「あたしさ、今日さ、阿部に告白してみた。」

「・・・・・・ふーーん・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・。」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

「・・・・・・・・・・・・・。」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・えっ!!!!?」




遅すぎる幼馴染の反応に



あたしの鉄拳が文貴の左頬にさく裂した。





「いったぁああああ!!!っていうか、えぇぇえぇぇえーーー!!?告白にもびっくりしたけどグー!?グーで殴るか普通!?」

「普通の暴力はもうさんざんやってきたからもうグーしかないなって思って。」

「いや、まずもう暴力はやめればいいじゃん!散々やってきたならさぁ!!!」


涙目になりながら頬をさする文貴はベッドにもたれたまま「うぅー」っと唸っている。
あたしはそっと、その横に座りなおした。
文貴の部屋は自分の部屋のように慣れ親しんでいて
今日はゲームを返しに来たついでに報告してみたというわけで。

ついでっていうか
もはや彼にとってはメインみたいになってるのかもしれない。



「え、ちょ、ねぇ!!?告白ってどういうことさ!!?っていうか阿部のこと好きだったの!?」

「質問多くてうっとおしいなぁ・・・・超好き、って言った。」

「え、マジ!?で!?なんだって!!?」

「好きとか軽々しく言う女は信用ならねーなぁーって」

「マジでか!?」

「こんなウソつかないし。」

「えぇーーー!!!?じゃあ振られたってこと!?」

「うーん・・・・でも嫌いじゃないって・・・・。」

「思わせぶり!?うっわ阿部ってやなやつー」

「いや、たぶん本気にしてないってことじゃない?」

「どっちにしても的にはどーなのさ!!」




どーなんだろう。
文貴の質問に少し戸惑った。
別に嫌われてないことは嬉しいし
今すぐつきたいの!フォーリンラブなの!!ってわけじゃないけど
振られたことに変わりはないの、か・・・・・・・・・?













「・・・・・・・・・よくわかんないけど、これからもっともっと好きになったら落ち込んでみる。」






そのあとの文貴の間抜け顔に、ベッドに押し倒して、そっとティッシュをかけてやった。










次の日、
あたしと阿部の距離は一ミリも変わっていなかった。
相変わらず警戒していて、
朝練が終わってからもあたしに声をかける様子はない。



「・・・・・・・・・。」

「・・・・っておい!聞いてんのかぁ?。」

「うっせーハゲ。埋めるぞ。」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」



さんはご立腹なんですよ、コンチクショー。
巣山の話を右から左に受け流してあたしはじっと阿部を見ていた。
三橋に何か指示してて、阿部の言葉に三橋がコクコクとうなずいている。


「・・・・・・・・・・ねー巣山。」

「あー・・・?」

「あたしと付き合ってって言ったら付き合える?」

「はっ!!!?」




あまりに大きな声に、
あたしはもちろん部員みんなが巣山に注目した。





「え、そんな無理?そんなに生理的に受け付けない?ちゃんと風呂とか入るよ、基本的には。」

「いやいやいやいやいや、そういうことじゃなくて!!」

「え、顔?顔か?顔が無理か。」

「いやいやいやいやいや!だからさ、そーゆーことじゃねーって!!!」

「じゃーなにが無理だコラァアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!」

「落ち着け!!!!」


あたしのあまりの興奮っぷりに巣山がおびえていたらしく、栄口にまぁーまぁーと間に入られた。
むすっと頬を膨らませている間に巣山が「だってがよー!!」と栄口に諸々の事情を話して、



