今まで色んな事を経験してきたつもりでいた。

ランドセルに付けてる給食袋を一回転させようとして頭にぶつけたり

男子によびだされてウキウキしてたら友達のが好きだと相談を受けたり

試験当日に受験票を忘れたり

ガムを食べるつもりが包み紙を口に入れてガムの方を捨てたり。


馬鹿な事ばかり経験してきたあたしにとって


ちょっとこれは刺激強すぎるって。





だってコレはあれだよ。小学生のサッカーチームに所属する別に大して上手くもない木下君ががロナウジーニョ相手にハットトリックを決めるようなものだよ。





急にベッドに押し倒されて、何かと思ったら口の中に入ってきた気持ち悪い生ぬるいモノ。

どんなに体をよじってもびくともしない隆也の覆いかぶさった体は重たくて。

隆也の体は男の体で、あたしは所詮は女の体だと思い知らされる。






「・・・・ふ・・うぅ・・・・」

「・・・なに、泣いてんの?」


ようやく放された唇からはきだされた冷たい言葉にあたしは背筋が凍りつく。



「う・・るさ・・・いよ!!!なんでこんなことするの!?つーかファーストキスだったんですけど!!冗談は顔だけにしてよ!」

「・・・俺の顔が冗談かよ。つーかファーストキスじゃねーし。」

「・・・・は?」




ファーストキスじゃない・・・?



「どーゆー意味?」

「お前のファーストキスは俺が餓鬼の頃にもらってるから。」

「はぁあああああ!!!?あんたそれマジで冗談じゃ済まされないよ!?どーしてくれんのさ!?」

「冗談じゃねーよ。俺はが昔から好きだから。だから今だってこうやってキスしたんだろ?」

「そりゃそうだけどさ・・・って」







隆也が昔からあたしを好き・・・・?



あれ、じゃーやっぱり栄口君が言ってたのはホントだったってこと?

ジーコがサンバを踊りだすって事?

木下がロナウジーニョ相手にハットトリックかますって事?

ただの

ただの

幼馴染じゃないってこと?








「う、そだ・・・嘘だよ!だってあたし達昔から兄弟みたいなかんじで・・・幼馴染じゃん!」

「お前はそう思ってたのかもな。俺はお前の事ただの幼馴染だなんて思ってなかったけど。」

「・・・・違う、違うよ!そんなの違う!」

「ちがくねーよ!俺はが好きだ。付き合いてーし、抱きしめたいし、今みたいにキスだってしてーよ。」

「・・・・・隆也・・・・・。」






うそだ。

うそだうそだうそだ。

だって、

ホント今までそんなのなくて

普通で
普通にやってきたじゃん。


一緒に馬鹿やってきたじゃん。








いっつも隣にいて




笑ってた隆也は
どこにいっちゃったの?









「だって・・・あたし、隆也のことは・・幼馴染・・・としか・・・」

「知ってる。悪かったな。今日はもう帰れ。」






隆也はあたしの上からすっと身を引くと椅子に座って俯いた。



あたしは急いで部屋をでて階段を駆け下りた。

途中でおばさんが「ちゃん!?どーしたの?」と声をかけてくれたけど
軽く会釈をすることしかできなかった。






家に帰って自分の部屋に入った瞬間



あたしは枕に思い切りつっぷしてわんわん声を出して泣いた。






体がおかしかったのは


風邪のせいだったんだ。



ドキドキしたのも

体が熱かったのも
全部風邪のせい。



だって今は唇も足も指先までもが震えてる。









隆也は大人になったんだ。



もう喧嘩したって勝てないし

一緒にお風呂にだってはいらないし

同じ布団でだって寝ない。



体も心も


成長したんだ。




あたしは?



あたしの心はなんなんだろう。



昔のまま?




それとも変わった?



わかんない。
わかんないよ。
もうなにも考えたくない。





あたしはその日泣きつかれて眠りについた。







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話すすまず・・・・なんか急に阿部目線をひとついれたせいで上手いこといかない私です。
なんかギャグとかほのぼのだったのに・・・!波乱万丈だよこれ!どーすんのこれ!
収集つかないよこれ!!



ここまで読んでくださってありがとうございました!