涙がでちゃう



だって




女の子だもん。








「・・・・・・・・・・・・・・・・・。」



「・・・・・・・・・?」


「・・・・・・・・・なんでしょうか・・・・。」


「・・・・・・・・・・今日も?」




の問いに下唇がちぎれるんじゃないかと思うくらいに噛みしめながらあたしは黙ってうなずいた。
それの返答はの静かな溜息だったりする。




「あんたねぇ・・・・一週間なんも食べない気でいるんじゃないでしょうね・・・・」

「まさかぁ・・・朝は食べてるし夜もちょこっと食べたりしてるよ・・・夕方とかに。」

「今日で4日目じゃん!お昼食べないの。だいたい何食べてんの?」

「バナナとか・・・ヨーグルトとか・・・ユンケルとか・・・。」

「うん。最後おかしいな、最後。無理やりテンション上げようとしてるとしか思えないもの入ったな、うん。」

「・・・・あたしには時間がないのぉーーーー!!!!!」





しょうがないじゃん!!!!


隆也との約束の日まで残り一週間となった日。
あたしは頭を抱えて、

足りない知恵を一生懸命振り絞ってみた。


今から体のことを気にしながら痩せる。

・・・・・・何年先のプランですか?

ということでボツ。

走ったり筋トレする。

・・・・・筋肉痛になって終了。結局これも何か月かかるんだって話です。
それに運動嫌いな私には無理。たぶん無理。ごめん無理。

ということでボツ。






残る方法はただひとつ。









食 べ な け れ ば い い 






冷静に考えろ。


人には基礎代謝というものがある。
一日中寝ているだけで最低でも1000キロカロリー消費するといわれている。


つまり


一日の食事や水分補給で1000キロカロリー以下の摂取を心がけることによって、
毎日体重は落ちていくのではないでしょうか・・・・・?














あたしって














「・・・・・頭いいかも。」














マジでそう思っちゃった瞬間でした。

















「・・・・・・・・・いや、別にそんなん頭良くないっしょ。」



が頬杖をついて、哀れな子を見るような眼であたしを見る。
久し振りの友人のこの冷たい態度に気持ち胸が躍るのは私がMということなのでしょうかチクショウ。



「とりあえずあと残り少ない日数であたしは痩せなければならない。I will do my best。」

「なんで英語使った。使いたくなっちったか。とりあえずそれは賢明とは言えないです。」

「なぜですか。僕はもう・・・飛べない豚を卒業します!俺は飛べる豚になるんだ!飛べねぇ豚はただの豚だぁああああああ!!!!」




あたしの叫びを止めるようにの手があたしの頭に乗っかった。
ビクリと体が強張って、口を止めて彼女を見る。

は真剣な表情であたしをまっすぐ見つめた。
その瞳が揺らぐことはなくて、
真っ黒な彼女の眼からあたしは視線をそらすことができない。




「意味分かんないし、やっぱり馬鹿。」


「・・・・!」







「心配かけるような生活は何かあった時に自分が辛いとかそれだけの問題じゃないよ。あたしも、きっと阿部だって怒るし、そんなを望んでない。だからね、無理だけはしちゃだめなんだよ。」









ごくりと唾をのむ。




すっごい




ドキドキした。





なんか嬉しくて、
が格好よくて、
注意されてるのに、口元がうずうずして

にやけずにはいられない。







「分かった人ー」


「はぁーーーい!!!」


「はーいちゃんはお利口ですね〜お利口な人にはご褒美をあげたいと思いまーす。」


そう言って軽くあたしの頭をなでた後が鞄から何かを取り出してあたしに投げつけてくる。
その距離60センチもないぐらい。
痛いです。
肩らへんにあたったそれをつかむとウィダインゼリーのダイエット。




「・・・・・・・っ!!!」



バッと彼女のほうを見ると「こっち見んな。」と口先をとがらせる。


わかってる。
照れ隠し。
でもあたしが「ありがとう。」といって笑ってみせると、
お母さんみたいな目であたしを見るんだよね。
その顔も大好き。


やっぱりあたしはいい友達を持ったもんだと改めて思った。
それをちゅうちゅうと吸ってから授業に臨んだものの、
気持は満たされても体は満たされないようで。
やっぱり体調はよくない。


でもそれは自業自得だから学校は休めないし、
具合が悪いだなんて言えないわけで。
ひたすら気のせいだと思い込むしかなかった。




気のせいなわけがないのに。




それでも隆也のひきつった顔は見たくない。

こんな体を見せるぐらいなら、体調不良で入院したほうがましだ。
・・・・・死にたくないから死んだほうがましとかはない、うん。
そこは正直だよあたし。






ううう・・・・・でもお腹減って死にそう。
というか気持ち悪い。
くらくらする。



そんな最悪コンディションなのに授業は薄情にも体育。
しかも炎天下。外。女子ソフトボール。

殺す気か。



あまりの暑さに、何に対してかわからない舌打ちをかます。




あたしのポジションは一塁。
なんでこんな体調悪いときにこんな大事なポジションをまかされるんだろうか。
何度も断ったのに「さんしかいないって!!お願い!ね?ハイ決定!!!」



ぇぇぇええぇぇぇぇえええええーーーーーーーーーーーーー!!!!!?





