ああ、やっぱりそうだったんだ。
どう頑張ったって、
もう遅かったんだよ。
あの時、
気づいていれば、
この気持ちが
恋だって事に。
一ヶ月もたってないのに。
遅すぎたなんてどんだけだよ。
雨が痛い。
風を切って走ってるせいでバチバチ皮膚にあたる。
息も上手くできない。
あたしはいったい何処へ向かって走ってるんだろう。
このままどこか遠い世界にいけないのかな?
隆也のいない世界に。
きっと今のあたしにとって空っぽな世界だろうな。
味わったことのない胸の痛み。
心臓から気管までをギュッとつぶされてるみたいに痛くて痛くて
苦しくて、どうにかなりそうだった。
なにこれ?なんであたし、こんな苦しいの?こんなに、こんなに隆也が好きだったの?
いったいいつから?
こんなことなら
好きなんて気持ちに気づかなければ良かった。
あたしの日常生活を返してよ。
気がつけば公園の前で足は自然と止まっていた。
誰も居ない静まりかえった公園。
「・・・・・・・。」
よくわからないけどこの公園が好き。
落ち着く。
心が休まる。
あたしはぬれて顔にひっついた髪を流しながらゆっくりと滑り台の下に行く。
ダンダンと鉄板を叩く音が懐かしく感じた。
そういえば、
隆也はここに居るときいつも向かえにきてくれたっけ。
何処に行くなんて伝えてないし、普通に歩いてたら道路側からは見えないこの場所。
なぜか隆也はいつだってあたしを迎えに来てくれた。
見つけてくれた。
ああ、きっとここで初めて見つけてくれたときから好きなんだ。
大きくなってからの勘。本当になんとなく思った。
全然正確さはないのに、どこか自分を納得させた。
ああ、アノ子は誰なんだろう。
彼女かな。
いや、普通に考えて彼女だろ。
何があたしの事好きだよ。
バカ隆也。
普通に女の子と付き合ってんじゃん。
学校の女子なんてほっとけ?
お前がほっといてないじゃん。
ずっと前からとかちゃっかり言ってるけどホントは幼馴染だし、こいつだったらOKくれんだろ、
みたいな気軽な気持ちだったんじゃないの?
これだから男ってのはやなんだよ。最低だよ。
結局あたしの事スキなんてその程度の気持ちだったわけね。
あたしなんて、ホントにホントに好きなのに。
自分で恥ずかしいと思うぐらいスキだって気づけたのに。
隆也のいいところなんて死ぬほどいえるのに。
なんで、なんであんな奴好きなんだよあたし。
あーあ、どうせだったら栄口君みたいな人を好きになればよかったな。
いい人だし優しいし笑顔神だし。
隆也なんて目つき悪いし口悪いし俺様だし、
すぐ怒るし高飛車だし・・・・でも笑うと結構幼い顔しててかわいくて、
口の割りに本当はやさしくて頼りになって、俺様だけどなんだかんだであたしのわがまま聞いてくれて
さっきまで悪いところをあげていたのにいつの間にか主旨が変わってる自分に驚いた。
あたし、
隆也の事めちゃくちゃ好きじゃん。
「・・アハハ・・・今更・・・バカみたいじゃん。隆也の次に大バカ者だよ。」
「・・・・誰が大バカだって?あ?」
冷えてきて風邪でも引いたかな。
幻聴が聞こえる。
あたしもどうしようもないな・・・・・。
ふとそう思った時、
後頭部にドスッと鈍い音が脳を振動させるように響いた。
「いってぇえええーーーーーーー!!!!」
「・・・はぁ・・・何、シカトしてんだ、コラァ!」
「いったいな!何すんだコラァ!!ミルコクロコップに電話すんぞコラァ!!」
「はっ・・・たりかましてんじゃねーぞ!・・・・バカ!!」
「・・・・・たか・・・・や。」
頭を摩りながら(プラスはったりかましながら)振り返ればそこにはビシャビシャにぬれて息を切らしている幼馴染の姿があった。
「なんだよその顔は。」
「・・・・なんで、ここ、・・・・」
「わかったかって?」
隆也は小さく頷くあたしに小さくしたうちをする。
「テメェーの事ならなんでもわかんだよ!俺がどんだけお前を好きだと思ってんだぁ!」
「・・・・・・・・恥ずかしいことでかい声で言うな。バカ隆也。」
「うるせぇ!俺の方が恥ずかしい。つーか泣いてんじゃねーよ。」
「・・・うるさ、・・泣いてな、い。」
「・・・・・・はいはい。」
あきれたようにそういいつつもあたしの頭を優しくなでてくれる大きな手は冷え切っていた。
きっと走ってきてくれた。
こんなあたしのために。
ここまで。
「ホラ。風邪引くから、帰るぞ。」そういって伸ばされた手をあたしはつかめなかった。
「どーした?」
イライラした様子で隆也は眉をしかめる。
「・・・あっち行ってよ」
「はぁ?」
「彼女待ってんでしょ?早く行けば良いじゃん。」
「あー?彼女なんかいねーよ。」
「居たじゃん。見たじゃん!目あったじゃん!」
「彼女じゃねーよ。」
「セフレか!?今時の若者は怖いですねー!!」
「怖いのはお前の頭ん中だろ。普通に学校の友達。傘ないっつーのと貸すものあったから送ってやっただけ。」
