一通のメールが届いて、


「・・・・・・・・・・・。」


あたしの明日は退屈な日曜日に早変わりした。




件名:ごっめん!!
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明日急に予定が入っちゃった!!ホントごめん!!
この埋め合わせは来週にでも・・・!
マジでごめん!!






・・・・・男だな。
これ絶対男だよ。あたしが彼氏いないからって濁してるんだよコレ。
一億%そうだよこれ。
なんだこれ。


そう文句をいいつつも了解と短く返信した。


あーあ。
明日は暇つぶしにビデオでも借りに行こう。そーいえば見たかった映画がレンタル始まってた気がする。





布団にもぞもぞと入って携帯のアラームをセットして、
いつもどおりの天井をボーっと見ながらあたしは明日の一人プランを立てた。
とりあえず10時におきていいとも増刊号を見るでしょ?
で、いいともみつつも御飯食べて、12時半ぐらいから軽く化粧してビデオ借りに行って、
あ、そうだついでにCDと洋服も買っちゃおうかな。あーでも本も欲しいかも。
とりあえずその辺の店を把握しといてー・・・・5時ぐらいには帰宅して借りてきたビデオ見て、
晩御飯食べたらインターネットでもしようかな。
うん
なんていうか、


独り者って感じ?


むなしすぎる。
まぁいいけどね!彼氏なんて別に要らないけどね!
毎日楽しいもん。
・・・・。



「・・・・・・・・・・寝よ。」



考えるのをやめてあたしはゆっくりとまぶたを閉じる。
それから三回ぐらい寝返りをうったところまでは覚えてた。









「・・・・・ん・・・・。」




目が覚めて、枕元にあった携帯を確認する。
15:42と表示されているように見えた。
あたしはグッと目を閉じたあともう一度ディスプレイを見る。
15:42とまたそう見える。
いやいやいや、あたしアラームセットしてるから。いいともにあわせてセットしてるから。
目を軽くこすってもう一度確認した。
15:43と表示されている。

・・・・・いや!嘘!?もう三時!!?つか、気づくまでに1分もかかってるし!!!





ガバっと布団から起き上がる。

いけないいけない!!このままじゃダメ人間だよ!彼氏どころか友達すらいない奴の生活みたいじゃん!!!
悲しいよ!!自分で自分を哀れんだらそこでおしまいだ。


でもあとちょっとだけ寝よう・・・
どーせ予定もないんだし。


結局ちゃんと起きたのは4時すぎ。

昨日の計画は無意味だった。まぁ計画通りにいかないのが人生というもの。
気にしない。


まだダルさが抜けない状態でラップのかけられた朝食だと思われる目玉焼きと食パンを食べて、
残り少ない歯磨き粉を全力で搾り出す。(おかげで目が覚めた)
ジーパンにTシャツというなんとも色気のない格好に着替えて(別に地元だし楽だし好きだし)
戸締りをした。

「あら、おでかけ?」と近所の人に声をかけられて「あ、はい」と愛想よく適当に返事をしたあと、
あたしは自転車に股がる。




外はもう日が暮れていて夕日がまぶしかった。
8月の生ぬるい風も自転車に乗るとなかなか気持ちよくて、あたしのペダルを踏む原動力へとなる。
風をきるのは結構好きだ。
髪と髪の間をすり抜けていく感じが好きだ。
自転車は一人になれるから好きだ。
周りが流れていくのに、沢山の人が流れていくのに、
どこか孤独。
でもその孤独を癒すかのように風がかたりかけてくる。
そんな時間が好き。




なんて詩人みたいな事考えて、キャラじゃないっつの。
あっという間にレンタルビデオショップに着いた。

ウィンと音を立ててあたしを招き入れた自動ドア。
中に入ればあの生ぬるさは何処へ?といわんばかりの冷機があたしの肌をつたう。






さてと、新作コーナーは・・・・

あたしは迷わず新作の棚へと足を運ぶ。
かなりのペースできてるから迷うわけもない。
しかもあまり大きくないこの店は人も少ないし結構居心地も良かった。
新作コーナーと大きく色あせた文字で書かれた場所まで行くとそこには見たことがある後姿。


「・・・・浜田?」

「ん、おお、じゃん!!」

少し襟足の長い金髪にどこか幼さの残る笑顔が印象的な奴。
普段はへらへらしてるけど応援団長やってるときは格別にかっこいい。(実は浜田の学ラン姿が目的で野球部の応援に行っている女子もいるらしいし)
浜田はホントは一個上で先輩だけど本人があんまそーゆーのは気にしなくていいって言ってるからあたしはタメ語で話す。
あたし自身も上下関係とか得意じゃないし。親しみやすい良い奴。バカなのが傷だけど。



