12月24日。


あたしはため息をつかずにはいられなかった。



「・・・はぁ・・・・」

「どーしたの、。ため息なんてついちゃってさ〜。」


鏡を見ながら髪をととのえつつもあたしを見ないでがいった。
その言葉にあたしはキッとにらみを利かせる。


「うるさい!!彼氏の居るお前にはわかんないっつーの!!死ね!!!」

「あー・・・もーわかったよ。はいはい。」

「なっ!!きームカつく!!なんていうか余裕のある女って感じがまたムカつく!!」

「そんなムカつくならも彼氏作れば良いじゃん。」


さっとリップをつけた後、鏡を折りたたみながらがそっけなく言う。



「・・・・そんなんできたら苦労しねぇー!!涙ながして泣き喚くぞコラァ。ここで大暴れするぞコラ。」

「やめろコラ。」




教室を見渡せばカップルばかり。
みんなクリスマスを寂しくすごすのはごめんらしく恋人を作っていちゃこらしていた。
息苦しい。
ドチクショウ。
このクラス全員をタンクローリー的なものでゴロゴロとひき殺してやりたい。
そんな感情にかられながらもあたしはもくもくと箸を口に運ぶ。





別にいいもん。
あたし別にキリシタンじゃないし?
彼氏なんていなくったって毎日楽しいし?
つーか別に24日とかただの平日じゃん?
家族もいるし。
しかも日々マネージャー業に勤しんでますからぁああーーー!!!

正直な話。野球部のマネージャーはしんどい。
練習量も他の部活より気合はいってて多いし、時間もギリギリまでやって朝も早いし。
夏は日焼けするし冬は指痛いし。
でも楽しい、そう思えた。
昔から夢だった甲子園にいけるかもしれない。
そんな希望があたしを頑張らせてくれる。
それに千代ちゃんもいるし!!



だからクリスマス?
はっ別にどうでもいいし!!!



「・・・別に寂しくないもん。」

口に出してる。」

「えっ!?」


に言われてはっとする。
知らぬ間にあたしはなんてことを口にだして・・・・



「あんたそのクセ気をつけないと・・・恥ずかしい思いするよー?」
そういいながら予鈴とともには自分の席へと戻っていった。




授業が始まってからもあたしの憂鬱は納まることは無かった。

ドチクショウ、今日なんてさっさと終わればいい。

そう思った。


まぁ・・・あたしにとってはただの平日にすぎないのだけれど。
(最後まで強がり)














「集合!!!」

監督の声がグラウンドに響いた。
外はもうすっかり暗く、風も昼間とは違い冷たい。
さすがの千代ちゃんも手をすり合わせていた。
あたしも身を縮める。






ああ、あたし、よくやった。
長い今日を乗り越えたんだ。
嬉しさ半分と空しさ半分といったところだろうか

まぁなんにせよ憎っきクリスマスを部活とうい青春の汗と涙で過ごしてやった。
なんかもうやってやった!!!

そんなやりきった気持ちでいたあたしだった。










!!!」




後ろから声をかけられる。
それは早々と着替えを終えて部室から出てきた阿部だった。





「おう、お疲れ阿部。どしたの?」


「おう、お疲れ。いや、お前今日どーせ空いてんだろ?」












「あぁ?殺すぞたれ目。」

「は?何怒ってんだよ?」




この男は、本当につくづく失礼な奴だ。
気を利かせたり考えたりできるのは野球のことだけなのか!?
グッと握り締めた拳を落ち着かせながらもニコリと笑ってみせる。


「空いてるけど?」







「一緒に帰らねぇ?」

「えっ」





意外な発言に耳を疑うあたし。



阿部はいつも以上に眉間にシワを寄せる。





「何きょとんとしてんだよ。」

「いや、別に・・・・。いいけどなんで?」

「あ?あーあとでいう。」

「えぇー何々!気になる気になる!!ムカつく!!」

「後で言うって。」

「後じゃやだ!今言えよ!でなきゃしばく!!」

「はぁー?後で言うっつってんだろ!!?」

「いーやーだー!!ただでさえむしゃくしゃしてる今日なのに!!今すぐ言え!!!」

「あーもーうるせぇーなぁー!!」

「ばーくーっろ!はい!ばーくーっろ!はい!!」

「合いの手入れながら手拍子すんな!」

「阿部が言わないからでしょ!?もーじれったいなー!!何々ーー?」

「・・・・・・・・・・・・・ーーーっ!!」



下唇を噛みながら阿部は右手で顔を覆った。




いつもと様子が違う。

気がする・・・・・


普段はもっと自己中心的で自信家なかんじなのに・・・・。


なんなんだろう。






「あ、阿部・・・?」


しつこく聞きすぎたのかな?
なんか深刻な悩みの相談だったのかもしれない。



あたしは恐る恐る阿部のそばに近寄る。
すると阿部は俯いてしまった。
前髪と右手の指の隙間から覗く顔が少し赤いように見えて、あたしははっと気がついた。





ま、まさか・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・









「な、泣いてるの!!!?」

「泣くかアホォ!!!!」

「いだーーーーい!!!!」


思い切りグーで頭を叩かれたあたしはなみだ目で阿部をにらんだ。



「だって顔赤かったからてっきり・・・・」

「あーもーホント鈍い奴だな!!イラつく!!」

「はぁーー?何?あたしが悪いわけ!?大体ホントなんなのさー!!」












「っ!!クリスマスぐらい、好きな奴とすごしてぇーんだよ!!!」










阿部のイライラした大きな声があたしを通り抜けるようにグラウンドに響いた。
















「はぁ?」

「だから、俺は、が好きっつーことだよ!つーかここまでいわせんな!察しろ!!」

「だっ、え、ちょ・・・・マジ・・・・?」

「んな嘘つくか!」

「え・・・・だ・・・・・ぇえーーーー!!!」

「わかったならさっさと帰るしたくしろ。」




スポーツバックを肩にかけなおして阿部が自転車の鍵をくるくる回しながらあたしに背を向け歩き出す。




「えぇ!?断る権利なし!?」


今まで棒立ちしていたあたしもさすがにふっと我に返ったように怒鳴り声で振り返れば、

そこにはニッと不適な笑みを見せてたつ阿部がいた。





「どーせ断る気なんてねーんだろ?」







「・・・・・・・・・・!!」







いつもより



10倍ぐらいかっこよく見えたのは



その瞬間からあたしが阿部に恋をしたからだろう。











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阿部君編。
なんかうざってぇ(笑)意味もわからないし。


ここまで読んでくださって本当にありがとうございました!!