「ック、ヒック・・・・・」

雨の中、


あたしは公園の滑り台の下で体育すわりで泣いてる。


「っく・・・うっぐ・・・ひっ・・・・」



誰もいない公園。

聞こえてくるのは雨が頭の上の鉄のプレートをダンダンと叩くように降る雨の音とたまに通り過ぎる車のエンジンの音、あたしのかすれた泣き声だけ。



寒くて、冷たくて、なんだか寂しかった。



「ひっぐ・・・っぐ・・・ぇ、ってぇええええーーーー!!!!」


後ろからありえない威力で叩かれて、あたしは叫びながら後頭部を押さえながら叫んだ。


「何すんじゃコラァあーーー・・・・・あ。」




ふりかえれば目の前には傘の先と幼馴染の見下した目。
口はへの字に曲がっていて眉間にはシワがよっている。



「隆也・・・・。」

「・・・お前、こんなところでなにしてんの?」

「・・・・別に。」

「別にじゃねーだろ。」

「うるさいなぁ。」

「ま、どうでもいいけど・・・・かえんぞ。」

「無理。」

「は?」

「家出してるから無理。」

あたしはもう一度体育座りしなおして、隆也に背を向けた。


「・・・・またおばさんと喧嘩したのか?」

「別に。」

「・・・・お前な、別にじゃわかんねーだろ!!!」

「うるさいなぁ!!!!とっとと帰れば良いじゃんか!!バーカ!!!」

「・・・っ・・・・お前に言われなくたって帰るっつーの。」

「・・・・・・・・。」



帰んのかよ。


ちょっと思ったけど素直じゃないあたしは口には出さなかった。




「ぐえぇ!!!」



傘のもち手のところがあたしの服の襟にかかってあたしののどをつぶすようにしめる。




「お前も一緒に帰んだよ、バーカ。」


隆也がそっぽを向きながら言った。


「その・・・おばさんには黙っててやるから家来ればいいだろ・・・」




今思えば、餓鬼の発想だ。親が気づかないわけないし。あたしはその日隆也の家に泊まって、次の日母親にこっぴどく怒られた。

でも、その時はすごく嬉しくて、

いつの間にか泣き止んで、隆也と一緒に小さな傘に入って、それで笑顔になれた。




いつもなんだかんだでそばにいてくれた。






「隆也・・・・・・。」









「・・・・・・ん。」

「あ。」





目が覚めるとそこは昔懐かしい天井。
周りはきれいに片付けられている。

ベットからは隆也の匂いがして、ベットのそばで隆也が眠っていた。
あたしの手を握りしめて。


「・・・っつ。」

まだ状況を把握しないうちに握られていないほうの手に鈍い痛みが走る。
そこには包帯が巻かれていた。




・・・・・あ、あたし・・・怪我して、それで・・・・




今日の出来事が頭を駆け巡ってあたしを起こす。


そうだよ、あたしぶっ倒れたんだよ。



この様子を見ると隆也はあたしを自分の部屋まで運んでくれたんだろう。

おでこには冷えピタがはられ、枕にはアイスノンが置かれていた。




「部活で疲れてるくせして・・・・・」



きっとあたしの看病してくれて、その途中で疲れて寝ちゃったんだ。
寝ながらでもぎゅっと手を掴んでいる。





「あらー、隆也ねちゃったみたいね。」

「あっ!おばさん。」

あたしのためだろう。おばさんは氷とミネラルウォーターをお盆に載せて部屋に入ってきた。



「ふふ、隆也があたふたしてるからはじめは何かと思っちゃった。」

「・・・・す、すいません!わー・・・・いやー・・・・あ、今何時ですか?」

「12時ぐらいよー。今日はそのまま泊まっていったら?」

「えっ!!!!!」

「だって隆也手握ったまま寝ちゃってるみたいよ?」

「・・・・あ、で、でも・・・・」

「別にいまさら遠慮するほどのなかでもないじゃない!気にすることないわよ。それにまだ顔赤いみたいだし・・・」


そういっておばさんはあたしの額に手を当てて自分のおでこと比べる。


「す、すいません・・・・・・」




「早くよくなるといいわね」とおばさんは言い残して部屋から出て行った。

あたしは隆也を起こさないようにそーっと水の入ったペットボトルに手を伸ばす。








「ん・・・・・・・・?」

