馬鹿


隆也も



あたしも



馬鹿。





馬鹿なあたしは自分の家にいるにもかかわらずに「帰る!!」と言って家を飛び出して、
その後まっすぐに彼女の家へと向かった。
「・・・・どしたの・・・?」と、はじめは驚いた様子であたしを招いてくれた彼女だったけどあたしの話を聞いてすぐに呆れたように笑う。


「あいかわらず馬鹿だねぇ・・・」

「馬鹿じゃないって!今回は完全に隆也のが馬鹿でしょ!?」

「どっちも。」

「なっ!」



ため息交じりでがいった。



はそれヤキモチやいてんだよ。」

「ちがーーーう!!やいてない!断じて妬いていない!そーゆー事じゃないんだってば!!」


なんもわかってないんだから!は!といわんばかりにあたしは手足をバタバタさせて訴える。
ヤキモチなんかじゃない!そんなんじゃなくって!!なんていえばいいんだこの感情。
ボキャブラリーが少なすぎて言い表せないよ!!
もどかしさにイライラさえしてきた。

そんなあたしを見ては長いため息をつく。



「あーもーはいはい。わかった。じゃー別にいいじゃん。阿部がどんなこと一緒にいようがさ。」

「それは・・・そうなんだけど・・・・でもそしたらあたしと栄口君だっていいじゃん!!」

「阿部は素直にやだって態度であらわしてるじゃん。」

「・・・だ、けど・・・それは・・・でもそしたら隆也のしてることは!!」

「阿部は散々態度で表してんでしょ。と違って。」

「・・・・!!」

「だいたいがやだって思うことを進んでするような奴には思えないけど。」

「・・・・・・・・。」

「もちろん栄口君とやらと何もないのは阿部自身もわかってることだろうし、阿部がそのクラスの女の子を恋愛対象としてみてないのも自身わかってることなんだよね。」


優しいの目がまっすぐあたしを見た。


「大切なものをさ、大切にしたいって思う気持ちがお互い空回りしてるようにあたしは感じるなぁ。」


の言葉が胸に突き刺さったみたいにいたかった。


はもっと素直にならないとね。阿部に対してももちろんそうだけど、まず自分にたいして。」

「・・・・素直・・・・」






が「ちょっとまっててね。」と部屋を出て行ってからあたしは膝を抱えて考えていた。


素直。


簡単なようで、とても難しいこと。


本当は気づいてた。
あの雨の中二人でニケツしてた姿。
お似合いだと見とれた自分。
栄口君と見た二人の横顔。
うらやましいとさえ感じた。
このもやもやがなんなのかうっすら気づいてた。


でも、やだった。
自分が自分じゃなくなるみたいで。
それが何かなんて知りたくなかった。



ホントは、


怖かった。
あたしの知らない女の子とあんなに楽しそうに話す彼を見るのが。
不安だった。
あの子じゃなければ隆也は一緒にいなかったんじゃないかと。
いやだった。
自分にとって初めての気持ち。
汚くて醜い嫉妬。


でも一番やなのは自分。
わかんない。
恋とか愛とか彼氏とか彼女とか。
そういい続けてきただけに
ずっとそばにいてなんでもわかってるつもりだった幼馴染が恋人になって
色んな事が変わっていって正直自分の気持ちに素直になれなくて
まだそんな自分を受け入れたくは無くて。




