これ以上の幸せがあるのだろうか














あたしにはないよ














「・・・・・・・・・んー・・・・・」





窓からは眩しすぎる光がこぼれてきて
あたしはうっすらと目を開ける。
昨日の雨が嘘のように、外はカラッと晴れていた。




「・・・・・・・っつーーー・・・・・」


下腹部に走る鈍い痛みに眉をしかめる。
いたい。痛い・・・・なんだこれ、あ?あれか。ヘルニア?
マジなんだこれ・・・・・・・・・・
ぼーっとしながらまだ意識がはっきりしない脳みそを一生懸命働かせてみる。


昨日、えーっと・・・・・?


頭流血させてびっくりして隆也を家に呼んで・・・・
えーっと・・・・










「・・・・・・・・・・・・・・・・・。」






あ、そうだ






隣から聞こえてくるスースーという寝息にあたしの記憶は鮮明によみがえった。










「・・・・・・隆也・・・・・。」



隣であどけない表情で眠る隆也の頭をそっとなでる。
「・・・ん・・・・」と小さく言って少し眉をしかめるその寝顔は昔のままだった。




あたしは昨日隆也とセックスしたんだ。


ずきずきと痛む腰や下半身はその証拠で。




思い出すと顔から火が火炎放射の如くでてきそうなんだけど、
でもそれ以上にすごくすごく幸せ。






「・・・・・・ありがとう、隆也。」









今までたくさんいろんなことがあったなぁ


今思うとこの短い時間の中でいろんな隆也を見つけて
いろんな自分を見つけた。



そしてあたしは昨日よりももっともっと隆也を好きになったんだ。








「・・・・何笑ってんだよ気持ちわりぃーな。」

「おはようの挨拶すっとばして第一声がそれですか、隆也さん。」




隆也はまだ眠たそうに眼をこすりながら「はよ」と短く言った。
この男は昨日処女を奪った彼女にたいして甘い言葉を囁いたりはしないんですよ。
知ってましたけど。



「服きねーの?」

「いや、今さっき起きたばっかだからこれから着るところですが。」

「ふーん。」

「・・・なんだふーんて。」

「別に・・・・」




溜息をついて頭をぼりぼり掻く隆也を横目に、あたしは布団をかぶって床にちらばった服を手に取る。


「・・・・・・・・・。」

「・・・・・・何。」


何見てるんですか阿部さん。


「何隠してんだよ。」

「いや、本来出てちゃいけないところが今外気にさらされてるわけだからね。隠すだろ。」

「いや、別に昨日もう全部見たし。」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」



それ言ったらダメ。
それ言ったらだめよ阿部さん。




。」

「ん?」







「ありがとな。」



ボクサーパンツをはいた隆也が部屋にちらばる自分の服をかき集めながらあたしを見ずに言った。






「・・・・・・・・・・・・・あたしこそ、ありがと。」






あたしは隆也の背中に小さくお辞儀をする。
心からの感謝をこめて。
心からの愛をこめて。
色々こめて。
大好きとかありがとうとかごめんとか馬鹿とかたれ目とかもういろいろひっくるめて。



上は着ずにジーパンのベルトをかちゃかちゃとしめた隆也はあたしの方に向き直って座った。


「うわっ!ちょ、まだ服着てなっ!!」



まだ下着しかつけていないあたしはあわてて隆也を突き飛ばそうとしてみるも
伸ばした手はあっさりかわされて、手首をつかまれる。
そのまま引っ張られてあたしは隆也の腕の中におさまった。

熱を持った肌が直接触れ合って
くすぐったいような恥ずかしいような、
でもどこか安心できるような、


あたしは黙って隆也の背中に腕をまわしてぎゅっと抱きしめる。







「・・・・・・・・・あったけぇー・・・・」

「うーん・・・・・隆也ー」

「あー?」

「・・・なんかあたし達なんやかんやすること全部しちゃったんだね・・・。もっともっと先のことだと思ってたよ。」

「あー・・・・だな・・・・」

「セックスってただの卑猥な大人言葉だと思ってたけどさー」

「なんだそれ。」

「いや、エロ!みたいなそんなイメージだったんだけどさ。」

「・・・・・・・ガキ・・・・。」

「うっせ。でもさ、でもさ、」

「ああ。」











「こんなに幸せなことだったんだね。」









初めて知ったよ。
恥ずかしくてでも嬉しくて
もっともっと隆也を好きになった。
ありがとう。
何度お礼を言っても言いきれないよ。



あたしはもう一度腕に力をこめて隆也を抱きしめた。








「・・・・・・・・・あっ。」

「どしたの?」

「全部じゃねーよ。」

「は?」

「すること全部してねーっつってんの。」

「ちょ、あたしSMとかはそんなに興味な「しばくぞコラ。」







あたしの冗談をさえぎって隆也のツッコミが入る。
体が離されて、お互いの顔が見えるくらいの距離。
こうまじまじと見られると恥ずかしい。
今まで普通に見れていたはずの隆也の顔をなんだか今は見れなくて、あたしは少しだけ視線を落とした。















、あと一つ残ってる。」

「なにさ。」

が俺の嫁になるってことが。」










びっくりして




すぐに隆也に視線を戻した。













「やなのかよ。」

「えっ!?や、やじゃないけど・・・・」

「けどなんだよ。」

「いや、あまりに急なプロポーズに驚き。」

「・・・・・・プロポーズじゃねーよ。」

「じゃーなにさ。」

「・・・・・・予告。」

「はぁ?」

「プロポーズの予告。」

「ああ、じゃあ最後に隆也とのラブディスティニー!次回最終話、毎日俺に脳みそを作ってくれ!絶対見ろよな!って言ってくれなきゃわかんないじゃん。」

「なんで30分アニメ風?っていうか脳みそじゃなくて味噌汁な。とんだ味噌違いだわ。」

「相変わらず鋭いツッコミですねーでももうひとつツッコまなきゃいけないところあるよ?」

「ああ、ここだろ?」

「ちげーよ、コラ、変態。股間さわんな。テメーはおっさんか。つっこみ違いじゃボケ。」

「じゃーどこだよ。」




ちっと舌打ちをして(あたしがしたいよ)隆也が眉間にしわを寄せる。






あたしはそっと隆也の手をとって



ぎゅっと握った。




















「最終話じゃなくて、第一話だよ。あたしと隆也の物語はプロポーズから始まるんだよ。」















そのあと、
握り返してきた隆也の手は大きくて


あたしの手を守るように包みこんだ。
























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はい、完結。こんなんで完結とか苦情殺到だね。
でもあれです。これで限界です。
私は頑張ったよ・・・・・・・!アイムノープランがよくここまでやったよ・・・
ほんとこんな連載を好きって言ってくださった方々、ありがとうござました!!!
大好きです!!

ではではここまで読んでくださって本当にありがとうございました!!
たぶん誤字脱字の嵐ですいません(確認せい)