「あたし、恋、しちゃいました。」




「へぇ・・・・」











あたしの発言の後は文貴のやる気ない返事と
彼が食べるぽてちのポリポリという音と、
雑誌のページをめくる音だけが部屋を満たす。














「なんやねんそのリアクションの薄さはぁあああぁあぁあぁあああああ!!!!!!!!!!!」


「あべしっ!!!」

「あたくしはあなたをそんな風に育てた覚えはないですわよ!このゴミセンターが!!!」

「ゴミっていうな!!」

「この世のゴミが!!クズが!!!ヘチマかお前は!!!!」

「痛いしそこまで言うことなくないぃぃいいいいーーーー!!!?」




あたしは今、本気で文貴の首を絞めている(死なない程度に)



「だからね!あたしね!恋しちゃったみたいなの!!!」

「・・・・まさかのテイク2?」




「ねえ!!恋しちゃったみたいなの!!!」








「う、うん。それは、大変、け、結構なことだと、僕は思います。」






「誰に、とか聞かないの?」

「阿部でしょ?」

「でしょ?でしょ?は?ゴミセンターの分際でわかってましたよー的語尾?」

「だって阿部のこと好きって言ってたじゃんかよーーー!!!」

「あれは好きかもって感じだったんだってば!今はもう完全ロックオンなんだよ!やばいの!本気なの好きなの!!!」

「だーーーーーいちいち首絞めなくていいから!!苦しいからぁああーーー!!!!」










そうなんです。
そーなんです!!!!(かびらじぇい風)



あの階段でのことがあってから、もうあたしはただの恋する乙女なわけで。
阿部を見るたび心臓が弾けて混ざりそうになるわけで。
幼馴染の首を締めないわけにはいかないわけで。














「でも阿部って結構のこと気にしてると思うよ?」



突拍子もない文貴の発言にあたしの体がビクンと跳ねる。








「はぁ!!?な、なんで!!!!!!!!!!?」

「いや、なんて言うか・・・阿部って好きな子ほど怒鳴ったり構いたくなるたちじゃんか。」

「え、ええええぇえぇ!!?でも、普通の女子には笑ったりとか普通に話したりするのにあたしがそばによるとあきらか嫌悪に溢れた顔するよ!?」

「・・・・でもほら、三橋を思い出してみ?」









「確かに・・・・・阿部に羨ましいぐらい愛されてるよね・・・・・・・」

「うん。」




言われてみれば・・・・







「まぁらしくね、アタックしていけばいいんじゃない?」



台詞の後のふにゃりと気のぬけた文貴の笑顔に


思い切りグーをお見舞いした。(特に意味はないけど)





















「そんでさ、なんかいきなり思いっきり殴るんだもん!ひどくない!?」

「それはひどい。」

ひどい。」

「ぇえええーーー!!!そ、そんなことないよ!あたしひどくない!!」

「なぁんかさ、って水谷に関してはバイオレンスだよね」

「そんなことないよ!!栄口!!わかって!文貴はなんかこう・・・・殴って!って顔してて・・・!」


昼休み、あたしと花井と文貴とドアを挟んで栄口とで昨日の話をしていた。
もちろん大事なところは伏せて。
そこはやっぱり文貴のしっかりしたところだと思う。
うん、だから私は君に安心していろんなことを話せるんだよって心の中でそっと呟いた。




「でもさーなんやかんやで水谷に彼女できたら寂しいんじゃない?」


花井があたしの持ってるポッキーを口にくわえながら言う。


「は?いや、全く。」

「即答!?」

「っていうか文貴に彼女がいようがいまいが関係ないしね。殴りたいときに殴るし。」

「彼女に逆恨みされるかもよ!?」

「そしたらそいつも殴る。」

「女も殴るかお前は。」

「いやーでも俺も彼女欲しいなー・・・みたいに殴らない。」

「花井、その綺麗な坊主頭、星型にしてやろうか。」

















「ほう、それは俺も見てみたいもんだ。」























「・・・・・・・・・・・ビビった・・・・・急に出てくんなよ・・・・阿部・・・・」




さっきまで教室にいなかった阿部が、ぐったりした様子で現れた。
短い溜息をついて「別に普通だろ。」と不機嫌そうに眉を寄せる。








「全然普通じゃないし!!あたし心肺停止するかと思ったよ!!」

「そのまま止まってりゃよかったのに。」

「そういう心にもないこというのやめてよね!何?阿部君あたしのこと好きなの?」

「今そういうの聞きたくねぇーわ。」








なんだかいつもよりご機嫌斜めな阿部は、冷たく一言そう言い放つとゆっくり席に戻っていった。






なんだろう、違和感・・・・









その時はその程度にしか思っていなかった。













まさか、まさか、







まさかのまさかなんて
















思ってもないし


頭の片隅にもなかった。

























「うおぁ!!あれ、阿部まだ着替えてた!?ごめん!!」



もう誰も居ないと思っていた部室のドアを開けると、
阿部が静かに座っていた。





「あー、いや、大丈夫。なんつーか・・・・」

















「お前のことまってたんだわ。」











その言葉に自分の耳を疑う。

え、


え?



