「・・・えっと・・・」



「おう。」




「じゃ、じゃあ、あ、明日は、ミミミミ・・・・ミーティングしっかない・・・かっら・・・」







「・・・お、おう。」




おいおい。





「あ、明日えええええ・・・駅前あたりにぃ、あ、遊びに行くという感じで・・・よよよよろしいでしょうか・・・・?」





こんなんで大丈夫なのか。
















6時間目終了のチャイムと共に俺は軽く首を左右に傾ける。
さっきまでの退屈な授業を終えて開放感にふぅーと息を吐いた。




「なーなー阿部ぇー」

「あ?」


頬杖をついて水谷が上目づかいで俺を見る。
うぜぇの一言を飲み込んで俺は荷物をまとめていた。


「今日変じゃない?」

「・・・・・・・・・・・・・。」

「阿部、なんでかわかる?」

水谷が眉をしかめて顎でさした先には、
ずっと俯いたまま落ち着かない様子のが居て



俺も眉をしかめる。












「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・知らねえ。」














ぶっちゃけそんなの俺が一番知りてぇーよ。





今日のは色々いつもと違う。
朝練のときから絶対に俺に話しかけようとはしないし、目も合わせようとしない。
いつものうざったいまでの挨拶やら、嫌がらせやらもない。
俺にとっては違和感のある平穏な朝だった。
それでも部活はいつもどおり終わって
三橋や泉と楽しそうに談話してて
でもやっぱりなんだかおかしい。



授業中一瞬目が合ったとき



目を真っ赤にさせていたはすぐにうつむいて
もう俺を見ようとはしなかった。




・・・・まさか自分から誘っといてドタキャンする気か?

体調不良とか。

今になって嫌になったとか?





に限って・・・・・・・・・








・・・・・ないとも言い切れないぐらいに俺はを知らなかったことに気がつく。













「・・・・・・俺にわかるわけねぇーだろ。」



そう一言冷たく言い放つと
水谷は「へいへい」とあきらめた様子で前を向いた。









んなのわかるわけねーだろ。










今の今まで、女子に特別興味を持ったことなんてなかった。
野球が一番で女子はその次だった俺にとって「」という存在はある意味で境地だ。

新境地。


あんなにオープンに俺に接してくる奴は男女ともにいなかったような気がして、嬉しいようでうざったいような。
複雑な気持ち。

挨拶一つで嬉しそうに笑うその顔はすごく眩しくて素直にかわいいと思える時すらある。
部活でだってちゃんとやることやるし、しっかりした一面なんかもあって関心することだってある。















そのすべてを帳消しにできるレベルに達している俺への嫌がらせ・・・・
言葉を変えて巡りあわせはある意味で奇跡だ。
本人の意思どうのこうのじゃなくて、俺たちはマイナス同士。
そう思う以外には考えられないぐらいに相性が悪い。


だいたいなんで俺なんだ?
俺の何がいいんだ?
意味がわかんねぇ・・・・。




告白されたこともある。
付き合ったことだってある。
でもそれって正直なんとなくだった。
うわべだけの俺がなんとなく知っている女となんとなく付き合っただけ。
恋だの愛だのそんなもんはしらねぇ。
つか、考えたところでわかるもんでもねぇ。




あいつの「好き」って









なんなんだ









あいつも

俺みたいな




たてまえ上の何かを望んでる?




異性に対する興味本意みたいなもん?









「・・・・・・・・・・・・はぁ・・・・・・。」




もう考えることすらめんどくせぇ・・・・
とりあえず性格も、顔も嫌いなタイプじゃない(今のところ)
遊びに行って、まぁそれでいいか・・・。





今のところの俺の中の




そんな存在。








深く考える必要も


悩む必要も







特になし、といったところ。






考え事をしていると、いつの間にかにホームルームは終わっていて、







俺は鞄を担いで教室を出た。



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あれ、阿部、やなやつ?
違います。これがいまどきの男子ってもんなんですよ(きっと)
まぁ会って間もないというかなんというかなんでね、用心深そうな彼はきっとこんなもんですって
・・・・あの、ほんと、なんかすんません・・・・・・・・・!