「れーんーーー!!」
「ま、まって!い、今行く!!!」
慌しく廉がグラウンドから走ってきた。
今日は自転車じゃない。
だってクリスマスだから。
あたしと廉は付き合って始めてのクリスマス。
だから二人とも行きつけのレストランで食事をして、そのあとあたしの家にお泊り。
まぁレストランといっても普通のファミレスなんだけど、二人でゆっくり食事をして、しかもそのあとも一緒にいられる日なんてめったに無い。
特別な日。
「ぅうーーーーさむーーーーー」
「う、うん。さ、さむいね!」
二人で身を縮めながら並んで歩く。
少し距離のある二人のを冷たい風が抜けるように吹いた。
耳が痛かった。
「・・・あれ、廉・・・・」
「な、何!?」
「今日マフラーしてこなかったの?」
そう、いつもらなれんの首にぐるぐるまきついているマフラーが今日は見当たらなかった。
あたしの問いにこくこくと首を大きく振って頷く。
「ふぇ!?あ!きょ、教室・・・・・・・・」
「ぇえー!!どうする?取りに行く?」
「ううん!だ、大丈夫、だよ!!そ、そいうえば・・・ちゃんも、きょ、今日はマフラー、し、てないね・・・」
「あ、うん・・・。今日は私服できたからさー・・・マフラーの色あんまり洋服に合わないと思ったから置いてきた!!」
「そ、そうなんだ!さ、寒くない?」
「ん、大丈夫だよーちょっと寒いけどね。廉は?」
「お、俺も大丈夫だけど・・・・・・」
「・・・・だけど・・・・・」
言葉の途中で足まで止まった廉の顔を覗き込んだ。
「ご、ごめんなさい!!!・・・や、やっぱり、と、りに行ってもいいです、か?」
びっくりした。
急に大きな声だすから。
少し驚きながらも軽く頷く。
「いいけど・・・急にどうしたの?なんか珍しいじゃん。」
「だ、だって・・・・ちゃ、ん・・・寒そう・・・だから・・・・・・。」
俯きながら眉をいつも以上にハの字にして廉が言った。
「・・・・・・・・・・・・・・・っ!」
廉のおどおどきょろきょろと不自然に動く目。
きゅんと胸が締め付けられた。
あたしはしばらく考えたあとしょうがなく繋いでいた手をほどいてため息をつく。
「・・・ちゃ、!?」
「あ、ごめんごめん。ちょっとまって。」
廉は急に手を離してごそごそと鞄をあさるあたしを不思議そうに見つめていた。
「っと!!はい!」
「へぇ!?」
「ホントは店着いてから渡そうと思ったんだけどねー」
「ま、マフラー?」
「うん。そう。頑張った。」
「つ、つくってくれたのぉ!?」
「ま、まぁ一応・・・・」
「あ、ありが、とお!俺、う、嬉しい!!」
にっこりと廉が笑う。
それだけで頑張ってよかったなと思えて苦労や疲労が一気に吹っ飛んだ。
「うん、良かった。それじゃ学校もどろっか。」
「え、えぇ!?な、なんで?ちゃんが、ま、巻くんじゃないの?」
「ばか!あたしが廉にあげたマフラー巻いてどーすんの!!あたしだけマフラーしてたら不公平だと思ったから先に廉にマフラー渡したの!!」
「へぇ?」
廉のきょとん顔にため息をつくしかなかった。
「だからー・・・・今から学校もどって・・・・あたしが廉のマフラーするの!!!」
「あ、ああ!そ、そっか!」
こんなん言うの恥ずかしいんだからぁ・・・さっしてよ・・・・・
と思ったけど廉には到底無理だとわかっているのであえて口にはしない。
廉の手をまたとってくるりと歩く向きを変えようとするとまた「ま、まって!」と大きな声。
「何ー?」
いつになったら学校戻るのあたし達!と呆れ半分に廉を見る。
繋がれていた手はいつの間にか離れていて、その代わりに首には暖かい感触。
「廉!?」
「っと、こうし、て・・・・」
あたしの呼びかけなんてシカトで首にクルクルとマフラーを巻く廉。
その首っていうのはもちろんあたしの首。
まさか、さっきあんだけ説明させて意味わかってなかったとか!?
ちょ・・・そんなに理解力なかったのかこいつは!!
いや、ありえる・・・!なんて思っていた矢先。
今度は廉自身の首にマフラーを巻きだした。
長めに編んだマフラーはあたしと廉を簡単に繋げてしまう。
あたしはそれを止めるコトも出来なかった。
というかいつの間にって間に・・・・・・・・・・!!!
「ちょ・・・廉・・・・?」
「こ、これなら二人とも、さ、寒くないよ!!!」
そういってあたしの手を取りにっこり笑う廉。
そんな廉に、
恥ずかしいからやめて
だなんて言えるわけがない。
あたしは赤くなった頬を隠すようにマフラーを軽く口元まで上げて、
黙って廉の手を握り返した。
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三橋編。
なんだろう・・・・レンレンならこんなバカップルも許せちゃう!みたいなノリで(笑)
ここまでよんでくださって本当にありがとうございました!!