おっそい。」

「ごめんなさい。」

「ホントはバカだわー」

「おっしゃるとおりです。」

「しょーがない。ジュース一本で許してやろう。」

「ありがたき幸せ・・・。」



こんなやり取りは日常茶飯事だけど。
今日はどこか違う気がする。
きっとこのあと隆也に会うから。
隆也を、見るから。


そう思うだけで口元が緩んでいる。
そんな自分にすごくビックリした。
あたしは誰だよ?ついこの間までの自分が見たらきっと頭を吹っ飛ばされると思う。
これが恋の力ってやつなんだろうか?
よくわかんないけど。




、」

「え?」

「なんか幸せそう。」

「・・・・そうっすか?」

「自分が一番わかってるくせに。」

「・・・うへへ。」

「気持ち悪い。」

「・・・ご、ごめん。つーかキモイって言われるよりダメージ大きいよそれ!!」

「知ってる。」

「おぉおーーいい!!友達だよね!?ねぇ?」

「・・・・。」

「何目そむけてんの!?うんって言えよ!!」

「ほらほら、こんなコトやってる間についたよ。」



コンビニによって、ジュースを買って・・・・それでも長かったと思われる道のりがあっというまに感じた。
高校のもん。この学校に来るのも久しぶりだな・・・・。
みんな元気にしてるのかなぁ・・・・。
しみじみ思いながらグラウンドに足を踏み入れる。



もう試合は始まっているらしく他のギャラリーたちがわいわいとあつまっていた。
あたしともその中にまぎれて試合を見る。
練習試合なのにこんなの人があつまるなんて・・・・。
高校野球恐るべし。



「あ、あれ阿部じゃない?」

「え、あホントだ。」


バッターボックスに立つ隆也を指差す
あたしもじっと見る。
ヘルメットとバットが太陽に照らされて光って眩しい。
隆也の手にグッと力が入るのがわかった。











「「打った!!!!!」」


カキーンとすがすがしい、気持ちのいい音が聞こえた後あたしとは声を合わせて叫んだ。
他のギャラリーたちもわいわいと嬉しそうにしている。
その中から聞こえてきた声にあたしは思わず固まった。


「阿部君ってホントかっこいいよね!」

「うん!わかるわかる!!あのクールな感じなのもたまんないよねー。」

「あたしマネジ立候補しようかな〜」

「あ、ずるい!!」



キャイキャイとかわいい女の子達の声。
もちろん三橋君とか田島君とか他のメンバーへの応援の声も聞こえたけど、
ちらほらちらほらと聞こえてくる阿部の話。



試合は西浦の勝利で幕を閉じたが、
あたしはもはや試合なんてそっちのけで耳をそばだてていた。
時折聞こえてくる「阿部」という言葉に過剰に反応しているあたしに気づいたのか、があたしの頭をなでながら
「もてる男が彼氏だと大変なこと。」と楽しそうに笑う。


どーしよう。

隆也の事をかっこいいって思う人がまさかこんなにいたなんて・・・・・。
しかも結構かわいい子いたよ?
あたしの絶頂気って幼稚園よ?「おじょうちゃんかわいいねぇー」レベルよ?
どーすんの?ねぇどーすんの?おい!おい!おい!俺の筋肉!!!
いや、筋肉に聞いてどーすんの?それことどーすんのだよ。







!!!」

「うわぁ!!」



頭の中でのいつもの(無意味な)会議中に急にかけられた声にビクッと肩がはる。




そこには汗をしたたらせた少し汚れたユニフォームを来た隆也がいた。




「お、お疲れ様。」

「おう。」

「か、勝ったね。おめでとう。」

「・・・おう。」

「打ったね。すごく、ボールが、バットに、あたってたよ。」

「・・・・・・・・・・・・おう。」

「キャッチャーやってたね。すごく、防具が、かたそうだったよ。」

「何がいいてぇーんだよ。」


どうしよう。隆也の事は軽くそっちのけで周りの話が気になっててちゃんと見てなかったなんて言えない。
いや、見てたけど集中しては見てなかった・・・。全然どこのプレーがよかったとかは見てなかった。
あああああ・・・・どうしようどうしようどうしよう・・・・・。



「かっこよかったって事だよ。ねっ、?」



困っている事に気づいてくれたのか、あたしを横目でちらりと確認したがフォローしてくれた。


「そう!そう!!」


あたしが大きく頷くと眉にシワを寄せて「ふーん」と小さく隆也は言う。
そのあと、隆也はに目をうつした。



か、久しぶり。髪伸びてたからわかんなかった。」

「うん、久しぶり。そんなのびたかなー?」

「多分。つーか。」

「ハイ。」

「今日あと軽くミーティングして終わりだから待ってろ。」

「・・・・命令形ですか。」

「命令形です。」

「・・・・了解。」




「逃げんなよ」と言い残して隆也はみんなのところにまた走っていく。
の視線を感じたけど、それ以外の、もっと邪気というか殺気というか、なんとも気持ちのよくない視線も感じる。


