えーと



はい、

あれです。








ピンチです。











「隆也君、隆也君。」

「あー?」




「これどーゆー状況?」



あたしが軽く首をかしげて笑顔を向けると、
覆いかぶさったままの状態で隆也がため息をつく。





「んなの考えりゃわかんだろ。」




「俺が、」




「うん。」





「お前を、」



「うん、」




「襲ってんだろ。」


「うん」





「つまりあれだよね。受け身側から言うとさ、」

「おう。」



「あたしが」



「うん」



「隆也に」



「うん」



「襲われてるんだよね?」



「うん」




「・・・・・・・・・・・・・・・。」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・。」







っておいコラ。



「いやいやいやいやいやいやいやいや。違う違う違う違う。」


「何が。」


「何がって!だっ、ひゃっう!!!!」




すっとシャツの裾から入ってくる隆也の手に体がビクンと反応する。




「現実だけど?」



低く冷たい隆也の声があたしの耳に響く。
それと同時に彼の手がするすると上がっていく。

触られたところが熱い。




「隆也!嘘、冗談・・・・・」

「冗談でもなんでもねーよ。」

ぐっと両手で隆也の胸を押し返そうとしてもやっぱり男の力にはかなわない。
どんどん隆也はあたしに覆いかぶさってくる。
っていうか重いし、
あ、なんかいい臭いする。
なんだこいつ!部活やってきた後のくせして!!


とかのんきに思っているうちにどんどんと隆也の右手はあたしの体をまさぐっていき、胸のあたりをいったりきたりする。





「ほら、やわじゃねーんだろ?抵抗してみろよ。」


クスリと悪魔のような笑みを浮かべながら隆也が笑った。
それにもう涙目になりながらあたしはぶんぶんと首を振ることしかできない。
ドンドンと彼の胸板を叩いてみても、足をばたつかせてみても、微塵も効果はない。
ああ、あたしこのまま隆也と・・・・・・っておぉおーーーーーーーい!!!!
怖い!!この子こわいよー!!誰か助けてぇえええーーーー!!!!





「隆也やだ、やだ・・・お願いやめ・・・」


必至の訴えもむなしく隆也の手がそっとあたしの胸のふくらみを触る。
彼は余裕の笑みのままあたしを見下ろしていた。


「やだ?やめて?そんなんで止められたら男じゃねーだろ。有沢だってそーだよ。」




う・・・・・・・・・・・・・・・
もうこうなりゃ腹をくくるしかない。
相手が隆也なら、遅かれ早かれ・・・・・・
あたしは決心してぐっと目をつぶる。

来るならきやがれ!!

ジャストドゥーイット!!
がむしゃらにぃいーーーーー!!!!





「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」






「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・おぃうう!!!」






ゴッと重みのある音とそれに伴った痛みがあたしの額に走る。
隆也がでこを殴った。
女の子に対してグーってどうなの!?どうなの!?
あたしが「うぅうううううう・・・・・」と低い声で呻いていると体が軽くなる。
隆也がゆっくりと体を離してベットに座りなおした。








「・・・・・・・・・反省したか?」


溜息混じりの隆也の声。



「はい・・・・・ごめんなさい・・・・・」


あたしはさっきの羞恥がまだ抜けないまま顔を両手で覆いながら軽くうなずく。
なんかもう全てにおいて恥ずかしい・・・・・。
やわじゃないとかぬかしてこのざまだし、
一人で勝手に来るならきやがれとか覚悟してるし。
しかも触られた瞬間のドキドキったら思い出すだけでも顔から火が出そうだ。



ふう、と一息はいてあたしもガバッと体を起こす。

その様子を隆也がちらりと横目で見た。



「気をつけること。」

「う、・・・はい。」

「なるべく二人っきりにはならないこと。」

「はい。」

「爆弾発言しないこと。」

「・・・・はい。」

「俺にポカリをおごること。」

「いや、それは違うべ。」

「・・・・・んでそこは冷静だ?引っかかる空気だろ。」

「お金が絡むとそう簡単にはいきやせんよ兄貴。」

「・・・・ですよねー。」





あたしたちはくすくすと笑った。
二人で肩をすくめる。





隆也は心配症すぎると思っていた。
でもそれって違う表現すればあたしをすっごいすっごい大事に思ってくれてるってことで
それってあたしにとってすっごい幸せなことなわけで。
恥ずかしいし照れるし柄じゃないけど
こうやって女の子扱いされるのは嬉しいかもしれない。



そんなことを思っていると少しだけ頬が熱くなった。
恥ずかしくて隆也を見れない。
あたしは少しうつむいた。






。」

「何?」


隆也を見づに返事をするとすぐあたしの手元には隆也の手があって、


おでこにはさっきのげんこつとは違う感触。
やわらかい唇が、優しくそっと触れる。



「・・・・・・・・・・約束の日。」

「・・・・・・・うん。」

「途中で無理とかヤダとか言われても俺止めらんねーよ?」

「・・・・・・うん。大丈夫。わかってるよ。」

「・・・・・・・・・・そか。」

「うん。約束は約束だ。基本的には守る。」

「基本的か。」

「絶対守ります。だからそのグーをこめかみから是非とも外してください。」

「おう。」












隆也の声が少し震えてるように感じたのは、隆也も真剣に考えてくれてるからで
余計に恥ずかしくなってあたしはさっきよりも深く俯いた。





そのあと、隆也が帰って
親が帰ってきて

数日が過ぎて






足も驚異的な回復力をみせすっかりよくなったころ。








あたしは風呂上がり、とんでもないことに気づく。
















「・・・・・・・・・・・・・・・・・。」









太った・・・・・・・・・・・・?














隆也との約束まで残りあと一週間となった日の月曜日の朝。





鏡の前で青ざめる。




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久し振りの連載あっぷこれ!?
え、これ!?
・・・・・・・・・・・・・・・これはないでしょ・・・・・・・・・・・・。
自分でも絶望しております。


とにもかくにもここまで読んでくださって本当にありがとうございました。