こわれないものって何?






そんなものはありません。









人も物も












壊れるもの










「あああああああああああああああああ・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


その場にペタンとしゃがみこんだまま、あたしはああああと唸り声を上げ続けていた。





!!ご、ごめん!!!」

「うぉあああ!!!!!?」


そんな時。
保健室の後ろからさっと飛び出てきて、あたしを後ろから抱き締めてきたのはだった。



「えぇ!?な、なんでここに・・・・・・・」

「実は後ろの入口から忍び込んで全部見てたんだ・・・・・・・ごめんね・・・・」


「ウハウハパッションピンクな状況を期待してたんだけど・・・・ごめんね」と謝り続ける
とりあえずさすが我が友。野次馬根性はんぱねーな、とも思ったけどそれどころじゃなかった。


「どうしよう、隆也真面目に怒ってた!あたし、どうしよう!やっぱりあたしなんて・・・・・」

「え、ちょ!?」

「ピチピチギャルの方がいいんだよぉーーーーーーーー!!!!!!!!!!!」

「古い!!ふ、古すぎる・・・・!どこの亀仙人ですか。落ち着いて、落ち着いて。」




あたしは泣きじゃくりながらに夢のこと、そしてから隆也が駆けつけてくれたこと、あたしが有沢君の手を握ったまま放さなかったこと、
それに対して隆也が怒っていたこと、そしてあたしが馬乗りになって隆也を怒らせたこと(いや、覚えてるからきかなくてもわかったのに!!)を全部全部聞かされた。



そして自分に絶望するばかり。




あたしって




最悪じゃん。







心配かけて、
迷惑掛けて

それでも隆也を責めて


隆也は怒りっぽいし、目つき悪いし、口も悪いけど
本気で誰かに手をあげることなんてしない。
滅多な事がない限り。

あれはあたしのために
本気で怒っててくれたってことで。



それに対してあたしは



有沢君になにしてんじゃこらぁあーーー
みたいに有沢君をかばって
本来なら
有沢君なにしてんじゃこらぁあーーーでも助けてくれたことはありがとう!
みたいなことだったわけで









「阿部にあやまんな?ね?きっとわかってくれるって。」

「で・・もぉ!!有沢君とつきあえ、って・・・っぐえぇえ!!」

「あれはその、ほら言葉の綾みたいなさ、勢いみたいな!しかも付き合えなんて言ってなかったじゃん?」

「でぇぼぉ!!おえぇえええ!!」

「落ち着け落ち着け!!つかお前小学生か!泣き方きたなっ!!!」


苦笑いしながらもはよしよしとあたしの頭をなでてくれる。
その手はすごくあったかくて安心できたけど
あたしの心はやっぱり重たいまま。

なんとか泣きやんだものの、ため息は止まらなくても何も言わなかった。
授業も結局最後は出ずに帰路についたあたしたち。
空は暗くなっていてあたしたちの足にその暗い色がまとわりついてる。
重い。



「・・・・・・・・・・・・。」

「何?」

「ありがとね、ごめんね。」

「・・・・・・むしろあたしがごめんねだよ・・・・」

「んーん。全然。あたしたちは大丈夫だよ。」






あたしたちは大丈夫



そんな確証


どこにもないくせに



言葉は便利だなと思った。






「・・・・・・・・ごめんね。」

は小さくもう一度だけ謝って手を振る。
あたしは大きく手を振って
その時の精一杯の笑顔で「また明日!!」と叫んで見せた。





が責任を感じる必要なんてない。
心配かけてごめんね。
あたしたち、すぐに仲直りするよ
心で小さくつぶやいてみるも


暗い空に吸い込まれるように消えていった。




ふと携帯電話を見てみると隆也からのメールが一件届いていた。


「っ!!!」


あたしは急いでメールを開く。
そこには硬い文字。




今日は悪かった。
少し距離置いた方がいいかもしんねーよ、俺達。
あの約束もとりあえず後回しでいいから。
体には気をつけろよ





















「・・・・・・・・・・・・・。」



目からぼろぼろ涙がこぼれた。
さっきこれでもかってぐらい泣いたはずなのに。
もう枯れてしまえばいい。


なんで隆也があやまるの?
なんで距離おくの?
なんで後回しでいいの?
なんで

もう


このまま


別れてしまうのだろうか








あたしたちはこのまま終わっちゃうの?