無理やり押し付けられるという始末。

断れきれなかったあたしが悪いのか、押し付けてきた向こうが悪いのか。
よくわからないけど引き受けてしまったからにはきっちり仕事はこなす。


それがあたしってもんで。



バッターボックスに人が立った瞬間に少し身を前傾姿勢にして集中する。
カキーンと気持ちのいい音が鳴れば、





びっくりするくらいまっすぐあたしのほうへとボールが飛んできて、グローブにすっぽりと納まる。
ついでに三塁に走ったおバカさんもさしてやれとあたしは三塁にボールを投げる。
小さい頃に隆也としたキャッチボールは無駄にはならなかった。
きれいに弧を描くことなく、レーザーのように飛んでいくボールは三塁にいるのグローブにきれいにおさまって。
おバカさんにタッチして。



2アウトってやつです。





周りからは「ナイスー!」とか「さすが!!」とか歓声が聞こえてきて悪い気はしない。
ちょ、そんなに褒めるなよ!!嬉しいだろ!!!







あたしの悪い癖。







褒められると、







調子に乗る。















ぴんと張っていた



精神の糸的なものが



一瞬で切れて

















ブラックアウトした。









































。」

「・・・・起きろ。」

「・・・・・・・・・・・。」








聞き覚えのある声。
あたしの名前をこんなに愛しそうに呼んでくれるのは











隆也・・・・・・・・・・・?










目を開けると、目の前には隆也がいて





すごく悲しそうな顔であたしを見ていた。







ああ、心配かけちゃったんだね。
ごめんね。
彼の差し伸べた手をあたしはぎゅっと握った。








・・・・・だいじょぶか?」


大丈夫だよ・・・。
なんだか今日の隆也は気持ち悪いぐらい優しいんだね。



そう言いたいのに、声が出ない。
あたしは必至に笑って見せた。




・・・・・・俺な・・・・・」


うん、どうしたの?











「スタイルがいいピチピチギャルとじゃなきゃセックスできねーや・・・・だからごめんな。別れよう。」

















・・・・・・・・・・・え?





ぇえええぇえええぇぇぇーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!?





信じられない隆也の発言にあたしは目を見開いた。
ちょ、え!?ぇえ!!?
マジでか!マジでなのか!?っていうかぴちぴちギャルって!!!
どこの亀仙人だ!どこのエロ仙人だ!!死語っていうかなんかもう逆に新しいよ!!!
そのユーモアセンスどこで学んだんですかぁああああーーーーー!!!!


必死にあたしが手を握って眼で訴えても、隆也はあたしを見ようとしない。
え、結局あたしはただの飛べない豚ってことですか?
いや、豚?豚ってこら。
レディーですよ。







「それじゃあ俺・・・・同じクラスのあの子と付き合うから、手ぇ離せ。」









急に冷たく耳に届くのは何の感情もこめられていない隆也の言葉で。
あたしはそれでもその手を離せないでいた。


やだよ。

隆也。

行っちゃやだ。





この手を離したら、



もう二度と隆也に会えない



そんな気がしたから。



ギュッと、ギュッと懇親の力をこめてあたしは隆也の手を握っていたはずなのに、
びっくりするくらい簡単にするりとほどけてしまった。





あ、



手をのばして、

出ない声で必死に隆也のことを呼ぶけど

振り返ることのない彼は


最後にあの子と腕を組んでいってしまった。


鉛のように重い体は持ち上げることもできなくて、
あたしはただ涙を流した。








「・・・・・・・・・・・・いっちゃ、やだ、よぉ、っぐ・・・・・へぇん・・・」









こんな寂しいときは、


あの公園に行って泣いて、

隆也が迎えに来てくれた。


でも、

もう隆也は来てくれない。



あたしはむなしく伸ばした手で空気を指に絡めた。



目の前が暗い。


この世で独りぼっちになったみたいに寂しい。



一人でいるのは好き。

でも独りぼっちは嫌い。


いつだって誰かがいるって事実がほしかった。

隆也がいるって。

がいるって。

家族がいるって。


だから、この手を


一人にしないで。


らしくないと人は笑うかもしれない。
でも、ほんとのあたしなんてこんなもんなんだ。
明るくふるまって元気な姿見せたって、
さびしいって思ったり、
いっちょまえに誰かを守りたいとか思ったり、
誰かに愛されたいって思ったり、
すきすきって思ったり、
それで悩んだりするんだよ。

チクショウ。




そんな時ぬくもりを求めていた手に感じたぬくもり。
誰の手かはわからなかったけど、ぎゅっと握った。
なんだかその手が「とりあえずゆっくり眠ったらいい。」と優しく言ってくれた気がして、
あたしもよくわからないけど安心して眠りに落ちた。














その手が






誰の手かなんて思いもしなくて。








-------------------------------------------------------------------------------------------
え、これ・・・・阿部とヒロインの物語ですよね?
阿部出てきませんけど、いいんですか?


ダメ・・・・・ですよね・・・・・・。


すんませぇえええーーーーーーーん!!!!!!!!!!!


ここまで読んでくださって本当にありがとうございました!!!!