うわわーーーーーーーーーーーーーーー





ベッドでごろごろ



緊張がおさまらない


ドキドキする

手が震える


足が震える


心が







震えてる
















「俺、好きだよ。のそういうところ。」









息をすることさえも

今は意識しないとできない気がした。



















「うわぁーーすっかり日落ちちゃったね・・・・」

「ん、うわーーーホントだ!!もう夜じゃねーか!!!」




どうりで教室暗いと思った!!!



高瀬君が目をまんまるにして窓の外を見ていた。


あたしは外を見るふりをして、高瀬君を盗み見る。





真っ黒でさらさらな髪

少したれた目と、きりっと持ち上がった眉

薄い唇


整った顔に鍛えられた体


それでもやっぱり細いな。























・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・変態か、あたしは。


















「そっち終わりそう?」

「えぇええ!?あ、ああ、うん。もうちょっと。」




あたしは慌てて、プリントをわけながら名簿にチェックを入れていく。
高瀬君は仕事が終わったのかぼーっと外を見たままだった。


委員会が同じなあたしと高瀬君は、本当にただそれだけの関係。
すれ違っても挨拶を交わすこともない。
あ、でも目があったりとかすれば会釈ぐらいはしたりする。
決して親しい関係とは言えなくて、友達でもない。




「こんな時間まで、ごめんね。」

「ダイジョブ、今日は練習ないから。」








それでもあたしは







高瀬君が好きだったりする。







本当に些細なことがきっかけだった。







日直で黒板を綺麗にしていた時。


上の方まで手が届かなくて
いや、まぁ黒板をおろせばよかったんだけど横着してそのままジャンプしたりして消してたわけだ。
あたしは人ぞ知る、適当の極みなわけです。
めんどくさいことは中途半端でもいいや!気にしないぜ!!
なんて思って、弧を描きながら黒板を消していた。









「・・・・・・・・・・・・・ぷぷ・・・・・・・・・・」





少し騒がしい教室から聞こえた、なんとなく違和感のある笑い声。


あれ・・・・もしかしてあたし?
あたし笑われてるのか?いや、自意識過剰だろ。あたしじゃない・・・・・・


と思いつつもそろ〜りと後ろに振り返ってみれば口元を押さえて少し涙ぐんでいる高瀬君がいて。









「え、やっぱあたし・・・・・・?」






彼はこくりと頷いた。







「あんなめっちゃジャンプしてんのに・・・全然届いてねーんだもん・・・ごめんごめん、おかしくって・・・」


「いや、いいけど。存分に笑ってくれて構わないけど。」



そんな面白いか・・・・・?
つかもっと本気出せば高瀬君を笑い殺せるぐらい面白い動きできるのに・・・
とか地味に思いつつもあたしはまたくるりと前を向く。




これが初めてに等しい会話。
今思うと初めて話す人に対して笑うって失礼なんじゃないの?とかよぎるけど気にしない。
とにかくあたしはその時野球部のモテ男君とおしゃべりできてラッキーくらいにしか思ってなかったし
そんなに興味もなかった。
というかあたしは次の時間までにこのめんどくさい黒板を綺麗にする作業を終えなければいけないんだ。
かまってる暇はない。




もう一度飛び上がろうとした時、ふと気付いた









あたしの黒板消しをにぎる右手に
大きな手が重なっている













「え、」




「笑わせてもらったお礼。上は俺が消すよ。」











その時の高瀬君の愛らしい笑顔に、あたしはすっかり心を持っていかれてしまった。
あの瞬間からなんだか高瀬君が気になって、
たまぁ〜〜〜に眼があってにっこりされたりとか、
会釈されたりとか、
友達との会話に織り交ぜたギャグに反応してくれて笑ってくれてたりとか
消しゴム拾ってもらったりとか、
授業中に爆睡してる寝顔を見たりとか。






気がついたら高瀬君中心の生活になっていて。








好きになっていた。












だから、おんなじ美化委員会に偶然なれた時、もうほんと死ぬかと思った。
っていうか死んでたあのときは。
に毎日「気持ち悪い。死んで。日本から消えて」と言われ続けた。
若干本気で。それでも心折れることなく、にやにやしてて。


まぁ高瀬君がこの委員会を選んだなんて楽そうだからとかそんな理由なんだろうけど。
つかあたしもそんな理由だったんだけど。
(だって適当にやってもバレないし、あんま仕事ないし)
















そして今教室に二人っきりとかいうおいしすぎるシチュエーションにもう頭がどうにかなりそうだったりする。

委員会どころじゃないっつーの。
何この素敵な雰囲気。

カリカリと右手のシャープペンは動かしながらも、また自然と高瀬君を見る。



あ、



気がついたとき、顔から力が抜けたのが自分でもよくわかった。






外をぼけーっと眺める高瀬君の口がちょっとおちょぼ口になってる。



かわいい・・・・・





ちょっとふざけて真似してみると、


何かに気がついたように高瀬君がこっちを見た。






ビクンとあたしの体が強張ったのと同時に









ブッと高瀬君が噴き出した。









「ちょ、あのさ、霧の如く高瀬君の唾がさ、あたしの顔面に噴射されたんだけど。」

「うおおおあははっはははああっははは!!悪い!!!ひおぃぃぃいい!!!」

「いや、謝るか、笑うかどっちかにしてくれ。」

「アハハハハハハハハハハハハハッハハハハハハ!!!!!!!」




笑うんかい。


かわいいからいいけど。
眉間にしわを寄せながらあたしはポケットに手をつっこむ。
ハンカチハンカチ、
リップやら、ピンやら、くしやら、ものがたくさん詰め込まれたポケットの中からなかなかハンカチを見つけられない。
あれ、ジャケットじゃなかったっけ?セーターの方だったかな・・・