「えぇえええええーーー!?」

「ホントうるせーな、お前のリアクションは。」

「だって!だって!!え、なんで!?なんで!?なんでなんで!!」




興奮を抑えきれないあたしはあたふたしながらドアを閉める。
ああ、どどどうしよう!!どうしよう!!!

めっさうれしいんですけど!!!!



ちょいちょいと手招きされてそれについて行く。
阿部の座ってる横に腰を下ろすと、阿部が声をひそめた。







「9組のって知ってるか?」

「え、ああ、ちゃん?」



ちゃん。
おんなじ委員会で結構感じよくて、
笑うと普段の雰囲気と全然ちがってすっごいかわいい子。
廊下ですれ違うと声かけてくれて、女のあたしも好感が持てるいい子だった。




「たぶん、そう。」


「ん、知ってるけど・・・何で?」




あたしが首を傾けると阿部は一瞬口ごもって、
なんだか少し不機嫌そうな、めんどくさそうな顔をする。




































「なんか・・・・・・・・・好きなんだって。」



























こんなこと
あってたまるか


一日に、2度も自分の耳を疑うことなんて


あたしは耳鼻科に行った方がいいのかもしれない。






好き、




阿部を?





ちゃんが?





『なんかあたしの友達が阿部君のこと好きみたいでさー協力してくれとか言ってきて・・・・』




あの時の言葉が頭の真ん中に浮かぶ。

あれってちゃんだったの?
阿部を好きって、ちゃんだったの?






そう思ったら頭が真っ白になった。















「・・・・・・・・・・・・・・・おい!!」

「・・・・・・・・・・・・・・。」



「・・・・・・・・・・・・・・・おい!!!!!!聞いてんのか!?あ!?」





「・・・・・・・・・え、あ、うん。」





阿部の大きな声にはっと呼び戻された。

「ぼーっとしてんじゃねーよ!誰か来たらどーすんだよ!」

「え、あー・・・・ごめん。秘密にしとくの?」

「はぁ?んなの決まってんだろ!」

「な、なんであたしには・・・教えてくれたの?」

「お前が一番仲いいからだろ?」

「・・・・・そ、そう、なんだ・・・・」



阿部、あたしのこと一番の友達って思っててくれたんだね。
すっごい嬉しいよ、でも今はそんな素直に喜べないや。




「・・・とりあえず、来週の日曜に駅前集合な、水谷にもちゃんと言っとけよ!」


・・・・・・・・・文貴?日曜日?
ああ、そっか。
はじめてのデートは二人じゃ気まずいから一番の友達とその連れとでワイワイ風にってことね。



「・・・わかった・・・・・」


「・・・・・・お前どーした?なんか変だけど・・・・」

「・・・・・ん・・・・別に・・・・・なんていうか・・・・・へこんでる」

「・・・まぁ・・・そーゆーもんなのかもしんねーけど・・・・」




だってさ、
せっかく好きってわかってすぐのことだよ?

阿部はやっぱりあたしの言ってる事を本気にはしていなかったってことで。


それがこんなにもむなしくて

悲しいことだとは思わなかった。







そのあと、日曜日まで、

あたしは阿部とうまく話せないまま


毎日を過ごした。







阿部と話せない日々が


こんなにもつまらないなんて知らなくて



阿部が自分にとって

こんなにも大きな存在だなんて知らなくて


阿部が


まだまだ好きで



たまらなく好きでしょうがなかった。




でも日曜日は


阿部とちゃんのデートがうまくいくように頑張らないと。





阿部の一番の友達として





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久し振りの更新かと思えば、一変というかもはや天地ひっくりかえしたみたいな急展開!!
お前ってやつは!!!この野郎!!!そう思ってもどうか殴らないでください。
僕悪いスライムじゃないよ!!
ホントすいません。あれです。次から頑張ります。
そう言ってもう何年たつとか言わないでください。
次は頑張りますからぁああ!!!
ちゃんと歯医者にも行きますからぁあああ!!!


ここまで読んでくださって本当にありがとうございました!!