あぶない。




そう思ったときって、もう遅いことが多い。



今もまさにそんなとき。







「ナァーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーンッス!!!!!!!!!!!!!!!」




聞いたこともない奇声をあげてあたしは派手に廊下に鞄の中身をぶちまけた。
あーららあらら・・・・恥ずかしすぎて顔から血が出る思いだよ。
何が一番恥ずかしいって友達とかが誰も見てないってこと。
まだ友達が見てて笑ってくれた方が良かった。
ボケぞんだよ、まったく。

あたしは頬が熱くなるのを自分でわかりながら筆箱やら教科書を拾い集める。
こんな時世間は冷たい。
クラスが違う人は素通りだし、普通にくすくす笑ってるし。
まぁ一年生でみんな他人!みたいな状況だししょうがないのかな。


一番遠い位置にある下敷きを取ろうとしたとき、

すっと手が下敷きに重なる。




「・・・・あ・・・・・・・・」


どうもすいませんねー
言おうと思って顔をあげるとそこにはブスッと不機嫌そうな顔であたしの教科書やらを抱えた阿部がいた。




「阿部ぇええええーーーーーーーー!!!」

「んだよ!!気持ちわりぃーな!!!」

「それ褒め言葉だよ、もはや。っていうか拾ってくれてんの!?もしかして!!まさかの!?」

「見りゃわかんだろ・・・・」





や、優しい・・・・・・・・・!


やっぱり阿部はなんだかんだで優しいやつなんだ!
顔だけじゃないんだよ!いいところは!!
またひとつ阿部のいいところを知れたあたしは笑顔でそれらを受け取った。


「ありがとう!阿部!!」


「おう。まぁお前のその変な悲鳴のおかげで・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・







三橋が俺の顔面に牛乳全部吹きこぼしたんだけどな。」










阿部さん



あなた、




なんて顔してるんですか・・・・・・・・・・・・・・・・・・!!!!!









青筋を立ててぴくぴくと口角を釣り上げた阿部があたしの肩をぎゅっとつかむ。




「気にすんなよ、俺、別に怒ってねぇーからさ。」




え、それで?
その顔で?
その腕力で?
あなた女の子の肩なんだと思ってるんですか?
軽く粉砕する気だよね?
つーかむしろ怒ってるときてどんな感じなの!?それで怒ってないって!






「あ、あああああ阿部・・・・・ほら、あれだよ、うん。わ、わざとじゃないし・・・ていうか実害は与えてないわけだしね?」

「だから言ってんだろ?俺、別に怒ってねーからさ!」






























誰か助けてぇえええーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!!





「ホントつくずくお前って俺のこと恨んでんだな。」

「いやいやいや!恨んでない!恨んでないから!恨むことなんて一切ないから!むしろ好きだから!」

「なに、俺がお前になにしたっつーんだよ・・・・」

「ぇええーーー!!むしろ私が阿部に・・・・・・・」


色々してますね(全部わざとじゃないけど)
答えようのない質問にあたしはどんどん青ざめていった。
なんでこうなっちゃうんだろう!!?
やっぱりあたしと阿部は根本的にダメなのか?S極とS極なのか!?
これ以上は仲良くなれないんだろうか!?




「・・・・はぁーーーーーーー」

「あ、阿部?」

「なんかもう・・・いいわ・・・・。」



溜息をついて遠くを見る阿部に
あたしの胸はなぜかズキンと痛んだ。





なんだかどうでもいいって思われてるみたいな
諦められたみたいな




阿部は「気をつけろよ」と一言残してあたしに背を向けて歩き出す。



どうしよう。



このまま行ってしまったら
あたし達の距離はどんどん離れてしまうんじゃないか?
あたしが

あたしが必至に追いかけなきゃ
阿部が逃げていくような気がした。



そんなのやだ


あたしはもっと



阿部を





知りたい・・・・・・・・・!






「うぉあああべぇええーーーーーー!!!」

「おお!!?」





全力疾走して阿部を追いかける。
あたしの叫び声にびくっと体を強張らせて振り返った阿部は


危険を察知したカモシカの如くあたしから逃げ出す。



チクショウ!
さすが運動部!足が速すぎる。


でもここはグラウンドじゃない。



校内なんだぜ?阿部隆也。


私から逃げられるわけがないだろう、


階段をおりだしたところで

覚悟の捨て身技。
一番上から下めがけて一気に飛び降りた。




大丈夫、昔忍者になりたくてたくさん修行したから!!
ケガなんてしないもん!!!





「うぉあああべぇえええええーーーーーーー!!!」

「は、え!?ちょ、あぶ・・・・!!」



あたしの大胆な行動にあっけにとられた阿部の足は止まっていた。
チャンス。










「ジュテェエエーーーーーム!!!」

「うぉあああ!!」



ぎゅっと振り切られないように腕にしがみつけば阿部はすっかりおとなしくあたしにつかまる。



「・・・なぜ・・・に、にげ・・・た・・・・」



ぜえぜえと息を切らせながら阿部に問いかけた。



「だって、お前が・・・追いかけてくるからだろ・・・・」

「用があったから呼び止めたんじゃんかー」

「んだよ、用って・・・・」



「もう逃げねーから」といってあたしの手をそっとほどくとため息をついてあたしを見る。










「一か八かさ、遊ぼうよ。あたしと。」










「は?」















いつもノリとテンションだけで生きているあたしは


勢いあまって阿部を遊びに誘ってみた。












もちろん断られること前提で。



断られたら笑い話にしよう。

あ、「またフラれた」とか言って文貴にやつあたりするのもいいかも。






そんな風に思っていた








だから阿部が






「いいけど・・・・・・・・・・」








とそっぽを向いて言うなんて予想外で。















不意打ち過ぎて不意打ち過ぎて











そのあとの言葉が用意できなかった。







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積極的だなヒロイン。でもこれはおふざけモードだからなんだってできるんだ。
ホントはシャイでチキンなガラスのハートなんですよ、きっと(笑)

ここまで読んでくださってありがとうございました!