あの日から5日たった。


あたし達は会話どころかすれ違うこともなくなった。



毎朝隆也は朝練で早く家を出るし、夜は遅く帰ってくる。

あたしは普通の女子高生だし。




だから会うことはない。



高校に入学してからこんな感じだったはずなのに、
あたしの心は今まで通りじゃない。


友達のにも「なんかあったん?」と聞かれたけど、
正直言い出せなかった。
初日は無理やり笑顔つくって学校行ったから、
に屋上まで連れ出されて
、無理すんな。」という優しい言葉に涙が止まらなかった。
ホントにホントにありがとうといい続けることしかできなくて、それでもは何にもいわずにあたしの頭をなで続けてくれた。






ああ、あたしなんでこんな悩んでるんだろう。

何をどうしたらいいの?
自分はどうしたいの?



ずーっとずーっと隆也の言葉が頭の中でエンドレスリピートされてる。
昔の優しい隆也、怒った隆也、笑った隆也、泣いてる隆也、そしてあの男の隆也。








あたしは気晴らしにぶらぶらと町を歩く。
普段は友達と一緒にしか歩かない町には色んな音があふれていた。

ふと立ち寄った本屋で立ち読みをしていると


「・・・・さん?」



と声がして、

振り返ればそこには栄口君がいた。





「あ・・・・」

「うん。」

「・・・ぶ、部活は?」

「うん。今日はミーティングだけなんだ。」

「そっか。」


じゃーもう隆也も帰ってるのかな。





「あのさ、ちょっと・・・話せる?」



遠慮がちに聞く栄口君にあたしは黙ってうなずいた。





本屋を出たあたし達は近場の喫茶店に入った。
あんまり人もいなくてほろ苦いコーヒーの香りが鼻をかすめた。

薄暗い、雰囲気がある店にあたしたちは向かい合って座る。




「あのさ、ごめんね!俺の・・・せいだよね?」

「え!?な、何が!?」

「え・・・いや・・・さんが元気ないのって・・・間接的であれ、俺のせいだよ・・・ね?」





すごい、栄口君はすごいよ。
一回しかあってなくて、メールも何度かしたぐらいなのに、




「・・・わかるんだ。」

「わかるよ、なんとなくだけど・・・・。」

「最近は結構普通に笑えるようになってんだけどなあ・・・栄口君もてるでしょ?」

「もてないよ!!」

「あはは、・・・・・うーん・・・そっか。えと、隆也になんか言われた?」

「・・・・あー・・・・うん。になんか言っただろ、って・・・すごい目だったよ。」



栄口君はその時の事を思い出したのか、軽く身震いした。



「それだけ?」

「え・・・あ、うん・・・そんな感じ・・・。」

「・・・そっか・・・別に学校では・・・普通?」

「うーん・・・俺的にはなんとなくだけど・・・機嫌悪そうに見えるけど、やっぱりプレーではあんまりそーゆーところみせないよ。」

「そっか、よかった。」

「でも、さん・・・ダメージ大きいみたいだよね・・。」

「ん・・・さすがに平気とは言えないかな、正直・・・。」



アイスティーを口に含むと紅茶のいいにおいが口から鼻に抜ける。
栄口君を見てみれば申し訳なさそうな表情であたしを見ていた。


「そんな栄口君が、気にすることじゃないよ!」

あたしが笑ってそういっても栄口君の表情は変わらない。


「・・・ホントごめん。俺でよかったらなんでも言って。なんつーかホラ、男の目線とかだと色々違ってくるしなにか力になれるかもしれない。」

「・・・さかえぐち、く、ん・・・・」

「・・・・さん!?」





また、涙があふれた。

悲しい涙じゃなくて嬉しい涙。
だっても栄口君も、
こんなあたしに優しくしてくれる。
それが嬉しくて、頑張ってはってた自分の力が一気に抜けて
あたしはワンワン泣いた。