「途中までだけどな」とつけたつように言った。
「・・・ホント?」
「ホント。」
「かわいかったよ?」
「・・・まぁーな。さっき告られた。」
「うそ!」
「ホント。断ったけど。」
「・・・・なんで?」
「が好きだから。」
「・・・・・・・・・。」
「あーもー・・・わかってる。別にそんなこと気にしなくていいからさっさとかえんぞ。」
強引にあたしの手を取る。
あたしも黙って隆也の手を握り返した。
隆也はつないでいない方の手で傘を開く。
二人ともずぶぬれなのに今更傘をさすのも変な話だけど。
「・・・?」
その場から動き出さないあたしを不思議そうに隆也は見る。
「・・・あー・・・もうなんもしねーから安心しろ。ホント悪かった。」
「ちがう。」
「は?」
「隆也はあたしのこと・・・わかってないよ。」
「・・・何がいいてぇーの?」
「あたし、隆也の事好きだ。」
練習の時はあんなに五月蝿かった心臓も今はびっくりするぐらい静かだった。
「・・・・・・・・・・・・・・。」
「隆也は、ずっとそばに居てくれたからその気持ちが好きだなんて思ってもなかったよ。自分でもびっくりした。」
「・・・・・・・・・・・?」
「特別な存在な隆也を当たり前だと思ってた。」
「・・・・・・・・・・おい・・・ちょ・・・。」
「でも、自分でそれが恋とかスキとか、認めたくなくて・・・・。でも今更ようやくわかったよ。」
「・・・・・・・・・・・・おい、それ以上は・・・」
「隆也が・・・大好きです。」
やっと言えた自分の気持ち。
本当にここまで長かった気がする。
そんな余韻に浸るまもなくあたしはいつの間にか隆也の腕の中に居た。
二人とも雨に打たれて冷たくなっていたはずなのに、
触れ合う部分は布越しでもわかるぐらい温かかった。
「ちょ・・・隆也!恥ずかしい!そとだよ!誰かに見られたら・・・」
「うるせーな。お前が悪い。」
「は!?あたし!?」
「・・・・どこまで俺を夢中にさせんだよ。ぶっちゃけスゲーやばい。」
「・・・・な、なにがだ・・・」
「めちゃくちゃ嬉しい。」
「・・・隆也。」
「、好き。」
「・・・あたしも、好きだよ。」
いっぱい傷つけてごめんね。
いっぱい助けてくれてありがとう。
長い間、気づいてあげられなくてごめんね。
長い間、自分の気持ちを見て見ぬ振りして、
幼馴染っていう檻に閉じ込めてきて、
隆也に辛い思いさせちゃったよね。
ホントにホントにごめん。
素直になかなかなれない自分がいたけど、
今はもう違うよ。
あたし達は二人で小さな折り畳み傘に入る。
手をつないで。
「お前なんで家の前にいたわけ?」
「ああ、鍵忘れちゃってさ。入れなかったんだよね。」
「・・・・相変わらずバカだな。」
「否めないところがムカつくな。」
「まぁーいいや。とりあえずこれからはそーゆー時は連絡しろよ。」
「ガッテン!!あ!そう!試合見に行ってもいい?」
「・・・唐突だな。試合か・・・ダメ。」
「は!?何で!?」
「クソレとかと絡むから。」
「別にいいじゃん。」
「よくねーんだよ。」
「隆也の応援したいじゃん。野球みるの好きだし。」
「・・・・。」
「捕手っぷり見せろやコラー。」
「あーもーわかったよ。俺だけ見てろよ。」
「うざ。隆也君は相変わらずの俺様ですねー。」
「るせ。」
「いいとこみせろよ。」
「わーってるよ。」
「今日夕飯なんだろうー!遅くなっちゃったからおなか減った!」
「へーへー。じゃーさっさと帰るぞ。」
「うん!!!」
いつもどおりの会話がちょっぴり違う気がした。
隆也が好きだよ。
あたしの扉の鍵は
ずっと隆也が持っててくれたんだよね。
でも、あたしが扉ごと、隠しちゃて、
いつまでたっても素直な自分を出せないようにしてて、
ずるかったね。
ホントにホントに待たせてごめん。
見つけてくれて、
ありがとう。
END
---------------------------------------------------------------------------------------------------
連載終了です!!!いやー長かった。とんでもなく長く感じました。
なんていうかこれで終わりで良いのか私!?でもコレが一番キレが良いような気がする。なんていうか・・・色々矛盾がおおい連載でしたが、皆様から
とてもあたたかいコメントを沢山いただきました!ホント嬉しかったです。ホント励みになりました。
これはさりげない予告というかなんというかなのですが・・・・
第二部を考え中です。付き合いだしてからの二人のお話ですね。実はこの連載が結構皆様から好評だったので、初めて人と付き合うヒロインの奮闘っぷりを
うだうだやっていこうかと・・・そのときに裏(性的表現を含む)作品がでるとおもうのですが・・・・どうなんですかね・・・。
まぁあくまで企画ということなので(笑)
とにかく今までご愛読本当にありがとうございました!!!!