「おっと・・・ごめん、起こした・・・?」

「あー・・・・ん、わりぃ・・・寝ちった。」




目をこする隆也。
どことなくあどけなさが残る顔はさっきの夢を思い出させた。




「ごめん、あたし倒れちゃったんだね・・・・。」

「ああ、ホントいい迷惑だったよ。」

「んな!はっきり言わなくても!!あたしだって傷つくよ!にも心があります。」

「・・・・・。」

「・・・何・・・さ・・・・?」





いつもだったら「気持ち悪っ」みたいな感じで返してくれるのに

急に黙るもんだからあたしも困ってしまう。



怒ってるのか・・・・?そりゃ疲れてるのにベッド占領してさ、しかもよりによってこんなちんちくりんの幼馴染かよ!みたいな感じかもしれないけど・・・・・・

そんな怒んなくてもいいじゃん・・・・




隆也は下を向いた。
あたしは無言でそれを見る。














「はー・・・・・スゲーびびった。」







安心したような声にあたしはぽかんと口をあける。






「怪我はするわ、いきなり倒れるわ、熱はどんどん上がるわ・・・しまいにゃ手ヒラヒラさせながら隆也助けてなんて叫びだすし。」

「うっそぉ!!!!?」

「・・・・おかげで便所にも行けねー携帯なってんのにでれねーで・・・・・ったく、心配かけさせやがって。」






そういって隆也どこかやわらかく笑う。




「ご、ごめん・・・・・」

「・・・・ごめんじゃねーだろ。」

「え・・・っと・・・・じゃー・・・ありがとう・・・・」

「・・・・上出来だ。」




にっと笑う隆也。
笑顔は昔のままだった。







「あのさ、」

「あ?」

「雨の日の時の事覚えてる?」

「・・・・・。」

「あたしが雨の中、公園の滑り台の下にいたやつ。すごく小さかったときなんだけど・・・」



隆也はしばらく無言で口元に手を当てて
目を伏せた後、もう一度あたしを見た。


「・・・忘れた。」

「へ?」

「もーんな事忘れた。」


隆也はそっけなく言った。




・・・・そりゃそうだ。あたしだって忘れてたぐらいだし、隆也あんまいちいち細かいこと気にしないし。












「そっか。」


「ああ・・・・っつーかさ、」

「え、あ、あああーー!ベッドでしょ!?ごめんね!もう出るから!!!」

「いや、ちげーよ。」

「え、ああ!!手だよね!?ごめんごめん!汗ばんでて気持ち悪かった!?」

「ちげーって。」

「・・・じゃーなに?」



「さっき台所で自分が言ったこと覚えてるか?」


さっき・・・・





今日意識があるなかでの隆也との会話をゆっくりと思い出す。





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・





「・・・・・・海賊王に・・・俺はなる・・・?」

「言ってねーだろ。」

「クリリンのことかぁああああ!!!!!!!!!!」

「言ってねぇーだろ。」








ホントは思い当たるふしがある。

わかってはいるけど・・・今口に出したらヤバイ気がする。





このまましらを切り続ければなんとかなるかもしれない。
もしかしたらあたしが思ってるのとは違うのかもしれないし。




でも、こんなとき


決まってあたしにとって悪いほうに導くのが神様。





「いくらあたしを好きだから、って・・・・どーゆーことなんだ?」










でました。



神様・・・・どうやらあたしの事はアウトオブ眼中ってわけですかい。



















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・・・・またもや昔話のせいで話が展開しませんでした・・・・。
ごごごご・・・・!!!(マッハのスピードで土下座しながらのごめんなさいです)
次こそは、次こそは・・・!!!コレもなんか勢いみたいな感じで打ち出しちゃって・・・・やっぱり連載向いてないのかもしれません・・・。
心折れそうです・・・。


ここまで読んでくださって本当にありがとうございました。