「浜田、何してんの?」

「はぁ?ビデオ借りに来てんだよ!」

「・・・いや、ここはAVの置き場じゃないって!」

「知ってるし!!つーかそんなのかりねぇーよ!!」

「持ってるからいらないって訳ね☆」

「うるせーなぁ!ウインクすんな!」


いーっと顔をしかめる姿を見ると正直年上には見えない。



こそこんな時間にこんなところきてるなんてどうかと思うぜ〜」

「うっせ!にドタキャンされたからしょうがないの!」

がぁ〜?ホントかぁそれ。」


疑いのまなざしであたしを見た。
なんであたしがこんなことで嘘をつくんだよ!
つか、何!?浜田はあたしが休みの日には誰とも遊ばないで引きこもってるって思ってんのか!?
まぁあながち間違いではないけど・・・
あたしは新作ビデオと棚からとってそれを浜田に突き出す。

「ホントだよ!!彼氏でも出来たんじゃないの?知らないけどー。」

「ふーん。まぁそういうことにしておこう。」

浜田は手に持っていたビデオを棚に戻しながら言った。

「は!?ホントの話だから!浜田にそんな風に言われるなんてあたしも廃れたもんだ・・・。」

「ちょ、それどーゆー意味だよ!」


そう言って遠くを見るあたしに笑いながらあたしの頭に軽くチョップする浜田。
一瞬ビクリと体が強ばる。
いきなりでビックリしたっていうのもあるけど、さわられたって事にビックリしたんだと思う。
普通に男子とかと話したりするけどさわられるってことはない。
めったにない。
だからどこか意識してしまう。





「・・・まんまだよ。つーか浜田さ、このへんだけっけ?家。」

気づかれたくなくて、冷静を装いながら話をそらした。
すると浜田は目を泳がせて頭を少しかく。

「え、あー・・・・うん。まぁ通り道なんだよね・・・学校と家とのさ。」


ぎこちなく言った。
なんだか様子がおかしいのはわかったけど、別に深く追求する必要もないと思った。

「へぇ・・・あそ。そいじゃあたしはコレが目的だったからさ、失礼するよ。」

軽い感じで別れの挨拶をして浜田に背を向けた時。
ビデオを持っていない手を力強く引っ張られてあたしの足は必然的にとまる。

「あ!ちょ、ちょっと待って!!!」

「わ・・・な、何・・・?」

浜田に掴まれてる手首がやたら熱い。


「ホントは・・・家、全然違う・・・場所なんだよね。」

「・・・へぇ・・・・あ、そう。」

なんだ、じゃーなんでこんなマイナーなレンタルショップにきたんだろう。
ツタヤとかならわかるけど・・・・こんな小規模な店に来る意味がわからない。

「前、たまたま通りかかったとき、がここ入ってくの見て、話でよくビデオ借りるって言ってたから!」

「うん。そーいえばそんな話したね。・・・で?なんの関係が・・・」

「・・・だーー!!鈍い奴だな!!気づけよ!!」

「え!?ちょ、何!?あたしが悪いの!?何!?なんなの!!?」

「ここにくればに会えると思ったの!!わりぃか!!」




「・・・・悪くは・・・ない・・。」

「・・・っと、俺、が好きだよ。」

「あ、ありが、とう・・。」

「俺と付き合ってください!!!」

「マジ?」

「マジ。」

「・・・・ドッキリ?」

「いや、ドッキリじゃない。」

「・・・・罰ゲーム?」

「ちげーよ!!」

「え、じゃーなんで・・・」

「好きだから!!」

「・・・・ホントは泉とか隠れてんじゃないのぉ〜?」

あたしは浜田の後ろをじろじろ何かを(泉を)探すように見る。
眉間にシワをよせて、阿部みたいな感じで。
だってそうじゃん。
浜田があたしをすきなんて。
絶対無いって。
浜田はこんなへらへらしてるけどこう見えて運動神経とかいいし
クラスの女子の何人かも浜田の事好きだし。
あたしみたいな下の中、いや下の下みたいな女を好きになるわけないじゃん。
あたしみないななんのとりえもない女が
浜田を好きになってもどうせかなうわけないんだからって目をそらし続けてきたんだよ?

あるわけがない。


だからもうふざけるのはやめてよ。

思ったけど口には出来なかった。
だって口に出そうとした瞬間に

あたしの口は浜田の口にふさがれてしまっていたから。


一瞬の出来事だった。
ちょっとくっついてすぐに離れた。

あたしの唇に残るのはかすかな浜田の匂いと熱。



「・・・バカ!公共の場だよ!いくら人少ないからって・・・!」

「しょうがねーだろ!が信じてくんねーんだもん!!」

「なっ!!」

「・・・ホントに・・・本気で好きだよ。」


すねたような、ふてくされているような、子供みたいな顔していわないでよ。
目が離せないじゃん。



「・・・・浜田。」

「何・・・?」

「これから休みの日は一緒にここでビデオ借りよーね。」

「・・・それって・・・」

「気づけよ、バーカ」

「・・・!うっわ!!超嬉しい!!」

今度はニカって笑ってあたしの手をギュッと握る。



人生で
一番充実した休日。


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初浜ちゃん。偽者疑惑浮上。これ逮捕されちゃうよ。マジで(笑)
でも浜ちゃん好きです。愛だけは確かなので許してやってください・・・・!

ここまで読んでくださって本当にありがとうございました!!!