言わなきゃいけないことがある


言いたいことがある


なのに


言葉は思うように口から出てきてはくれない。








「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・なに。」



困ったような隆也の声。
あたしは真っ暗で見えない彼の顔を探すことなく俯いた。


いや、あたしなにしてんだ。



隆也を引き留めたくて、
話をしたくて、
シャツをつかんでみたものの
いざとなるとどう切り出していいのかわからない・・・・。
困ったな。



真っ暗でろうそくの火だけが頼りの部屋は静かすぎて寒気がする。
頭はじんじんして熱くて痛い。
隆也は今何を考えているんだろう。



「・・・・・。」

「ぅぇえ!?」


間の抜けた声と同時に感じたのは
服の裾あたりをつかむあたしの手を包む大きな隆也の手の感触だった。



「やっぱ俺達ちょっと焦りすぎてると思う。」

「え・・・・」


あ、せる・・・?
何を?


「っていうか主に俺がか・・・。ちょっと冷静になった方がいーんじゃねーかなって・・・」

「え、あ・・・」

があまりに俺の中心になりすぎてて、俺もお前も駄目になっていくんじゃねーかって怖いし」

「・・・・お、あ・・・」


隆也?
怖いって?
え、ちょ、




「だから今、この停電が収まったらまた、しばらくは・・・・」





「まったぁああああーーーーーーーーーーーい!!!!!!!!!!」




あたしはつかまれた手をそのまま自分の方へと全体重をかけてひっぱった。
もちろん全体重だし不意打ちだしで隆也はあたしの方へと倒れこんでくる。
それを流すようにかわして、隆也をカーペットの上に投げた。
ガンと痛そうな音がして、尻もちをついているのがうっすら見える。





「てめぇ!!何して「ごめんなさい!!!!!!!」





隆也の怒る声をさえぎるようにしてあたしは頭を勢いよく下げた。
全身全霊を込めて。






「色々、いろいろごめん!!もうほんとごめん!!」

・・・?」






から聞いたんだ、かけつけてくれたって。心配してくれたって。有沢君があの、うん、あれってことも全部聞いて・・・・それであたし最低だって思って・・・」



それで、


それで、


もっとちゃんと謝りたいのに
こんなのただのいいわけだよ
どうしたらいいんだろう。
不器用なあたしにはハードルが高すぎるよ。
しどろもどろになりながらもあたしはがんばって言葉をつなげる。


気持ちが
あふれてくる。




「会えないのは、つらくない。さびしくない。でも会わないのは・・・・・・・寂しいし、辛いよ。」





恋愛なんてよくわからない。
好きとか、嫌いとか、
愛してるとかそんな言葉むずがゆい。

恥ずかしいし、あたしらしくないし。




でも隆也には



ちゃんとわかってほしいんだよ。




「嫌いに、ならないで・・・・隆也が手を離しちゃったら、あたしは一人じゃ歩けないんだよぉ・・・・」




ぼたぼたと大粒の涙が目からあふれる。
知らなかったなぁ。
あたしってこんなに泣き虫だったっけ?
隆也といるとどんどん知らないあたしが現れるなぁ・・・・
えっぐえっぐと息を切らせて涙をぬぐっても
それはとめどなくあふれてきて
あたしの頬を伝っていった。



、顔上げろ。」

「っぐ・・ぇ・・・ぇえ・・・・おぇ・・・」


言われたとおりに上げれば苦笑した隆也が目の前に居て、あたしの頬をそっとなでる。



「・・・おえってお前・・・」

「えっぐ・・・ぇえ・・・ふぇ・・・」

「・・・・泣き方はほんとガキの時からかわんねーのな・・・。」



隆也はあたしの手をつかんで自分の指と絡めるようにしてぎゅっと力を入れた。
涙がにじんだ眼にぼんやりと映る隆也の顔はゆがんでいてよく見えなかったけど
なんとなく目が赤く見えて、隆也も泣いてるのかと思った。