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」


ひそひとと聞こえてくる女の声。
なんていってるかまではわからないけど、たぶんあたしの事だって言うのは検討がつく。



さーん。」

「・・・・なんでしょうさん。」

「ホントこんなアウェーの中なんとも心苦しいのですが・・・・・・私はバイトなので帰りますね。」

「いやいやいやいやいやいやぁああああ!!!!!!!」

「いやいや、あたしもわかってるよ、この空気はね、アレだって。でも・・・・」

「でも・・・?」

「お金、大切。」




その日一番いい笑顔を見せてはあたしの前から立ち去った。





「・・・・・・・・・・・。」


さっきよりもあたしを見る周りの目が厳しくなった気がする。
ホント何?なになになになになにぃいーーー!!?
怖いよ!なんかさっきまでかわいかった女の子達が一瞬にして般若になったんですけどー!?
あまりにその視線が怖くて怖くてあたしはひとまずトイレに非難することにした。
小走りでその場を立ち去る。
とりあえずあの恐ろしい視線から逃れることは出来たけど、またひとつ問題が。













「・・・・トイレどこ?」






いつのまにか校舎裏まできてしまっていたあたし。
かれこれ20分弱はうろうろしてます。
でもなー・・・これ戻ったら戻ったで怖いし。
ただでさえ一人であんな感じのところ居るの苦手なのに・・・・・。
あたしは諦めて校舎に持たれて座りこむ。
まだ日差しはあったけど、風が気持ちよかった。



携帯に連絡いれとけばいいよね。
そう思って携帯を鞄から取り出したときだった。





「あれ?さん?」




神の声?



「・・・・栄口君!!」





神の声でした。
そこには汚れたユニフォームにポケットには帽子、首にはタオルをかけた栄口君の姿があった。
「こんなところでなにしてんの?」とにっこり微笑みながらそばに来てくれた。





「栄口君〜・・・・。試合お疲れ様・・・・・」

「あ、うん。ありがと。っていうか元気ないね?どしたの?」

「うん・・・・。」



とりあえず今までの事を話す。
付き合うことになったと伝えた時はすごく嬉しそうに「良かったね」といってくれた。
でも女子の視線の事を話すとやっぱり苦笑いだった。




「う〜ん・・・そればっかりは俺にもどうにもできないかなぁ・・・」

「うん・・・・ごめんね。」

「でも、阿部さんの事そうとう好きだね〜」

「ぇええ!?」

何をいうのかと思えば!!
ばっと栄口君の方を見ると「そんな驚かなくても」と笑った。

「だって最近なんとなく機嫌いい気がするよ?阿部。あーさんとなんかあったなぁーとは思ってたけどね。」




隆也が?
ちょっと思ったけどそれ以上に嬉しくて、なんだか恥ずかしくてあたしは俯いた。
だめだ、これ。
口元にやけっぱなしで・・・だらしなさすぎる・・・。




「そそそそ・・・そーなんだ・・・・。あ!さ、栄口君の応援もしてる子沢山居たよ!!」

「ぇえ!?ほ、ホントに?」

「うん!いたいた!け、結構かわいかったよ!!」

「あ、あはは・・・。」


照れたように笑う栄口君を見てあたしははっと思い出す。


「そう!タオル!!!」

「え、あ。」



突き出された紙袋を見て栄口君も思い出した様子でそれを受け取った。



「なんかわざわざごめんねー。」

「いやいや!あたしの方こそありがとうね!!ホント助かったよ。」

「うん。なんかホントさん元気になってよかった。」


「ありがとう。」




多分こうやって隆也を好きって気づけて、
付き合うことになったのは栄口君のおかげでもあると思う。
彼の親しみやすさと、どこか暖かい雰囲気と、優しさはあたしを助けてくれた。
彼は自分では気づいてないけど、
すごい人なんだと思った。






「あれ、さん携帯なってない?」

「え、あ、ホントだ。」



あたし、いい加減自分で気づけるようになれ。
女子高生の意識がたりないぞ。
これだから隆也にもおっさんかって怒られるんじゃん・・・・・。





「はいはいナナでーす。」と十八番のネタで電話に出れば
昨日以上に不機嫌な声が聞こえてきた。




『今何処。』

「・・・・校舎裏に居ます。」

『んでそんなところにいんだよてテメェーはよぉおおーーー』

「だってトイレが何処にあるかわかんなかったんだもーん。」

『そんなわけわかんねー場所にあるわけねーじゃん。ったく手間かけさせやがって。バカ。』



最後に大きな舌打ちを一発かまされて電話を切られた。


「・・・・・・・。」

「・・・阿部?」

「・・・うん・・・今から来るって・・・」

「え、じゃー俺はコレで。」

「あ、うん。ごめんね、足止めさせちゃって。」

「全然。またなんかあったらメールでもして。」

「うん!マジありがとー!!あ、そう!」

「ん?」

「かっこよかったよ!栄口君!」

「え、そう?」

「うん!きっとかわいい彼女できるよ!!」

「・・・ありがと。」



栄口君は苦笑いでその場から逃げるように走っていった。



その何秒後かに、隆也が携帯を握り締めて







あたしの心肺機能を停止させるんじゃないかと思うぐらい




怒っているような、



悲しそうな、


不機嫌そうな



そんな顔で校舎裏の土を踏みしめるように一歩一歩あたしのそばへとやってきた。





真っ黒な目はまっすぐあたしを射抜くように見ていた。








ヘルプミー。



パルプフィクション。



ラブミードゥー。




また一波乱の予感がした。



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おーい!これ!なんだこれ!!ダラダラダラダラ長いだけでなんの面白みもねぇーーーー!!!
やっぱり連載は向いていないんだよーーーーわーたーしーはぁあーーー!!!!!!
ほんとごめんなさい!みなさんごめんなさい!ホントすいません!!!(土下座)
なんか、こう、うん、なんか楽しく書きたいのに!!思い通りにならないよぉおおーーーーー


ここまで読んでくださってありがとうございました!!