部屋に漂う甘い香りにクンクンと鼻をならす。


「あぁーーーーーーー!!!!!」



悟天は指を指してあたしを見た。



っち・・・見つかってしまったか・・・。
あたしはしぶしぶ彼に向かって手招きをする。




「あんまりおっきな声ださないでよぉ・・・他の人にも気づかれたらどーすんの・・・。」

「だってだって!ちゃんずるーい!!僕にも僕にも!!」

「わーってるってば!わかったから大きな声ださないでってば!」


まるで子供のようにはしゃぐ彼にシーっと人差し指を立ててみせた。
締め切った使われていない教室。
少しほこりっぽいものの日当たりもよくなかなかお気に入りの場所だった。
今日もあたしはこの場所でひっそりと楽しみを持ち込んで過ごす予定でいた。
無論一人で。
それなのに・・・・
あたしの気とやらを読み取ってここをわりだしたらしい。
普段なら時間つぶしになるからいいのだけれど今日はちょっと複雑な気分。


なぜなら今日はさっきもいったように楽しみを持ち込んできたから。



「わーわーわー!!おいしそう!!」

ぺろりと舌を出して悟天はそれを吟味している。
あたしはため息をついた。



そう、その楽しみというのは



色とりどりの沢山のケーキ。




「なんでちゃん一人でこんなに沢山?」

「ん〜?ちょっとね。今ケーキ屋でバイトしててさ。色々わけありのケーキたちを頂いたの。」

「へー・・・もしかして一人で食べるつもりだった?」

「え・・・・う・・・うん・・・・」

「えーー!ずるい!!」

「しょうがないでしょー!!他の人はお金出して買ってるものをほいほい配れないの!それに・・・」

「それに?」

「全部味見してみたかったんだもん・・・・。」



あたしがどもりながら言うと悟天はにっと笑ってみせる。



ちゃんの食いしん坊!!!」

「あーもーうるさいなぁ!!分けてあげないよ!?」

「ちょ、意地悪いわないでよ!!僕も食べたい!!」

「わーったってば!!ちょ!くっつかないで!!!」

「ホント!?わーい!!!」





悟天の押しにまけてあたしはしぶしぶもう一本ホークを取り出した。

キラキラと目を輝かせてケーキをほおばる姿を見ると一人で食べなくて良かったのかもしれないとさえ思えて来る。
窓の外からは生徒達がわいわいと騒ぐ声が聞こえてくる。
それでもこの教室はとても静かであたしと悟天がもぐもぐとケーキを食べる音だけ。
チラリと彼を見てみると本当にかわいい顔してるな、と改めて実感する。
クリクリの目に漆黒のサラサラの髪。
そんな童顔には似合わない男らしい体。




・・・・・・・・・・・・わぁ・・・・・・・・・・・



一瞬意識してしまったせいか、
なんだか異常にドキドキしてきた。
今までただ友達として一緒に居た彼をこうやって意識するコトはもう何度目かわからない。
それはもうあたしはそろそろ認めなければいけないんじゃないかと思う。

悟天をただの友達としてみていないことを。

まだはっきりとはしないけど、なんとなく好きかもしれない。


・・・・・・・・・・・。



あらためて自分の頭で結論を出すととんでもなく恥かしい。



とりあえず今はケーキに集中しよう!
こんなときに考えてもしょうがない!
そう思いケーキに視線を移す。



移す。


・・・・・・・・・・移したい。



のになぜか。





まだ一口しか食べていなかったベイクドチーズケーキはいつの間にか姿を消していて。




「あーーーーーーーーーーー!!!!!」


「ん?」



「ご〜て〜ん・・・・・!!!あたしのケーキ食べたでしょ!!!なんてことしてくれんじゃボケカス!!!」

「アハハハハ!!だってちゃんボーっとしてたからお腹いっぱにになったのかとおもったんだもん!!」

「そんなこと一言も言ってないじゃん!!!」



あたしは身を乗り出しておもいきり胸ぐらを掴む。
それでも余裕の笑顔で悟天はへらへらと笑っている。
悔しい!!
その余裕が余計に憎たらしい!と思い、
あたしが胸ぐらを掴んだままがくがくとゆすると


不適に笑う。






不覚にもその顔にドキリとする。



その刹那、
ぐっと腰を掴まれて引き寄せられた。






「ご、悟天!?」

「いやーちゃんにおそわれちゃった。」



は?

何言ってんだこいつ


と思いつつも少し冷静になって自分の今の状態を見てみれば、

あたしは悟天に馬乗りになって押し倒しているみたいなそんな形になっていて、
一気に顔が熱くなる。




「ご、ごめん!!!!」


急いで離れようとしても腰を抱き寄せられていて身動きがとれない。
悟天もにっこり笑ったままであたしの羞恥レベルは限界をこえそうになっていた。



「ちょ、放して悟天!!」

ちゃん。」

「何!?」







のんきな声に苛立ちと恥かしさをかくせないまま少し強めの口調で言った時










「クリームついてる。」













すっと近づいてきた悟天の顔


頬をなぞるように触れるざらりとした感触




ゆっくりと離された顔はやっぱり悪戯な笑みを浮かべていて。




あたしは硬直したまま。










「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」





は?こいつ今何した?
え、なめた?
え・・・・・なめた?
スキンシップ?
それとも・・・・・・・・







ちゃん?」



「・・・・・・・・・・・・・・・・・。」


ちゃ〜ん?」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・。」


「・・・・・・キスしちゃうよ?」


「やめれ。」


「なんでそこで我にかえるかな。」





人懐っこい悟天の事だ。
うん。これはすべてアレだ。
誰にでもやるスキンシップ的なアレだよ。
だから別に特別意識するほどのことでもないわけで。
落ち着け落ち着け落ち着け。


あたしはどんどん熱くなる頬を両手で押さえながら俯いた。
悟天の顔は見えないけどきっとこんなあたしをみて笑ってるに違いない。
そう思っていたとき悟天の手がすっとあたしの手に重なる。
顔を無理やり持ち上げられて必然的に視線を合わさせられる。
悟天は思っていた表情とは全然違う、大人っぽいような表情で真剣にあたしを見ていて、視線を外すことができない。



時間だけが流れていく。






「・・・・・・・・・ご、悟天?」

「・・・・反則だよ。」

「へぇ?」

「僕だって男なんだからさぁ・・・・・・」

「ご、て・・・・・・」




















「こんな密室であんなかわいい顔してケーキほおばって、おまけにクリームまでつけちゃって・・・・僕が何もしないと思ってるの?」















クスリと笑う彼に、





あたしは確信した。










これはこの場だからとか

悟天がかわいいからとか


そういうんじゃなくて




この胸が


重ねられた手が



熱くてしょうがないのは





彼が好きだから、ということに。



















「ケーキみたいに食べちゃうよ?」




















密室。
あたしは真っ赤になって
悟天のケーキみたいな、甘い甘い言葉に溶かされて
彼におぼれていった。





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はーい!意味不明!!
いい加減にもほどがあります!つーかケーキ無理やりだろ!!
ケーキ無理やり出すとこんなうんこみたいなのが出来るんだよ!私は甘いのだめなんだよ!
別にケーキは好きだけど!(帰れ)


ここまで読んでくださって本当にありがとうございました!!