「うわぁ!!」
それは一瞬の出来事だった。
今日の晩御飯のカレーにはふくしん付けか、それともらっきょか。
そんなくだらないことを考えながらクラスみんなのノートを持って階段を下りていた。
クラスみんなのノートをあたし一人の腕の中に収めるって事は意外に大変で足元は見えない。
その上ボーっとしていたもんだから、あたしはうっかり足を踏み外してしまった。
「・・・・大丈夫?」
「ぉあ、水谷。」
ノートは何冊か散らばってしまったものの、あたしは全然痛くない。
その理由は、後ろであたしの腕と腰を細い、でもどこかたくましい腕で支えられていたから。
「サンキュー。」
「いえいえ。それ一人で運んでんの?」
「まーね。社会科係だから。」
「は?」
「はやびきー!というか逢引?」
「えっ!!じゃーやっぱサッカー部の奴と付き合ってるってホントだったんだ!」
「うん。ホントだよ!なに?水谷狙ってたの?」
「は!?いや、別にそーゆーんじゃないけどさー・・・」
水谷はぽりぽり頭を掻きながら目をそらした。
大きなエナメルのバッグが窓からこぼれここむ太陽の光を反射して水谷をキラキラまぶしく魅せる。
好きだからそういう風に見えるのかな?
まぁ別にいいや。
「今から部活?」
「へ?あ、うん。」
「じゃー早く行かないと阿部君に怒られちゃうね。」
「なんで阿部なの?」
「えー阿部君よく水谷の事怒ってるイメージあるじゃん。クソレー!みたいな。」
「・・・よく知ってるな・・・。」
「まぁーね!野球好きだし!」
野球やってるあんたも好きだし。
ホントはもっとこうやって話していたいけど、こんなところで油を売っている暇は彼にはない。
「それじゃーありがと。」そういって軽く首で会釈しつつもあたしは階段を下りる。
三段ぐらい降りたとき
「ちょっと待って!」と水谷の声が階段に響いた。
振り返ると少し上から水谷があたしを見て口をパクパクさせている。
「なーんーだーよーコレ重いんだから呼び止めんな!クソレめ。」
「クソレって言うなよ!それ一人で持ってくの?」
「だからそうだって何度もいってんじゃん!」
「俺も手伝うよ!!」
「・・・・。」
「・・・なんだよその顔は。」
「・・・いや、あの、えー・・・あ、ありがとう・・・。」
「いいって!気にすんなよ!」
そういいながら水谷はあたしの手からてんこ盛りになっているノートをガバっと取ってくれる。
あたしの手元には2、3冊のノートしかない。一気に腕が軽くなった。
「わ!!そんなに沢山悪いよ!いいって!!」
「いや、大丈夫だよ!全然余裕。」
そういって水谷は笑ってみせる。
こいつって、案外男前なんだよな。
部活やってる男子(とくに運動部)はスポーツやってる姿がかっこいいとかいうけど、
日常生活でかっこいいと思ってしまうあたしは重症なのか?
いや、多分こいつ顔整ってるほうなんじゃない?
「・・・・何?俺の顔なんかついてる?」
「えぇ!?いや、べ、別に?まぁ・・・しいて言うなら、肩についてるかな。」
「え!?何が!?」
「いや、ほら・・・・アレが。」
「いやいやいや!!!アレって!?アレって何!?ねぇ!?アレって何!?ちょ、待て!待てって!言えよ!言えって!!」
「うるさいなぁ・・・・その人も怒ってるよ!」
「ぇえええーーー!!?何!?人?人なの?!やっぱ人なの!?アレなの!?」
ふざけながら向かった社会科教室。
先生は居なくて置手紙みたいなのがあった。
『ここにノート置いといて』
そう書かれていた。
ドサドサと重たそうな音がして、縦にノートが詰まれる。
結構な高さになって塔のようだ。
「ふう。」
「水谷悪いね。こんなん手伝わせちゃって。」
「気にすんなって。」
「うん!全然気にしてないよ!」
「・・・・少しは気にしてくれ。」
「嘘嘘!ホントにありがとうございます。」
律儀にぺこりと頭を下げてみた。
「・・・・・。」
あれ?無反応?
恐る恐る頭を上げてみると困ったような迷っているようなそんな顔で落ち着かない様子の水谷がそこにいた。
「・・・・どしたの?そんな困らせるつもりは微塵もなかったんですけどー。」
「あ、いや、そーゆーんじゃないんだけどさー・・・あー・・・どーしよ、うん。よし!!」
何かを決断したらしく語尾が強い口調だ。
「!」
「な、なに・・・?」
「俺のお願い聞いてくれない?」
「・・・ウンコ食えとかはちょっと無理だよ?」
「そんなことたのまねぇーよ!!」
「じゃー何?」
「水谷頑張れ!って言って!!」
「はぁ?」
「いいから!!言って!!」
「・・・み、水谷頑張れ!」
なんだ?部活行き詰ってんのかな?どういうことなの?
よくわからないまま言われたとおりにそういえば水谷はさっきよりも大きな声で「うっしっ!!!」と自分に渇を入れる。
「!!」
「こ、今度は何!?」
「俺が好きだよ!!付き合ってくんない!?」
閑静な社会科教室に水谷の声だけが聞こえた。
壁が声を吸収する。
あたしと水谷しかいないこの教室で、
水谷はあたしをまっすぐ見る。
「それ本気で言ってる・・・?」
「うん!めっちゃ本気!!」
「・・・・・。」
「が頑張って!って言ってくれたから、頑張ってみた。」
「・・・・じゃー水谷。」
「何?」
「頑張れっていってよ。」
あたしは真っ赤に染まった顔を隠すように俯きながら言った。
「頑張れ!!!」
嬉しそうな大きな声が聞こえて、
あたしの震える唇がかすかに動く。
息が混じった小さな声。
でも静かな教室で、
二人の距離なら充分とどく声。
「水谷が好き。」
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いまいち水谷が掴みきれない私です。
なんなの?誰?誰なの!?
ホントはほのぼのとか書きたいのに!!書きたいのに!!!
ちくしょうぅうううう!!!つーか同じ言葉なんども使いすぎだから!自分でもわかってるのに!!
ホント無知丸出し!!
ここまでよんでくださって本当にありがとうございました!!