あいつの脳みそって



絶対つるつるだ。











激しい雨のせいで今日はミーティングだけだった部活。
どこかほっとしていた。

練習に支障をきたしているつもりはないけど
やっぱりチームメイトは俺の機嫌の悪さに気づいているようだった。


別になんてことはない。
俺が提案したわけだし。
少しお互いが冷静になった方がいい。

俺はに頭を支配されすぎてるんだ。



電気もつけず、家のベッドで横たわりながら携帯を見る。
そのディスプレイにの文字はもちろんなくて。

当り前のはずなのに

自分から電話もきったのに


気になってしょうがなくて


舌打ちをした後、ごろんと寝返りを打った。









ブーッブーッブーッブー








握ったままの携帯が手の中で静かに振動する。
ばっとみてみれば


の文字




あんだけ連絡すんなっていったのに
なんでわかんねーんだ

とか思いつつ
着信拒否にしていなかったのは
もしかしたらからしつこく連絡が来るかもしれないって
俺が必要だって言ってくれるかもしれないって

どこかで期待してた証拠。





俺は深呼吸してから通話ボタンを押してゆっくりと耳にあてる。



「・・・・・・・もしも『ちょ!!隆也!?今どこ!!』」



俺のもしもしはいらないんですか。



「・・・・・・・・・家だよ。」

『ナイス!!!あのさ!大変なんだよ!!停電なの知ってる!?』

「はぁ?停電!?」

バッと起き上がり窓から外の様子を確認してみると、
確かに辺り一帯に電気がともっていない。

いつのまに・・・・・・・・・・・


「・・・・・・・・あー・・・気付かなかった・・・。」

『マジでか!!まぁいいんだけどさ!!なんかすべってころんで電気がつかなくてブレーカーが大変なんだよ!!』

「いや、意味分かんねー。」

『だから!!滑って転んだブレーカーが!!!!あたしの頭が光らないんだよ!!』









いや、俺の知っている限りでお前の頭は一度も光ったことはない。





とにかく混乱している様子のには何度同じように
どうしたと質問してもアホみたいな答えしか返ってこなくて。

「あーーもぉ!!!めんどくせーな!!今から行くから待ってろ!!」

『助かる!!救急バックも持ってきてね!!』

「わーったよ!!」

そう言って電話を切って右手に懐中電灯、左手に救急箱を持って家を飛び出る。
外は嵐のごとく風が吹き付け雨が激しく降っていて、ゴロゴロと空がなっていた。
の家の鍵はかかっていなくて、俺は「おじゃましまーっす」と大きめの声で玄関に上がりこむ。


「隆也!!こっちこっち!!」

洗面所のほうから俺を呼ぶの声が聞こえた。
まぁ、たぶんブレーカーかと思ってつけようとしたところ、
滑って転んで腰うったとかそんなレベルだと思っていた俺は「今行くから待ってろー」と軽く声をかけて懐中電灯をつける。
足元をぼんやりとうつす光。
洗面所にたどりついたところで見えたのはの靴下と







真っ赤な血。







バッと懐中電灯を上に上げれば「うわぁ!!!た、隆也!!」と驚いた様子のがいて。
頭から流血していた。


「・・・・・・・・・。」

「あ、悪いね。救急バック持ってきてくれた?」

「・・・・・・・・・・・おまっ・・・・・・・・・・」

「え、ああ、今ちょっと落ち着いてきたんだけどさ、ちょっときっただけみた」
「バッカ!!!!!!めっちゃ血でてんじゃねーーーーか!!!!!!!!」








「お、おぉ・・・。」


「ちょ、こっちこい!!!」


俺はその場にあったタオルをの頭に押しあてながら居間へと引っ張っていく。
人の家だけどもうその場所は目をつぶってでも歩ける慣れ親しんだ場所。
を座らせると救急箱に詰め込んできた何本かのろうそくに火をともす。
濡らした別のタオルで軽く傷口をふいて消毒液をかけるとの体が強張った。

「しみるか?」

「ちょっと・・・・・・・・・」

「ちょっと切ってるだけだけど・・・・傷口がけっこうひれぇーな・・・」


ガーゼを当てて包帯を巻きつける。
ゆらゆらとろうそくの光だけが俺たちをぼんやりと照らした。




「っし。」

「ありがと。」

「テメェーホントきぃつけろよ!!!!」

「ご、ごめんなさいぃ・・・・・・・・・」

「だいたい俺が部活ででれねぇとかだったらどーしてんだ!!」

「ごもっともです・・・・。」

「まぁ幸いすぐ家に帰ってきてたからよかったものの・・・・」

「ホントご迷惑をおかけしました・・・・・・・」

「まぁ、いいよ。あんま心配かけんなよ・・・・」

「・・・・・・・・うん・・・・」

「・・・・・・・。」

「・・・・・・・・・・・。」

「・・・・・・・・。」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・。」






・・・・・・・・・・・・・・気まずい。


そうだ、そういえば俺たちはあの日から連絡はもちろんあってもいない。
日にちはそうたっていなかったものの、気まずいことにはかわりなかった。
気持ちの悪い沈黙に耐えられなかった俺は「じゃあ帰るから」と呟いて立ち上がる。
逃げるわけじゃない。
このたまたま起きたアクシデントの前に戻るだけだ。
まだ頭は冷え切ってはいないのだから。







俺だけが思ってるみたいで、

寂しかった。


約束をした日は

そのまま死んでもいいと思ったくらい

幸せだった。


俺の名前を呼んで
保健室のベッドから起きた時は

有沢なんて眼中ないって感じて

優越感に浸った。


その束の間、有沢をかばった

腹立たしく思った。





電話を切る直前のの驚いたようなさびしそうな声に
自分から言い出したはずのくせして、


胸が痛んだ。




そして今だって、
俺の中ではいろんな感情が渦を巻いてる。





だけどそれは









全部、が好きだから。










俺はどんだけ・・・・・・・・
これ考えるときりねーからな・・・・・
短い溜息をついたあと、俺は「大人しくしとけよ・・・」と一言残してに背を向ける。












「・・・・・・・・・・・・・・・・・・っ!!」




「・・・・・・・・・・・・あ、あの、あー・・・・・」









真っ暗な部屋の中



の顔は見えない中で


俺のシャツをきゅっと握って離さない


の手が妙に小さく見えて



すごく愛おしくて




振り切ることができなかった。







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もうどうしたいのかわからない私!そして阿部(笑)
ごめんなさいね、もう!謝ることしかできませんよー!!
とりあえずがんばれ私!頑張るんだ私!!

ここまで読んでくださって本当にありがとうございました!!!