「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・!!!」






セーターのポケットに手をつっこんで、ハンカチを見つけたとたんに頬に当たるごわごわな感触。



それが、高瀬君のセーターの袖だと気がつくのに、さほど時間はかからなかった。



「悪い悪い・・・・ほんっとっておもしれぇーよなぁ・・・・」



高瀬君が前のめりになって、セーターの袖であたしの頬をごしごしとふいて・・・・・・・・・・・・・




え、ちょ・・・・・・・・・





今まで見たことのない至近距離で高瀬君を見ていて
たまに頬に触れる指が


あたしから冷静さといつもどおりを奪っていく。







「はい!これで大丈夫大丈夫!」

「だ、大丈夫じゃないよ!!!!!!」

「悪かったって!マジでホントごめんな?」


いや、そういう意味じゃないけど!!
でもかわいいので許す!!


あああ、もうあたしもうだめだ!!!
急にこんな接近とかおしゃべりとかもうダメっす!
名残惜しいけど、これ以上崩壊する前にさっさと仕事を終わらせて帰ろう。




「あああ、、もう!!!」



しっかりしろあたし!!
今度こそ、真面目に名簿に視線を落として急いで仕事にかかる。
これ以上高瀬君といたらホントにおかしくなりそうで、あたしはそのあと黙々と作業に取り掛かった。
ものの5分もしないうちに作業は終わって(いや、まぁもうほぼ終わってたんだけど)
先生にプリントを渡して、真っ暗な昇降口にやっとこすっとこたどりつく。

もう狼狽です。
幸せすぎて狼狽です。
朝よりもカバンが重い気がする。
ああ、幸せがつまってるんだ。これ。
高瀬君と別れたら、すぐににメールしよう。きっと罵られる。
でもそれでも幸せすぎて困る。





?」

「えぇ!?な、なに?」

「だいじょぶか?ぼーっとしてたけど。」

「あ、ああ。いつものこと。気にしないで。」

「ふーん・・・・」






鞄を肩にかけなおした高瀬君の顔は暗くてよく見えなかった。





「あの、さ」



暗がりから聞こえてきたどもったような声に彼を見ないで「何?」と返事をする。







「お前家どっち?」

「え、あー駅側。」



うん。だからここでお別れ。
だって高瀬君は反対方向だもんね。
ごめんね、実はちゃっかり知ってます。
ストーカーじゃないよ!!






「えー、あ、マジ?俺も・・・・つか、送ってく。」















「・・・・・・・・・・・・は?」








お、俺も・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・?









「いや、だからもう遅いし、ついでに送ってくって!」


バッと少し後ろから出てきた高瀬君。
月明かりに照らされた顔は
少しだけ赤くなっていた。



つられてあたしも顔が熱くなる。
ついでとか・・・・もう何なのこの子ぉぉおぉおおおーーー!!!!
優しすぎる!!!





「あ、あ、ありがとぉ・・・ご、ございます・・・・・・・・」

「いえいえ・・・・」









うあ・・・・・・・・・・やばい・・・・・・・・・・・・・・・・・






好きだぁ







そのあとあたしはこれでもかってくらいに色んな話をした。
高瀬君が退屈しないように、つまらないって顔をしないように、
たくさん笑ってくれますように。


そしたら高瀬君はひーひー言いながら、あたしの家に着くころにはげっそりしていたぐらいに笑ってくれて。



あたしも笑った。





「ほ、ほんとに家まであっという間についちゃった!っていうかほんとこんな家先まで・・・ありがと・・・」

「いやいや、こちらこそありがとな。スゲー楽しかった・・・・はぁ・・・腹いてぇ・・・」

「大げさだよ。」

「いや、マジマジ。こんな笑ったのはじめてかも・・・・」







「ありがとな。」

「へ?」


急に高瀬君から投げかけられたお礼の言葉に間の抜けた声がでる。




「俺がつまんなくないよーにって、気にしてくれたんでしょ?」

「・・・・そ!そんなことない!!マジで!!全然!あたしおしゃべりなんだよ!ごめんね!うざかったっしょ!!」




しまった。
あから様すぎてかえって気を使わせてしまった。
慌ててあーだ、こーだと言っても高瀬君は何も言わずに、眉毛をハの字にしたまま優しく笑ったまま。
次第にあたしも何も言えなくなって、自然と閑静な住宅街に飲み込まれていく。





あたしも黙ったままで、
高瀬君も黙ったまま。




しばらくして「・・・・・あーもぉーー・・・」と高瀬君が右手で顔を覆った。








「あのさ、」


「え、うん?」
























「俺、好きだよ。のそういうところ。」




「え、」








「ずっと前から、もっと早く仲良くなりたいって、思ってたりした。」















「だから、アドレス、交換しない?」
























あたしは今も携帯をにぎりしめたまま。





今日はもう「おやすみ、また明日」というメールを交わしたから、
もう連絡は来ないのに。











どうしよう












「全然寝付けない。」


















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なげぇ。無駄になげえ
意味分かんないし、うざいしくさいし。
っていうかじゅんたって誰だっけ?これだれ。つかこれ何これ。


ここまで読んでくださって本当にありがとうございました!!