寒い。



外はすっかり暗くなり、太陽の代わりに街のイルミネーションがチカチカと点灯する。
皮肉にも、色とりどりの電球が昼間とは全く違うこの場所を演出して恋人達をもりあげているように見えた。


あたしの指先はすっかり冷え切って感覚もない。

足先ももはや冷たさよりも痛みを感じるほどで。






だけど不思議と苦ではなかった。






多分それは







あたしが悠一郎を求めているから。







「ごめーーーーーん!」


ばたばたと慌ただしい足音と元気のいい声。



「悠一郎!」


彼はあたしの前で足を止めると息をきらせたまま膝に手をついて前かがみになった。
その額にはうっすら汗さえ滲んでいる。


「走って来てくれたの?」


「当たり前じゃん!!待たせちゃ悪いと思って!!」

「でもまだ待ち合わせ時間の3分前じゃん。」

「だっていつも待ち合わせ時間より早くいるじゃん!!!」


悠一郎はばっと顔だけ上げてニッと笑う。



「でもやっぱり待たせちゃったかー!ごめん!」





「悠一郎・・・・・。」





悠一郎の優しさに胸が暖かくなった。

あたしも釣られて笑う。




「全然!!さっ早く行こう?」







「おう!!!」








そういって悠一郎は軽く呼吸を整えた後、自然とあたしの手を掴んだ。


あたしも言わずもがなと指を絡める。





ここまではいつもどおり。


でも、今日はちょっとおかしい。




悠一郎が




「・・・・ゆう?」




「・・・・・・・・・・・・・・・・。」





動かない。







目を見開いたまま一歩も歩こうとしない。







走ってきて足くじいたとか!?

それとも息できないとか!?


え、なになになに!!?


いつも元気な悠一郎なだけに不安がよぎる。






「ちょ、悠一郎!?どしたの?どっか痛いの!?具合悪いの!?どーしっとわぁ!!!」











街の真ん中。


ちかちか七色に光るイルミネーションが歩く街の人の足を止める。
でも多分今街の人々が足を止めている理由としたら


多分あたしたち。



「ちょ!悠一郎!!は、恥ずかしいよ!はなして・・・!」





こんな公の場であたしは思いっきり悠一郎に抱きしめられていたのだから。







「ちょっと、ゆう!どーしたの!?ねぇ、ちょ・・・・」

「ごめん!!!ホントにごめん!!!げんみつにごめん!!!」

「何が!?意味わかんない!」



ま、まさかこんな街中でしたくなったとか?
いや、でも最近はそとで抱きつかないでとか変なこと大きな声で口にしないでとか言ってあったし守ってくれてたし・・・・・・・
そんなに誠意を込めて謝られるようなことはないんだけど・・・・・・
(というかこの今の状態に対してあやまってるのかな)


とりあえずこの状態をなんとかしないとにっちもさっちもいかない・・・・!



そう思ったあたしは混乱した頭をなんとか切り替えてぐっと腕をつっぱっる。
そしてそのまま悠一郎の俯いた顔を覗き込むようにして「どしたの?」と小さく聞いた。





「・・・・・・・・・・・・・。」



悠一郎は俯いたままゆっくりとあたしの両手を包み込むようにして握る。




「ゆう?」


「手・・・・・。」


「うん、手がどーしたの?」



の手、すっげーーーーー冷たい。」



「え、」



何?そんなこと?


ちょっと面食らったというかなんというか・・・・・。

そーいえば最近は寒かったので悠一郎を待ってる間は手袋してたっけ。
でも悠一郎が手をつなぎたがるから悠一郎の姿がみえるといつもさりげなく外していた。

今日はたまたま忘れてきてしていなかったんだけど・・・・・。



「え、ご、ごめん・・・・そんなに冷たかった?びっくりしちゃった?ごめんね?」

「違う!!!」

「何が?」

「謝るのは俺のほう。」

「・・・・な、なんで?」






「こんなに冷たくなるまで待ってたんだろ?ずっと、待たせてたんだろ?・・・・ホントにごめん!!!!」





いつにない真剣な目で、悠一郎はあたしに謝った。








「あーーーもぉーーーー・・・・・・!!」

「ぇえ!?」




あたしの声にビックリして下げた頭を上げようとした悠一郎。
でもあたしはその頭を押さえつけてぐいっと下に戻す。


「えぇ?な、何!?ご。」

「うるさい。顔まだ上げないで!!!」

「へぇ!?」

「絶対あげちゃダメ!厳密に。」

「わ、わかった・・・・」







こんなにやにやした顔悠一郎には見られたくない。
というかやばい。
ホントにこの子って奴は・・・・・・


やっぱり天才。






涙が出るほど嬉しくて、

目頭がキーンとなった。



でも今ここで泣いちゃったらきっと悠一郎はもっと心配するだろうから。


あたしは空いている方の手で目元を軽くこすった後、ゆっくりと後頭部から手を離す。







悠一郎も少し戸惑いながら、ゆっくりと頭を上げた。











「・・・・・・・・・?」

「そんなに謝るなら・・・・・・・」

「うん。」

「悠一郎があっためてよ。」







こんな恥ずかしいこといえるのは


多分クリスマスのおかげだろう。





悠一郎はあたしの発言に一瞬驚いた顔を見せた後いつもどおりにっこり笑う。








「厳密に了解した!!!」








硬くて背丈の割りに大きな手のひらがあたしの手をつつんだ。


















「後で体もあっためる!!」

「うるさい!!」


















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田島編。終わり方が微妙なのは私の夢小説の特徴ですから!!てへ☆(死ね)


ここまで読んでくださって本当にありがとうございました!!!