「ねぇ、元希。」

「んー・・・」

「十二巻とって。」



何気ないあたしのお願いに元希は眉をしかめた。

何故そんな嫌悪感あふれる顔であたしを見る?
そんなにおおきく踏み外して(今まで成績優秀を保ってきた主人公が不良にあこがれて人生の道を踏み外す青春漫画)12巻を取るのがいやなんですか。


のがちけーじゃん。自分で取れよ。」

一瞬あたしの方を見たものの、彼はまた自然と雑誌に視線を落とした。
ベットの上に座ったまま、一ミリも動こうとはしない。


「・・・・いや、ギリギリ元希のが近いし!取ってよ!」

「はぁ?ここは俺の部屋なんだから俺がルールなんだよ。」

「なんだその昔のバトル漫画の敵の台詞みたいな発言は。いいよーだ!自分で取るしー。死ね!!」


全力で舌打ちをかましてあたしはのろのろと重い腰を上げて漫画に手を伸ばす。
あたしの目的のそれは机をはさんでベットの右下にあった。
絶対元希の方が近い!!その証拠にあたしがちょっと腰を上げて手を伸ばしたぐらいじゃ、ギリギリで届かない。
ピンと腕を限界まで伸ばしてみるも


「・・・・・・・・。」

「・・・・・・・みじけー腕。」

「・・・・殺すぞノーコン。」

「あぁ?幼馴染だからって言っていい事と悪い事があるんじゃねーのか?あぁ?」

「あ?黙れノーコントロール。あーあ、秋丸君だったら絶対超笑顔で取ってくれるのに・・・・なんでこんな性格もコントロールも悪い男が幼馴染なんだか。」

「・・・・・・・・・・。」

へっ。黙らせてやったぜ。
なんて少し優越感に浸りつつもあたしは視線を目的の漫画に移すことにした。
元希と喧嘩をするよりも、今はこの続きが読みたいという思いがあたしの心の天秤を傾けたから。
しかたなくもよいしょと腰を持ち上げて膝たちで少し移動する。
もうあたしの手の届く範囲までつめよっただろうという時だった。


その目的の漫画が




あたしの手の中に収まる前にすっといなくなる。








「元希?」

「・・・・。」




さっきまでベットに胡坐をかいてすわっていたはずの元希がいつのまにか漫画を上の方に取り上げていた。




「・・・・元希さん・・・・・」

「ほら、とってやったぜ?」

「・・・やな奴。」

「やな奴で結構。」

「・・・あーもぉ!いいから貸してよ!!」

「そんあ読みてぇなら・・・ほら、とってみ?」


そういって彼はニタリと口角を上げる。

案の定、彼はすんなり漫画をあたしにとらせてくれない。
あたしが手を伸ばすたび上やら右やら左やらにスッと移動させて触れるコトすら許さない。
それにあたしもむきになって手を伸ばした。



「ちょっ!!元希!!いい加減に・・・・・っ!!!」



圧倒的なリーチの差。
どんなに手を伸ばしたって身長差からいって普通に届くわけがない。
だんだんとイライラしてきたあたしは、もう我慢ならないと

漫画めがけて飛びついた。









バカだった。



そんなことしたらどうなるかなんて


自分でもちょっと考えればわかることじゃないか。



「うぉわぁあ!!」





驚いた元希の声とともに、あたし達はそのまま倒れこんだ。
バフンとベットが大きな音を立てる。
あたし達は二人、布団に沈み込む。







「・・・・・・・・・。」

「・・・・・・・・・・・。」


あまりに突然のアクシデントであたし達はしばらく無言になってしまう。

当たり前の話だけど幼馴染だからって男と女な事はかわらないわけで。
こんな体を密着させてドキドキしないわけがない。
それにあたしは、そんな兄弟みたいに育っていても元希を意識しているから。


「・・・・。」

「え、あ、わっご、ごめん!!!すぐどくから!!!怪我とか大丈夫!?マジでごめん!!」


元希の声にハッと我に返ったあたしはぐっと腕を突っ張らせて上半身を持ち上げようとした。


でも、持ち上がらない。



その原因に気が付いた瞬間、
一気に体温が上昇するのがわかった。





「も、元希・・・・・・?」






それは元希の力強いうでが
あたしの腰に絡み付いてきて
彼の足があたしの足の間を割って入ってきたから。

いきなりの元希の行動に戸惑いを隠せない。
普段どおりに出来ない。
冷や汗が全身から噴出した。





。」

「な、なに?」

「このまま・・・・セックスしねぇ?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はぁ?」






信じられない言葉が左耳から右耳へと突き抜ける。





「だからこのままやらねーかって聞いてんだけど。」






えーっと、落ち着けあたし。
うん。一回冷静にって・・・・・・・・



「はぁぁあーーーー!?ちょ、やだやだやだやだやだやだやだ!!!バカバカバカバカバカ!!!そんな男だとは思わなかった!!!」

「んなこと言われたってしょうがねーだろ。健全な証拠だ!」

「証拠だ!じゃないっちゅーの!!大事な幼馴染にそんなことしていいと思ってんのかコラ!!」

「うるせーな!俺はお前の事幼馴染だなんて思ったことねーんだよ!!観念しろ!!」

「観念の使い方ちがう!!」

「あーーもーーーいちいちうるせーな!!お前はどうなんだよ!!」

「なっ!そりゃ、あたしだって物心付いたときから元希の事好きだった・・・・・よ・・・・・」

「はぁーん・・・・俺の事好きだったのか。」

「なっ・・・・・!」

「俺は別に好きとは言ってねーし。」

「誘導尋問かコラァアーーー!!!」

「しらねーよ!あーつーかもう無理。これ俺限界。」

「ちょ!ひどい!!幼馴染を性欲の捌け口にしようってわけか、あ?コラ!」

「そんなんじゃねーっつーの!!いいからやらせろボケ。」

「調子のんな。そんなやりたいんだったら他あたれ!!惚れた弱みに付け込めると思うなよ!!」

「あーもーわかんねーやつだな!!がいいんだって言ってんだよ!他の女じゃ意味ねーんだよ!」

「っ・・・・!・・・・・もーやだぁー!!あたしもっとロマンチックな告白にあこがれてたのにーーー!!!入り下ネタだし最悪だよーー!!」

「いいんだよ。いちいちうるせーなぁ・・・終わりよければすべてよしっつーだろーがよ!!」

「よしじゃねーよ!!大体話ぶっ飛びすぎだろ!!!告白する前にセックスさせろってどんな話だよ!!」

「いいんだよ!意思疎通!意思疎通!!付き合いなげーんだからわかれ。」

「わかるかボケーーーーーーーーー!!!」








あたしが彼に馬乗りになったままわめいていたそのすきを狙われ、ぐるりと視界が回転する。



あっという間に天井を背にした黒い元希がいて





「その元気どこまで続くかみものだな。」



と笑ってみせられた瞬間




もう逃げることは出来ないと覚悟した。





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やる気ないなら書かなければ?
自分でもわかってます。ホントなんかひどい有様ですいまっせん。


ここまで読んでくださって本当にありがとうございました!!