いつだってそうだった。


あいつは何も言わないんだ。



苦しくったって



悲しくったって


辛くったって




笑って見せるんだ。



それが俺をいら立たせて、



悲しくさせることも知らずに。










「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」



5時間目の授業の半ばぐらい、
俺は携帯を握りしめたまま青ざめた。




からの着信が2件。
メールが一通。







Re:
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大変
が倒れた
迎えにこい
たぶん阿部のせいだ
いや正確には阿部を想うあまりの、
馬鹿なのせいなんだけど。
とにかくヘルプ。
別に来なくてもいいけど、
来たら
かっこいい。












「先生。」

「どうした?阿部。」

「ちょっと俺・・・・・具合悪いんで保健室行ってきます」

「・・・そうか、じゃあ・・・・・誰か付き添ってやりなさい。」

「無理です。そいつの顔面にはいちゃいそうなんで。今すぐ保健室に行かせてください。行きます。失礼します。」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」




あんぐりと口を開けて俺を見る教員。
それは俺が教室を飛び出したから、
それともとんでもない形相で教員を見たからか。
言い訳が下手すぎたからか。


俺らしくない、意味のわからない言い訳。

俺自身もよくわかんねー。


とりあえず今わかるのは





「・・・・・・・・・っ!!」




のところにいかなきゃなんねーってことだけ。






全力疾走で階段を3個とばしで駆け降りる。


のってあんなキャラだったか?
とりあえずあのメールの雰囲気だと大したことはなさそうだ。
それでも、
気になった。



俺のため?


なんであいつが俺のせいで倒れるんだよ。



意味分かんねーよ。(あいかわらず)


ほんと女ってよくわかんねーとか言うけど、は特別意味がわからないと思う。
わかりやすいようでよくわからない。
いつも笑っているようで
ほんとは笑ってない。
悩みなんてなさそうで
ほんとはいろいろ考え込んでる。



あいつは昔からそういう奴で。





頼れといっても頼らない。




「隆也はいいんだよ!別になんもしてくれなくて!!余計なことすんな!!」


「あたしが求めてる隆也は悩み相談聞いてくれるような奴でもなくて、

あたしに甘い言葉を投げかけてくれるキザボーイでもなくて、

野球に夢中で口悪くて目つき悪くて、でも優しさがにじみ出ちゃうようないつもどおりの隆也だからさ。」






よく意味はわからないけど、


特別なにかしてほしいわけでもなくて、


言いたいことを我慢しているわけでもないらしくて、




本人いわくそのままでいいらしい。





だからこそ



俺が気づいてやらなきゃいけないと思った。



が言うのを待つんじゃ意味がない。
一生言わないんだから。


俺ができるだけあいつの異変に早く気づいて、その処置をする。
傷口が膿まないように。



そうしてやれば自然と傷は閉じてくんだ。




そういうめんどくさい奴なんだ。









「・・・・・・・・・・・・ったくよぉおおおーーーーー!!!!」




自転車置き場まできて、とうとう声が出る。

今回はグリグリやるだけじゃ済まさない。
とりあえずチョップ千回くらいかます。
泣かす。





舌打ちを連打しながら俺はチャリにまたがってペダルを力いっぱいこいだ。

もうチッチチッチ言いすぎてほんとにイライラしてるのかふざけてるのかもよくわからない(いやふざけてねーけど)
なんであいつは問題しかおこさねーんだよ。
そのたび俺が・・・!


小学生の時だって笑いながらドッチボールしてたかと思えばお腹痛いとか言って泣き出して、俺が担いで家まで連れて帰ったり

中学の時なんて俺が保健室に無理やりつれていかなったら40度も熱出してんのに部活に出るところだったこともあった。


あああああーーー!!!!
俺はあいつの母親じゃねぇんだぞぉおーーーーーー!!!!!!






「っ・・・はぁ・・・・っはぁ・・・・」







キキィーーーっとブレーキを踏む音に反応したのか人影が近づいてくる。
それがとわかると俺は自転車のスタンドを立てて彼女に駆け寄った。




「お疲れ!彼氏!!」

「・・・んなのんきな・・・!」

「いやー早い早い。あいかわらず世話やくねぇ・・・」

「・・・るせぇ・・・」



息が上がりすぎてツッコミもままならないまま俺は校内を案内される。
まだ授業中のせいか廊下はしんと静間に帰っていた。
がなんでこうやって平然とここを歩いていて、
俺も平然とここを歩いていて
なぜ怪しまれない・・・
少し気になったが、もうどうでもよかった。




「倒れたってどういうこと?」

「いや、まんまの意味だよ。倒れた。体育のときにぱったり。」

「なんで?」

「たぶん・・・無理なダイエットだと思うよ〜?」


「にやにやしながら俺を見るな・・・。つーかあいつはどこまでお前に話してんだよ!!?」

「え、もう全部だけど。」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・〜っ!!!」




俺は声にならない声で叫ぶことしかできない。
親友がいることはいいことだと思う。もちろん。
でもなんでも話していいもんか?っつーかおれのプライバシーは!!


「阿部顔怖すぎる。なんかごめん。」

「・・・・別に・・・・。」



「それじゃあたしはここで!!あと、うん!怒らないで!色々ごめんね!」そういって俺を保健室の前まで連れてくるとはさっと走って消えていった。
最後の言葉とあいつの楽しそうな笑みがなんだかひっかかる。

怒らないで?
何に?もう怒ってるし。
しかもあいつが謝ることか?
色々って?

それにがあんな風に笑う時、


なんだかいやな予感がする。






「しつれいしまー・・・・っす・・・・」



ゆっくりと扉を開ければ鼻をかすめる薬品の匂い。
中に入ってもしんとしていて、人がいる気配を感じられなくて。
早々とベッドの方へ足を急がせた。





「・・・・おい。・・・・・・・・・・」








俺の眼に飛び込んできたのはアンモニアなんてはるかに超える刺激。








脳みそがピリピリした。















「・・・・・・・・・・・・。」













しっかりと手をつないで、

に覆いかぶさる有沢と




有沢の大きな手をギュッと握って眼を瞑ったままのの姿。



















目の奥がつんと熱くなるのがわかった。










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帰れ!帰れ!おまえなんて星に帰れぇえええーーーーー!!!!!
今度はヒロインがでてこないんか!!いい加減にしろや!ボケ!
ほんとさーせん。
私がニコニコ動画にはまったばっかりに・・・!(関係ない)

ここまでよんでくださって本当にありがとうございました!!!