「なーー」
「何。」
「なんで十二支って12なんだろう。」
急にわけのわからないことを言い出す彼に驚いた。
いや、まぁいつものことなんだけどさ。
あたしは繋いでいないほうの手を口元に当てる。
外はまだ寒くてスカートから出た膝が痛いぐらいだった。
「え、ごめん。どーゆー意味?」
「だってさーなんで12匹である必要があるのか知りたくね?」
ぴちゃぴちゃと水溜りを蹴るようにしながら悠一郎がいう。
昨日激しく地を打った雨の残りは悠一郎の少し汚れた靴をぬらす。
え、別に・・・特別知りたくない・・・・・
という本音はぐっと飲み込んであたしもうーんとうなって考えた。
「えー・・・うーん・・・考えたこともなかったなぁ・・・・。なんか昔の占いみたいなそーゆーのが関係してんじゃない?知らないけど。」
「ふーん・・・・俺はさー思うんだ。」
「何?」
少しだけ首を傾けて悠一郎を見ると、彼はニッといつもどおりの明るい笑顔を見せる。
「12匹が調度いいからじゃないかと思った!!」
笑顔が眩しくてちょっとだけひるんだけど、あたしはすぐに聞き返した。
「・・・ちょうどいいって?」
「んー・・・だからぁー、一人だと寂しいじゃん?でもあんまり沢山いてもみんな仲良くできねーかもしれねーじゃん!!だから!!」
「・・・だから12が調度いいってこと・・・?」
うん!!と元気いっぱいにうなずく彼に内心感心している。
部活でも普段の生活でも悠一郎は常人では考えられないことをするけど・・・
こんなことまでもそんな風にとれるなんてなんてロマンチストなんだろうか。
あたしなんてホント生まれてきて何故十二支が12匹でなければいけないだとか、
もはやそこから考えたこともなかったのに。
あたしは軽く悠一郎の手を握りかえした。
「・・・なるほどねぇ・・ちょうどいいかもねぇー」
「だろー?俺ともそーだよな!俺ともちょうどいい!!」
「・・・・えぇ?」
また予想もしていなかった彼の切り替えし。
今日はいつも以上に驚かされてばかりだなぁ・・・
面白いし悠一郎の考え方が知れるのは嬉しいからいいんだけど。
勝手にそんな事を思った。
ガードレールの内側のところにはまだ雨のしずくが残っていてキラキラと輝いている。
一度は外した視線をもう一度ゆっくり悠一郎に戻すと彼はまたにーっと笑って見せた。
その表情はかっこよくて、かわいくていまだになれることは出来ない。
「だってキスするのも二人じゃないとできないし、手繋ぐのも沢山人いたらつなげない人いるし、セックスだって二人の方が絶対いい!!が他の男とセックスすんのなんてやだし俺も以外とはしたくねーし!」
「ちょ・・・ゆう!!?」
指を折りながらそれを数えるようにして彼はいつもどおりの大きな声で話し出した。
すれ違う人たちがクスクスと笑っているように見えてさすがにあたしもあせる。
羞恥が体中を駆け巡った。
あああ・・・お願いもうちょっと・・・小さい声ではなしてよぉおおお・・・・・
もうこの男の口をふさいでしまおうか。
永遠に・・・・!
青酸カリ的なアレで・・・・!
あたしが一人血迷っていると悠一郎は何食わぬ顔であたしをみる。
どうしたの?みたいな、そんな顔。
きっと周りのことなんて気づいてないし、
あたしが恥かしいって事にも気づいてない。
そんなのんきなおき楽彼氏の手をぐいぐいひっぱって歩く。
「ああ!!わかった!」
このままだとあたしは恥かし死にする!と思って早歩きで歩いている途中。
悠一郎は何かひらめいたようにきりだした。
「今度は何・・・・・」
呆れながらも彼を見る。
「と二人がちょうどいいんじゃなくて・・・と二人じゃなきゃちょうどよくねーんだよ!!!」
正直驚いた。
あたしはきっと目を見開いてると思う。
だって、
その言葉は
幸せも喜びもあたしと半分こしてくれるってことで
苦しみも辛いこともあたしと半分こしてくれるってことで
その半分こするあいては
絶対にあたしじゃなきゃいけないってことで
「・・・・・いや、ななんていうか・・・あんまりそーゆーこと言わないで・・・・・・・・」
「なんで?」
「嬉しくて恥かしくて・・・・・あたしばっかり幸せになっちゃうから。」
「大丈夫!が幸せなら俺も厳密に幸せだから!!!」
「・・・あ、ありがと・・・。」
「おう!」
「でもセックスとかそーゆー言葉は外ではあんまり大きな声で言わないでね。」
「なんで?」
「・・・それは考えればわかることだろ。」
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いや・・・十二支関係なくね?
ここまで読んでくださって本当にありがとうございました!!