ああ、

あたしは何年も何年も隆也と一緒にいるのに。
彼が何を求めてて
何を考えてて
何を知りたいのかわからない。










。」

カチャリと回って開いたドアの隙間からがあたしを見ていた。

「・・・・。」

「下に向かえ来てるから今日は帰りな。」

「・・・・。」


あたしは黙って頷いた。
彼女の優しさだと思う。
あたしもこんなお泊りはやだし。

あーあ・・・・
お母さんになんて言おう。
でも迎えに来てくれるなんて思ってなかったからちょっと感激。



なんて思っていたらのお母さんにポンと肩を叩かれ「素敵な彼氏ね」なんて
言われた。


へっと思って玄関の方に視線を移すとそこには鋭い双眼。







「・・・・・。」

「帰んぞ。」

そこでだだをこねるわけもいかないし、そんなつもりもない。
玄関で「お世話になりました」と頭を下げてから自転車の荷台にまたがった。





「・・・・。」




沈黙を掻き消す風を切る音。
風が冷たい。





。」

「・・・・。」








「ごめん。」



隆也の真剣な言葉にずっとつぶっていた目を開けた。





「俺さ」







「多分が思ってる以上にのこと好きなんだよ。」

「・・・。」

「前も言ったと思うけど、キスしてーし、抱きてーし、そばにいてほしいし、」

「・・・うん。」

「嫉妬だってもちろんする。」




少し前のめりになった隆也の背中は




「お前が思ってるような幼馴染の俺はさ、俺じゃないから。」




あたしが思っていた以上に広かった。







「・・・・・それは、あたしも・・・お、おなじ・・・・だと、思う・・・・。」

「あ?」


普段の元気なあたしからは信じられないぐらいに小さな声に隆也が「きこえねぇ」と少しおおきめの声で言った。


「あたしも!!あたしも同じ!!今まではそーゆー自分が許せなくってさ!そんなあたしはあたしじゃないと思ってて・・・・でもやっぱり隆也が好きで・・・・」


素直になれ
素直になれ
素直になれ
何度も自分に言い聞かせてるのに
上手く言葉をつなげられない自分がもどかしい。






「だーーーー!!!!ごめんね!!!こんなあたしでごめん!!こんなあたしをす、好きになってくれてありがとう!!」




とりあえず、今一番伝えたかったコトを大きな声で叫んでみた。
ホントはもっともっと色々考えてたはずなのに口から飛び出たのは色気の無い言葉。

すると、キキーッと耳につく音を立てて自転車が止まる。
あたしは前にずんのめってほぼ全体重を隆也の背中にかける形になった。
おもいっきりよりかかった背中はとても熱くてドクンと胸が鳴った。



「た、たか・・・や?」


急にどうしたの?
そう聞こうと思って体を少し離して顔を上げると
大きな隆也の手が頬に触れて

ゆっくりと隆也の顔が近づいてきた。



キスされる!


そう思ってぎゅっと目を閉じたとき、



「いったぁあい!!!!!」



あたしの予想を裏切ってゴチーンと鈍い音が脳を揺らす。
でこが痛くて熱い。
何々!?なんで頭突きだコラァ!!


バッと目を開ければ


そこには頬赤らめた隆也がいつも以上に眉間にシワを寄せて下唇を噛んでいた。






「・・・・お前はよぉおーーーー!!!」

「何さーーー!!痛いじゃんか!馬鹿!!」

「あーもぉー・・・んでそういつもいつも・・・・・・」

「・・・いつも何・・・・」


何かを言おうと口をあけるも少し考えて隆也はクルリと前に向き直ってしまった。


「・・・・なんでもねぇ。」


「なっ!!!ずるい!!」

「ずるくねぇ。」



彼はまたペダルを踏んで自転車を漕ぎ出す。



「やり逃げ!!」

「意味ちがうし。」

「痛い!!」

「うるせ。」

「・・・・!」


こいつ・・・・!
なんて奴だ。

そう思いながらも彼のシャツをきゅっと掴んでみた。

簡単には変われない。

簡単には隆也の事はわかんない。


でも努力すればいい。

わからなければわからないなりに考えればいい。

わかる努力をしよう。

考える努力をしよう。



常に素直でいろってことじゃなくて



大切なときに素直になれればそれでいい。




それがあたしらしくて


隆也らしいってことで。






「おい。」

「なに。」


あたし達はあたし達のペースで行けばいい。





「後から別れたいなんていっても、もうおせぇーからな。」







「え、断られても墓場までついていくつもりだけど。」





それがあたしたちらしいってことで。



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とりあえず一難さりましたね。
・・・いやなに?人事!?
ホント自分でもびっくりしてます。
ノープランはだめです。これがよくわかりました。
ああああ・・・・どうしよう。どうしよう・・・・。
グダグダでピリオドが見えません・・・・!
でもやっぱり恋人になった二人にはせめてセックスぐらいは・・・・ねぇ・・・・(ぼそぼそ)




ここまで読んでくださって本当にありがとうございました!