「こんなアホで、馬鹿で危なっかしい手、はなさねーよ・・・・・・・・・。」




スンと鼻を鳴らす音。
湿った雨のにおい。


ゆっくりと隆也の顔が近づいてきてそっと唇に触れた柔らかい感触。


ああ、

このまま時が止まればいいのに


そんなばかみたいな

ガキみたいなこと


本気で思った。


くだらないというならあたしは一生餓鬼でいいよ。








・・・・」

「ん、」





しばらくしてはなされた唇。
ギュッと隆也があたしを抱きしめて、
顎が肩にのった状態でため息交じりの声がする。




「俺、マジでそろそろ帰んねーとやべーかも。」

「え、あ、家鍵かけ忘れた?」

「いや、母さんがいる。」

「え、何、マジで。寂しくね?こんな暗い中で一人ぼっちだよあたし。」

「いやー・・・・まぁなんていうか・・・・・・」

「なに、なに、なに?」

「チンコがやばい・・・・・・・・・」

「ああ、死ねばいいよ、それ。」

「テメェーほかにもっとかける言葉があるだろ。」

「いや、むしろあれでしょ、隆也の方こそムードとかそういうのあるでしょ。」

「は?俺がわりぃーのかよ!!!」

「悪いとは言ってないよ!キモイとは思ったけど!!」

「あ、なんか今傷ついた。」

「アハハうそうそ!ちょっとしか思ってないよ!!」

「ちょっと思ったのかよ!!まぁおれもお前に似たのかもしんねーな・・・・」

「まて、私はキモイのか。」

「自覚してねーの?」

「泣いちゃうよ!?だって泣いちゃうんだよ!?だって女の子だもん。」

、」

「え、何?シカト?ネタはシカト?」






長い長い茶番を途中で遮られてむっとしつつも「なんですかー」と聞くと


隆也からは少し苦しそうな声がした。



「俺、マジであんまり余裕ないから・・・・・・・・・真剣に一回帰りたい・・・・。」

「・・・・・・・・・え、っと・・・・・・・・・そか・・・・・。」

「悪い。落ち着いたらまた来る。」

「隆也、」

「ん?」

「あたし達、一応仲直りしたっていうか、さ、ゆ、許してくれたんだよ、ね?」

「・・・・・まぁ、たぶん。」

「たぶんて!!まぁいいや、えと、じゃあ、す、する?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・マジで?」

「・・・・あたしはこんな冗談はつけない。」







「・・・・・・・・・・・・す・・・・・・・・・あ、やっぱたんま。」

「は?」



死ぬほど恥ずかしい思いして誘ってんだぞこら、おい。
たんまってなんだ!!!
そう思ってキッと隆也を睨むとポケットをがさごそとあさって財布を取り出す。
その中にさらに小さな巾着みたいなのを取り出して中身を確認している。


「・・・何それ」

「は?ああ、ゴム。」







・・・・・・・・・・・・・なぜ持ち歩いている・・・・・・・・。
聞きたいけどなんとなく聞けないあたしは隆也の手を引いて自分の部屋に行く。
(もし万が一居間でそのまま寝ちゃったら背中痛いしもし途中で親が帰ってきたときの対処が100パーセント間に合わないもんね)


真っ暗な部屋。
雨が屋根を激しく打つ音と風が窓ガラスをたたく音しかしない。
あたしと隆也は布団の上で向き合って座る。


改めてこうなると、結構緊張する。





。」

「え、は、はい。」

「んな緊張すんな。」

「お、おうよ!よ、よろしく、お願いします・・・・・・。」

「こちらこそよろしくお願いします。」





こんな風にセックスを始める恋人っているのかな?
それともみんなこんな感じなのかな?


ぼーっとそんなことを思いながら
あたしは隆也の腕の中で、自分の体で一番大事にしていたものを隆也に託す。


それは
好きで好きでしょうがない隆也にしか渡せないもの。






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あと一話で完結です!!
話的にはあと一話なんですけど見てもみなくてもいい裏一個入れたらあと2話ですね。
まぁどうでもいいですね。
しんでって感じですよね。
強制終了で。
なんか有沢君とか結局中途半端みたいなね。
でも強制終了で。
なんかもうっとこういろいろ終わりってありますよね。
でも強制終了で(しつこい)


とにもかくにもここまで読んでくださって本当にありがとうございました!!