どうしよう


どうしよう


どうしよう









「あの・・・何かお困りですか?」

「わっ!し、渋沢君・・・・」

「え・・・俺の名前・・・・」



しまった・・・名前・・・・・







電車のなか。


あたしはおろおろとドアの近くでうろついていた。

声をかけようか、かけまいか。

毎朝同じ電車の同じ車両に乗る人。
いつも大きなスポーツバッグをさげていて茶髪の大きな男の子。


あたしは彼が誰だか知っている。

でも彼はあたしが誰だか知らない。


あたしがひそかに想いを寄せていることももちろん知らない。


今日は思い切って声をかけようかな、どうしようかな。

なやんでいた。

そんなときに声をかけられたもんだから、あたしはかつてない動揺っぷりを見せ付けた。


「あ、あの・・・・・」

彼が心配そうに・・・・いや、不審そうにあたしを見る。



やばい、やばいよ!!!これやばいって!!!どれぐらいやばいかって言うと、

ドラクエでMPがほぼ0の魔法使い以外みんな全滅。

ぐらいにヤバイ!!!だいたいそんな状況ならゲームはリセットしちゃうけど、あたしの今の状態はリセットしたくてもリセットできない。
おいおいおいおい!こいうなりゃやけだよこんチキショー!やるっきゃない!!(スローガン)




「あ、ああああああああああ・・・・・・・・・」



がたがた震える足にグッと力を入れてあたしは彼を見上げた。




「あ、あの!し、し、渋沢克郎さんですよね!?」

「は、はい・・・えっと・・・どこかで・・・?」




「あの、私・・・えと・・・・この間の桜上水戦!み、み見ました!!あの、えと・・・す、すごくかっこいいくて、キーパーとしてえと、あの・・・・・・あ、あれ?」


あたしがふと彼に視線を移すと、彼はプルプル肩を震わせていた。

どうしよう・・・あたしに会ってしかも急に話しかけられたせいで・・・・具合が悪くなっちゃったのかな!?


「ご、ごめんなさい!あの、あたしのせいで・・・・いやぁあのホント呪われてるんですかね?ごめんなさいごめんなさいごめんなさい・・・・って」

「くっくっくっくっくっく!!!!」

「え、あ、あれぇ・・・?」

彼はお腹を押さえて口元に手を当てながら笑っていた。


「あ、あは・・・」

「あ、いや、すいません。つい・・・・。」

「え!いや!そんな!あやまるのは私のほうで・・・・ホントいきなりごめんなさい!気持ち悪い・・ですよね・・・すいません・・・」

「そんなことっ、ないですよ・・・・いや・・アハハハ・・・どんな人なのかなと思ってて・・・・」

「へ?」





「電車毎日一緒なのも、この間の試合に来てくれてたのも、俺と目が合うと急いで携帯の画面に視線を移すのも、全部知ってた。君が誰なのかも。」







渋沢君はすっと背筋を伸ばしてにっこり笑う。




「はじめまして、さん?」


「へっ・・・な、なんで、なんであ、あ、あたしの名前・・・」

「俺の名前を知っといて自分の名前を知られてるのは・・・不思議なのか?」

「え、ち、ちが・・・えぇ!?」





彼の口から出たのはあたしの小学校の時からの親友の名前。
受験して武蔵森に行ってしまった
渋沢君の名前を教えてくれたのも試合に連れて行ってくれたのも全部だった。


「あのね、今日ね!多分あれ武蔵森の制服だと思うんだけどね!大きくて茶髪でね!かっこいい子がいたの!

おばあさんに席を譲っててね!そのときの笑顔がすっごいかわいいの!でも普段はかっこいいの!誰だか知らない!?」

「あー・・・・すっごい大きい?」

「うん!大きいよ!180センチぐらいは軽くありそう!!」

「多分それ渋沢君だよ、」

「渋沢君?」

「そそ、渋沢克郎君。あの子サッカー部のキャプテンだよ。今度試合あるらしいんだけど一緒に見に行く?」

「いいの!!?」

「いいよ。あたし彼氏がサッカー部だからさ。」

「ぇええ!!!?彼氏いんの!?」


「言ってなかったっけ?」





あたしに渋沢君を教えてくれた友達。







「同じクラスなんだ。彼女。それで君の話を聞いたんだ。」

「ぇえ!?」


終わった・・・・・このあたしの変態っぷりがばれてたなんて・・・・・・・


嫌われた!完全に嫌われた・・・・


あたしの人生グット・バイ。



さよならあたしの青春。

このまま電車の窓を突き破って死んでしまおうか。それとも彼を殺してあたしも死ぬか。






「電車でいつも一緒になる女の子で、いつも嬉しそうに笑ってる子。ずっと気になってた。その時彼女から君の話を聞いてピンときた。」







「君が、・・・。俺の知りたかった電車の中だけの女の子だった。」




「ちょっとキザかな」と渋沢君が笑った。
あたしに笑ってくれた。



あたしと渋沢君は




今日からただの電車だけのつながりじゃなくて




知り合いで、





もっともっと今以上に知りたいと思った。






「あらためて、」


さん」

「し、渋沢克郎さん」







「「はじめまして」」









お互いをお互いが想い始めるきっかけになった日。




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お題です。と、とりあえず渋沢(白)夢で1を飾ってみました。
なんかこれお題にそってるんですかね?そってない気もする・・・・でも、頑張って書いてみました!渋沢愛してる!(は?)

では、では、ここまで読んでくださって本当にありがとうございました!!!