あたしは友達
あたしは友達


あたしはともだち




あたしは


ただの

ともだち











「・・・・・・・・・・はぁ・・・・・・・・・・」


呪文のように頭の中で繰り返された言葉。
すごく重たくて、打撃力がある。



あの日から、
ご飯が美味しくない。

部活も楽しくない。

何度も何度も文貴に心配されたけど


口を開く気にはなれなかった。


だってあたしがこれをしゃべっちゃったら、阿部を裏切るような気がしたから。



阿部の恋が実るまで、

阿部の友達として、

あたしは頑張るんだとか




健気すぎるんですが。





阿部には全然届いてなかったあたしの気持が、
今は億銭の星なんかよりもいっぱいになってて、
伝えても伝えても伝えきれない量なんだよ。


悔しいな。






「阿部なんてふられればいい!!!!」





ガチャンとドアを閉める勢いに任せて叫んだ。














ほんとに今日大丈夫なの?」



水谷家の洗面所で文貴が鏡越しにあたしを見た。
ドアのところにもたれかかって「何が」と不機嫌に答える。



「なんか阿部とあったんじゃないの?」



「別に。」


「・・・俺にも話せないこと?」






ワックスのついた手を洗って、水が排水溝に吸い込まれていく。






今度は鏡越しじゃない文貴の真剣な目に、少しだけ心が痛んだ。




「・・・・ごめん。」



一言だけ言うと、深い溜息をつかれて文貴が横をすれ違う。





ポンッと軽く頭を叩かれて、


それだけでちゃんと心が通じているような、救われたような、そんな気がした。






いつかちゃんと話すから、
もう少し待っててね。
その時は笑い話にできるぐらいに元気になってるから。
今はもう少しへこませてね。

あたしは阿部がまだ、





好きなんだよ。
























駅の改札は休日のせいで人があふれかえっていた。
息苦しい。





そんな中に二人を見つけた時、


息が止まった。










恋人同士に見えて






なんだか大人びているようで、







嫌な言葉が頭に浮かぶ











(お似合い)














その刹那、あたしの変な気づかいスイッチがカチっと音を立ててオンになる。













「チョッイイイイーーーーーンス☆」





あれ、



あたし何のスイッチオンにした?






さん、テンションハイだね・・・!」

「・・・・相変わらずうぜーな・・・。」

・・・それはないわ。」



3人の冷やかな視線が突き刺さる。

あ?
もう関係ねーよ!どうなろうがしったこっちゃないぜ!!!

あたしのねじがぼろぼろと音を立てて取れていった。



「何をおっしゃいますかー!今日は楽しいデートじゃん!?」

「なっ!」

「へぇ?」

さん!!」



阿部とちゃんの表情が一瞬強張った。



少しだけ気にとまったけど、もちろんの如く見て見ぬふりのスルースキル。

もう壊れた暴走機関車ですよ。



デート?





どーにでもなれ(悪)




家を出る直前までのあたしのネガティブ悲しみ根暗オーラはどうやら一線を越えたみたいです。




「まぁ文貴がいるのがちょっと理解できないんですがー」

「ぇえー俺!?むしろなんか雰囲気的にじゃない!?」

「は?あたしがデートしてたらおかしいわけ?」

「いや、完全におかしいでしょ?と言ったら裸足で半ズボンで木に登ってどんぐり食ってるイメージしかないしー」

「ちょ!!あたしどんな奴!?頭おかしいでしょ完全に!!文貴が調子乗ってるとホントうざいわ。マイミク外すわ。」

「何それーーー!!リアルに傷つくよ!!!やめてよ!!!陰湿すぎでしょ!!!」



キーキーとあたしと文貴がいつものやりとりをしていると間を割るようにして阿部が入ってくる。


「ちょ、いいからお前ら少し黙れ。」



なんだか懐かしいやりとりに思わず笑みがこぼれた。
こんな些細なことすらも愛しいほどにあたしは阿部に夢中なのか。

また少しだけモチベーションが下がった。


上がったり下がったり忙しいな、私・・・・。


「まぁまぁ阿部も怒んないでさ!そろそろ行かないと映画始まっちゃうよ!」



そんなところでちゃんがタイミングよく話す。


にっこり笑った顔はほんとかわいくってかわいくって、
しかも空気読めるとか、
そりゃ好きになるよね、とか思ったりして、また地味にへこんだ。





















「・・・?」



歩いてる途中。



「へぇ!!?」




阿部に声をかけられてはっと気付く。




文貴とちゃんが前を二人で楽しそうにおしゃべりしながら歩いてるじゃないか・・・・・・・・!



それはつまりあたしと阿部が自然にセットになることを意味ししているわけで。






「・・・・お前どーした?」








「っ!!!」




あたしが阿部から逃げられないという現状になっているというわけだ。







「何が!?別に!?普通!?」

「いや、全然普通じゃねーし。つかお前なんか色々気にしすぎ。」




阿部の眉をひそめた表情に、涙が出そうになった。

ぐっと飲み込んで笑ってみせる。









「別に、・・・・・・・・・・なんも気にしてない!!!!!!文貴こらぁあーーーー!!!!」


「お、おい馬鹿!!!!」







思いっきり前を歩く文貴の頭にチョップを落とす。




ちゃん可愛いからって狙ってんじゃねーぞボケぇ!!!」


「はぁあああ!!?」

「お前のようなクソレフトが手の届く花じゃないんだよ!!!おまえはヘドロすくって飲んでろボケェエエ!!!」

「言いすぎだろぉおおおーーーー俺が何したっていうのさぁあああ!!!!!!」







ちゃんは笑っていた。


文貴もなんやかんや笑って、


あたしも笑った。







あたしの普通ってこれだよね?
ほら、阿部、あたし普通だよ?
















なのになんで阿部は




そんな顔してるの・・・・・・・・・?




その時阿部の見せた表情は、
怒っているようで、

どこか悲しそうで、



目をそらしたくなった。









































「込んでて連番とれねーって。」

「「えぇえーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!」」









阿部が映画のチケット売り場から帰ってきてすぐの事。
あたしと文貴の声が重なった。



「なんでよなんでよ!!!やだやだやだ!!」

「そんなに人気あんのこの映画ーー!!」

「うわー別のにしたらよかったかなぁ?」

「馬鹿!阿部の馬鹿ーーー!!みんなで並んでポップコーンまわして食べたかったのにーーー!!」

「俺のせいじゃねーっつの!!諦めろ!!」



文貴の頭を軽くはたいてから阿部は短い溜息をつく。


「とにかく!!二人、二人でしか取れなかったからわかれて座るっつーことでいいだろ。」

「まぁ、しょうがないよね。どうする?」









ちゃんがちらりと阿部に視線を促すのを見てしまった。



「じゃ!!!じゃあああたしは「俺と、水谷とでいいだろ?」















あたしの発言をさえぎって




阿部が言った。






その言葉が信じられなくて







ポカーンと口をあけたまま、阿部の横顔を見ることしかできなかった。








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言い訳はしません。
私を殴りたい人はほんと全力で殴ってください。
ホントすいません。
なんもできませんでした。
やりたいことあったんですけど、
ホントすいませんでした。



次は、あの、はい、がんばります。
これ毎回言ってね?



ここまで読んでくださって本当にありがとうございました!!!