やっぱりびっくりした顔であたしを見る。


「・・・・・・・ああ、天下の栄口さんでもあたしはいけないってことですか。」

「いや、そんなこと言ってるんじゃなくて・・・・どうしたの、急に・・・・・・。」

「別に。なんとなく。」

「何となくって・・・・・。」


あきれたような顔でため息をつかれた。
ちょっとムカつくんですけど。
やっぱりあたしってそんな駄目?
ちょっと落ち込むなぁ・・・・・・・。




「どーしたの!?!!!元気ねぇーじゃん!!!」






そんなとき後ろからあたしの頭にチョップをかましてきたのは、笑顔が眩しい田島だった。
ニーっと笑ってあたしの顔を覗き込んでくる。



「ねーねー田島ー。」

「んー?」

「あたしってそんな駄目?死んでもあたしみたいなのとは付き合えない?」

「え、俺は全然大丈夫だけど。」




嬉しい!!
けど大丈夫って!大丈夫って表現なんかへこむな・・・・・
でもここで初の白星を勝ちとった喜びにあたしの頬は緩んだ。



「でも、何で?」

「いやーあたし昨日「ほらほら!!!さっさと教室行くぞ!!!!!!」



あたしと田島の間に割って入ってきたのは






阿部だった。









あたしと田島のデコを両側に押して距離を遠ざける。



すごくびっくりした。
(たぶん田島も栄口も巣山もっていうかみんな)

二人で口をあんぐりあけて阿部をみていると、
阿部もはっとした表情をして鞄をもちなおして歩き出す。



「・・・・・・・・・・・。」

「びっくりした・・・・・・・。」

「俺も。」

「いや、ぶっちゃけには悪いけど・・・俺阿部はぜってぇー避けてると思ってたわ。」

「すやまん。泣いちゃう。あたい泣いちゃう。」

「実は俺も思ってた・・・。」

「栄口まで!!!」

「なんか、俺に怒ってるように見えた!!」

「うん。おれもそう見えた。」

「は?阿部が?そうかな、あたしにはいつもどおりに見えたけど・・・・」

「っていうか普通さ、声かけるだけなら遠くからでいいじゃん。まぁ普段の阿部なら声かけてこないしでそれにも驚いたけど・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」



みんなで顔を見合わせているところで、阿部のすぐ後ろあたりを歩いていた文貴と目が合った。

にや〜っと笑うその顔を見て、どんどん体温が上昇していくのがわかる。
文貴ごときに、面白がられている。
その目は「嬉しい?」って言ってるみたいで


嬉しい反面ムカついて


文貴のところまで全力疾走する。



「文貴ーーーーーーー!!!」

ー?嬉しそうだねぇ〜?かわいいー!」

「にやにやすんなよ、気持ち悪いから。そのセンターわけをジグザグにしてやろうか。」

「はいはい、照れ隠し〜」




んにゃろう・・・・文貴の分際で。


私を敵に回すことがどういうことか教えてやろう・・・・・・・・・!



あっという間にあたしのS心に火がつく。





「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あっ!!あれ!!」

「へっ!!?何?」



さっとグラウンドの方を指さすと、文貴もそっちを向いた。
そのすきに彼の手に握られていたものをさっと奪う。





「あっ!!!」




消しゴムだった。







あたしは迷うことなく全力で茂みへと投げ放った。
本気で。

キラーンと効果音をつけたくなるような勢いで消しゴムは遥か彼方へと消えていった。
その姿を阿部と文貴はただ茫然と見ているだけ。









「へへーーんだ。手に消しゴムなんて持ってあたしをからかうからいけないんだよーだ!!」






「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

「・・・・・・・・・・・・・・・。」

「ん?」

「・・・・・・・・・さっきの消しゴム・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」









え、


ま、ままままままままままままま





まさか・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・









「・・・・・・・・・・・・・阿部から借りたやつ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」























その日あたしは自分の消しゴムも奪われた挙句、
なけなしの金で阿部にパン2つとミルクティーをおごる羽目になった。
もちろん花井を通してのことで、
あたしへの警戒は強まるばかり。



それを見ていたみんな



の自業自得だよ」



と口をそろえていうのだった。



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記念すべき2話目。
やっぱり私の書く夢のヒロインってただのおバカさんになっちゃうんだよなぁ・・・・。
これじゃ二人が近づく気配が・・・・・・!

ここまで読んでくださって本当にありがとうございました!!