ついこの間までの自分ならこんなことは頭に浮かびもしかったはずなのに
あたしはいつからこんなに乙女になったんだろうね。
その原因は

わかってるんだ。





隆也が馬鹿みたいに好きなんだ。

も家族もその他の友達だって大好きで特別。

でもそれともまた違った特別

違う好きなんだよ
違う特別なんだよ






その日の夕食はちゃんと食卓に顔を出した。
もう約束は延期したんだからご飯食べてもいいよね。
そう思って親にも今日はちゃんと食べるからと食事を用意してもらったのに
なぜか喉を通らない。
あんだけ食べたかったごはんも煮物もおいしくない。




お風呂に入って布団に倒れこんでしばらくすると携帯のバイブが机の上でブーッブーっとなっていた。
あたしは慌てて携帯をつかんでディスプレイを確認するけど
どうでもいい友達からのどうでもいいメールで。

よけいに肩が重たくなった。


よくわからないけど
なんかもう情けなくて逆に笑えてきた。
ちょっと落ち着こう、私。
謝ればいいじゃん!
隆也からのあんなメールはシカトです。
は?パードゥン?キコエマセーンって感じだ。
うん。そのいき。

そう思いあたしは隆也に電話をかけてみる。
ボタンを押す手が震えていたけど、ここで負けたらだめ!
自分のストッパーを「セイホォオ!!!」という掛声ではずして呼び出し音をドキドキしながら聞く。


『・・・・・・・・はい』

「うぉ!あ、た、たか・・・」

『メール見ただろ?』

「え、うん。で、でもね!あのね!」

『じゃあ電話してくんな。俺だって疲れてんだから。じゃあな。』


ぷつっ

ツーツーツー




むなしく耳にこだまするのは
冷たい隆也の声。

電話してくんな。
俺だって疲れてんだから。
じゃあな



彼はあたし以上の耳なしでした。



思い切り携帯を床に叩きつけてみても
あたしがいくら泣いても
隆也はきっと気付かない。
あたしがこんだけ会って謝りたいってこと
ありがとうとお礼を言いたいこと。




こんなことなら




知りたくなかった





気づきたくなかった。








隆也を好きだなんて




彼氏彼女の関係なんて




ああああああああああーーーーーーーーーーーーー!!!!!
イライラする!!!
なんであたしがこんな事で悩まなくちゃいけないんだ!!
っていうか!!
話聞け!!!
テメェーの耳はなんなんだ!
飾りかコラ!!!

イライラしても

悩んでも悩んでも



答えなんて出ないんだ。



わかってるくせに


一人でどうにかできる問題じゃない

わかってるくせに


恋愛は不器用なあたしの心をかき乱し続けた。




無情にも時は流れていく。

学校では元気にふるまってはいるもののやっぱりは気づくわけで
申し訳なさでいっぱいになった。


早く元気にならないと、
そう思いながら食べたくないパンをひとかじりして大好きなジュースで無理やり流し込んだ。






窓を打ち付ける激しい雨がうるさい。
雷がゴロゴロと空を鳴らす。
教室はいつもどおりうるさいのに
外だったうるさいのに
どこか静かだった。














「・・・・・」



自分の家のインターホンを押したときに気づく。
今日は家には誰もいない
約束の日だったことに。

ずきずきと胸のあたりが痛む。
鞄から鍵を出して差し込めば、
またずきずきと胸が痛む。

それは
全部隆也に関係しているから。

今日も
鍵も

この家だって
そこの道だって


どこにだって隆也はたくさんいるから


あたしはどうしていいのかわかんないよ






「たっだいまぁー」


誰もいないとわかっているくせに挨拶をして
玄関に入って靴を脱ぎ、
いつもどおり今の電気をつける。

つける


パチン
パチンパチンパチンパチン
へーい!!
あたしの指パッチンの音じゃないんだぜ★



何度やっても電気がつかない。

なんで!?ブレーカー!?
怖い怖い!!
あたしは携帯電話のディスプレイの明かりを頼りに洗面所まで行く。
洗面台が濡れていて足の裏が気持ち悪い。
手探りでブレーカーをカチカチとやってみるもののつく気配はない。




停電ですか。
ちくしょー
悪いことは重なるっていうけどさー
これはさすがにひどくない?


「はぁーーーーっとぉおおおおおーーーーー!!!?」





はいはい、でました。
あたしが洗面台から降りようと体制を変えた時だった。
つるっと足を滑らせて見事に落下です。
普段なら受身取れたり、っていうかこんなことはないはずなのに
たぶんそれはあたしの頭の中の9割ぐらいを隆也とのことが占めているからなんだろう。

あーちくしょう
頭痛い。
超痛いこれ。
しぬ?
血でてんじゃないの?


なんて頭を確認してみると


「・・・・・・・・・・」


ヌルっとした感覚。



まさかと思って明かりを掌に向けてみると



「・・・・・・。」



まっかっか。



ひぃえぇぇえぇぇえぇええええええええーえーーーーーーーーー!!!

ど、どうしよう!どうしよう!え、ちょ、どうしよう!







混乱しきっていたあたしは自分でも気づかない間に












隆也に電話していた。





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阿部ひどくね?
よっぽど怒ってるんですかね(お前が聞くな)
あーあーあーあーとりあえずもうすぐ完結させます。うん。
がんばる、なんか長くなっちゃって・・・・・
すんません。

ここまで読んでくださって本当にありがとうございました!!!