おろおろしながらも栄口君は大きな鞄からタオルを出してくれて、あたしに差し出す。
あたしもそれを受け取って思い切り顔を押し付けて泣いた。


どれくらいか時間がたって、



「落ち着いた?」

という栄口君の声と共に顔を上げて、小さくうなずく。


「ごめんね。」

「全然!俺は平気だよ!!」

「タオル・・・なんかアレだし洗って返すよ。」


「気にしなくていいのに」なんて苦笑いしながら栄口君が言った。




「なんか、栄口君の笑顔って落ち着く。」

「え、そう?」

「うん。なんか安心する・・・・。」

「そんなの言われたの初めてだなぁ・・・ありがとう」

「んーん・・・。ちょっと、話しても、いいかな?」

「うん。」



あたしは今まであったことを栄口君に話した。全部、意識しちゃってた事も、御飯食べたことも、手を怪我した事も、熱を出して倒れて看病してもらったことも、
キスされて告白されたことも、走って逃げた事も、あの日から隆也の事が頭から離れないことも、
全部話した。


黙って栄口君は聞いてくれた。





「・・・・そっか・・・・。」

「・・・うん。」

「なんか大変だったね。」

「うん。」

「あのさ・・・・、やっぱり、もう・・・阿部の事嫌い?」

「え?」

「阿部の事嫌いになった?」





あたしは思わず声を呑んだ。
そんなこと、考えもしなかった。
隆也の事をスキとか、嫌いとか、そーゆーのはなくて、ずっと昔から一緒にいて、




嫌い?



あたし隆也の事今嫌いなの?








「・・・・・嫌いじゃ、ない。」

「そっか。嫌だったのは確かだけど、きらいではないんだよね。」

「う、うん。嫌いになんて・・・なれない。」

「それは、なんで?」

「ずっと昔から一緒にいて、沢山喧嘩して、沢山仲直りして、一緒に笑ったり、悲しんだり喜んだり・・・あたし達はいつも一緒だったから・・・・。」

「それはやっぱり・・・幼馴染として?男としては・・・見れない感じ・・・?」

「え・・・・う、うん・・・多分・・・・。なんで?」

「えっ?いやー・・・その・・・うーん・・・」


罰の悪そうな顔をする栄口君。



「何!?話して?」

「うん・・・あ、あくまで、あくまで噂だよ?ホント水谷が見た!ってだけだから・・・・なんともいえないんだけど・・・・。」

「うん。」

「この間阿部が女の子と街歩いてるところを見たんだって・・・・。それで、付き合ってるんじゃないかって話が・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」


瞠目結舌とはまさにこの事で、
何も言えないあたしに

「いやあくまでもあくまでも噂だから!ね!ね!?多分阿部はそんなことするような奴じゃないし!!ね?」

とあせって言い聞かせる。


「・・・・んの野郎・・・・。」



何?
なんなの?散々あたしにあんな事して、

鞄とか持ってくれて優しいなとか、
笑顔が昔のまんまでかわいいままだなぁとか、
一人で帰らせたくないとかいってくれたりとか、
転びそうになったらかばってくれたりとか、
手怪我したらめっちゃ心配してくれたりとか、
熱で倒れたら疲れてるなか必死に看病してくれたりとか、
手握っててくれたりとか、
キスしてきたりとか、
好きだよとか言ったりとか、


全部なんなの?
あたしを好きだからしたんじゃないの?
別に女なら誰でも良かったわけ!?

散々昔から好きとか言っといて

こんだけ悩ませといて、


あたし以外の女と付き合ってるだとぉおおおおおーーーー!!!!!?



「・・・栄口君。」

「は、はい!!!」

「おたくらのキャッチャー・・・再起不能にしちゃったら・・・ごめんね?」

「え、ぇえ!?」

「大丈夫。代わりにあたしキャッチャーやるから。じゃ!!!」

そういってあたしは飲み物代を机の上に叩きつけて走って店を出た。




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・・・・あれ?これ大丈夫なのかな?これ栄口君偽者すぎじゃないのかな?正直不安です・・・・。
なんていうか・・・この連載をもう見捨てて「・・・・途中まではみてたけど・・・もうどうでもいいかな。」なんて感じの人が沢山いるような気がしてきました・・・・(ネガティブ)
ホントすいません!ノープランで始めてこんな感じになっちゃって・・・ホントごめんなさいぃいい!!!!
やっぱり短編オンリーでやってた方がよかったのかな・・・・(涙)

ここまでよんでくださって本当にありがとうございました!!