今日は雨が振るってわかってた。
一応運動部だし、天気予報は見てる。


それに今日は母親が出かけるとか何とかで、と前のように飯を一緒に食わなきゃいけなくなった。
あいつの事だからどうせ俺の家にはこないで適当にコンビニで飯でも買って食うだろう。

だったらちょっと遅くなっても関係ないし、

そう思って折り畳み傘を鞄にひとつ入れて電車できた。
普段は自転車だけど。




案の定部活が終わりに差し掛かった頃、雨がいっきにふってきた。
「三橋にかさもってんの?」と聞くとぶんぶん首を立てにふる。

「も、もってる、よ!」

「あっそ。じゃーきいつけて帰れよ。」

「あ、阿部君も!き、気をつけて、ね。」

「ああ。じゃーな。」



かさをさして部室から出たときだった。



「阿部!!」

「あ、」


クラスの女子に呼び止められる。



「お前こんな時間までなにしてんだよ。」

「阿部が部活終わるの待ってたんだよ。」

「はぁ?」

「CD貸してくれる約束したじゃん!!」


そういえばこのあいだちょっと話したときにした気がする。
彼女は髪を触りながら俺を見た。


「別に今日じゃなくてもいいだろ。」

「だってあたし傘持ってないからさーずうずうしくも阿部に入れてもらおうと思って。」

「・・・んで俺が傘持ってんの知ってんだよ。」

「授業中鞄の中見えたもん。」

「あっそ。」

「うん。今日家よってもいい?」

「・・・・ダメっつってもくんだろ。」

「もち!話のわかるやつだねぇ」




コイツは、どこか、なんとなくだけどに似てる気がしてた。
拒みきれない、
受け入れてしまう、
コイツには甘い自分が居た。
特別視してるつもりはない。




「あたし自転車で来てるからニケツで帰ろー」

「あ?ああ。」

自転車置き場でシルバーの真新しい自転車にまたがった。
少しサドルが低い。乗りづらさは否めなかった。
でも、もっと気になるのは背中に当たる感触。
人のぬくもりだ。
男ってこういうところで本当に弱い生き物だとつくづく感じる。
どこかでそれがだと思う自分が居て、ばかばかしく思った。
後ろから俺の腰に回された左手を見る。
細くて綺麗な女の手。見とれてしまった。



「しゅっぱーつ。」


後ろでかさを俺の方にもかかるようにさしてくれていたけど、
ぶっちゃけ意味ない。
風でズボンや肩はびしょびしょで、視界すら危うい。
でも、止まる理由にはならなかった。
雨の冷たさがジンジンと体温を指先から吸い取っていく感じ。
なんとなくだけど、
自分の嫌なことが、辛いことが、
洗い流されていくように思えた。

路地に入ると後ろで彼女がきょろきょろとしているのがなんとなくわかった。


「へー・・・阿部君ってこの辺にすんでるんだー。結構あたしん家近いよー」

「そーなんだ。」

「うん。今度遊び来る?」


楽しそうな彼女の声が心地よく感じだ。


「・・・機会があったらな。」

「はぐらかされたー」

「ハハ。」



家の前で自転車を止める。
ブレーキをかければきぃーーっと耳に響く音がした。
少し前のめりになって彼女の体が背中にもたれかかる。(ばっちり感触あり)


「ちょっと待ってて。」

「うん。」




足早に家に駆け込む。
部屋まで走って適当に散らばっていたCDを紙袋につっこんだ。
戻り際にリビングがちらりと視界に入る。
そこにはおわんが二つ伏せておかれていた。

「・・・・。」

きっともう、ここでと飯を食うことはないんだろう。
・・・・いやでもこの間胸ぐらつかまれたし・・・。
あれって期待していいってことだろ?
あーでもあいつの性格上きまづくて来れないとか・・・ありそうなだ。
つーかそういえばあいつまだ家かえってきてねーのか?
こんな時間までどこほっつき歩いてんだ!!
仮にも女な事をあいつはわかってない。
自覚がなさすぎる。
・・・・。

はっとした。
人を、女を待たせているのに。
俺としたことが考えこんでいた。
急いで玄関の扉を開けると彼女が眉をしかめていた。


「これ。」

「サンキュー。」



「送っていかなくてホントに平気なのかよ。」

「平気だって。家近いっていってんじゃん。」

「でもお前あぶなっかしいから。」

「平気だよ!ありがとねーバイバイ!」


にっと笑った顔に
すこしドキッとした。
俺も釣られて笑って手をふる。





そんな時聞こえてきた不自然な音。


音の方向を見てみればこれでもかと言わんばかりに見開かれた目、
震える肩、
どこか、悲しさを物語っている口。





「・・・・・・・・おま・・・!!!」




いつからそこにいんだよ!
なんで外にいる?
つーかなんで俺は気づかなかったんだよ!!

声をかけようとしたときにはは普段からは想像もできないスピードでその場から逃げるように走り去っていった。
一瞬追いかけようとしたときに

「阿部!!」

と、声をかけられて、イライラしながら「ぁあ!?」と振り向くと


「好き。」と一言言われた。


「・・・・・。」

「行って欲しくない。でも、行ってあげなよ。」

「・・・・悪い。」

「謝らないで。傘かえす!」

「は?お前ぬれ「ぬれて帰りたい。」」

震える声がかなった。
雨が降っていてもわかるぐらい、彼女の目からはぽろぽろ涙が流れていた。



「ぬれて帰りたい気分だから。それに、アノ子、傘もってなかったよ。」

「コレに入れて上げなよ」とくしゃりと笑ってみせる。



「悪い。」

「だから謝らないでって。あたし可哀想じゃん。」

「・・・悪い。」

謝ることしかできねーよ。

「気にするでない!!それじゃー!また明日ね!!」

「ああ、じゃーな!!」



俺はかさを持って全力で走る。
部活での疲労はもちろんあった。でも、俺の足は止まらない。
の顔が、あのバカみたいな顔が俺の足を自然と動かす。


迷わず向かったのは、



あの公園。




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またまた阿部視点です。
あーれれれ?なんかもう意味わかんないぞ!?これどーすんだ!!
だんだんどうしていいのか自分でもよくわからなくなってきました(笑)でも気にしません!それがわたしだから!!
けっして立ち止まらない。格好つけてますけど、全然かっこよくないってオチで。


ここまで読んでくださって本当にありがとうございました!!
もうすぐフィニッシュです☆