せっかくのクリスマスイブ。
別に約束はしていなかったけど、
文貴の事だから・・・・なんて勝手に思っていた。
だから朝携帯を見てあたしは目を見開いた。
「嘘・・・・マジ?」
あたしの眠気が一気にすっ飛んだのは朝の顔をかすめた空気の冷たさだけでも
携帯のアラームの爆音でもないと思う。
携帯のディスプレイには新着メールの文字。
相手は彼氏の文貴で、件名は
『ごめん』
寝ぼけていた頭が一気に冷えて、あたしは急いでメールを開いた。
そこには長々といいわけみたいなものが書いてあって、
今日、一緒に過ごせそうにない
と最後の方に書かれていた。
正直その理由とかは一気に吹っ飛ぶぐらいの破壊力。
え、ちょ・・・・・うそーーーん!!!
なんか勝手に友達との誘いも断って、てっきり二人で過ごせるなんて甘い期待を抱いていたあたしはなんなんだ!?
まぁ別に特別約束なんてしてなかったけどさ!?
文貴の事だからてっきり切り出してくれると思ってた。
あたしは自分からそういうの言い出せるたちじゃないし・・・・・・
っていうか嘘?マジで?まだ夢見てるとかそういうオチないの!?
何度も目をこすってみてもディスプレイの文字は変わってない。
うわーーーーーー!!!!!!!!
恥ずかしい!!何あたし一人で浮かれてんだ!!!ちょ・・・ぇええーーーーーーーー!!!
まだ冷静になれそうにないあたしの頭。
だって、だってだってだって!!!なんか勝手に思って・・・・・
「プレゼントも買っちゃったんですけど・・・・・・・・」
引きつる顔で視線を机に向けるとそこには綺麗にラッピングされた四角い箱。
中身はまえにデートで「これいいな!」とポツリと言っていたワッペンがついたネルシャツとその店でたまたま見つけたベルト。バックルが四角くてちょっと大きめでかっこいいなって、似合うだろうなってずっと思ってたやつ。
少しお高いお値段で手は出しづらかったけど、あいつの驚いて嬉しそうな顔を想像したら自然とそれに手が伸びていた。
・・・・・いや、これ・・・・どーすんですか。
今日を一人で過ごすのは別にいい。
一人はわりと好きだし文貴の束縛しすぎないところが好きだし、
自分の時間が好きだから。
ただ恥ずかしくてしょうがなかった。
クリスマスなんて言葉に浮かれすぎていた・・・・・。
あたしとしたことが・・・・何もしない日が出来てしまうなんて・・・・・
時計を見てみれば10時28分。
あたしは後半日とちょっと、何をして過ごせばいいんだろうか。
寝る?
いや、もう目覚めちゃったし。
出かける?
こんな日に一人で出かけたら空しいだけだろ。用もないし。
っつーことは・・・・・・
家で大人しくしてるしかないってことか。
まぁ、いいやそれはそれで悪くないかも。
お片づけでもしましょうか。
毎年毎年年末ギリギリになってやるよりももうはじめちゃった方がいいだろうし。
決定。
あたしは軽く朝食をとって食休みをしたあと、かたづけをはじめた。
はじめは机から。
いらない学校のプリントを丁寧に一枚一枚確認しながらゴミ袋へと入れていく。
数学のプリント、英語の単語テスト、生物の研究プリント、色々あった。
ふとあるプリントの裏に目をやるとそこには2種類の文字でびっしり埋まっているものもあった。
「・・・・なつかし・・・」
それは文貴の字とあたしの字。
あたし達が付き合う前の話。
初めて隣の席になったときに数学の時間が暇すぎて暇すぎて、ぼーっと窓の外を見ていたあたしのヒジをちょんちょんと文貴がつついた。
なにかと思ってみてみればあたしのヒジのしたにはプリントが一枚。
裏には「どーこみてんの?」と書かれていた。はじめは何だこいつ。めんどくせ。なんて思ったっけ。
でもこうやって授業中のプリントメールから仲良くなって、毎日毎日学校に行くのが楽しくなって、
文貴をどんどん好きになっていった。
これは・・・捨てられないな・・・・。
裏がびっしりなプリント達は綺麗にまとめてクリアファイルに整頓した。
いけないいけない。これじゃ片付けはかどらないじゃん。
気を取り直して今度は机の中の整理をすることにした。
使うだろうと思ってとってあって、でもいまだに使うきっかけの無いリボン、包装紙が沢山あって、でもやっぱり捨てられなかった。(かだづけになって無いじゃん!!)
ん・・・・?机の引きだしのおくに小さな箱を見つけた。
なんだろうと思いひっぱりだしてみれば、それもまた、文貴との思い出。
初めてもらった誕生日プレゼントが入ってた箱。
それもまだ付き合う前だった。というか付き合うきっかけになったプレゼント。
シンプルだけどかわいい花のネックレス。キラキラしたシルバーの宝石が小さい花にちりばめられていてかわいかった。
今だって毎日つけてる。びっくりして「もらってもいいの?」なんて聞いたら「付き合ってくれるんなら受け取ってほしいな」なんて笑顔で言ってたっけ。
・・・・・・・・・・・・・・だ か ら!!!!
いちいち思い出振り返ってたらかだづけ終わらないじゃんかよ!!!!
ぶんぶんと一人頭を振って切り替える。
だけど、
部屋のどこを掃除しても、どこからともなく現れる文貴との思い出。
二人で遊園地に遊びに行ったときにとった写真とか、
あたしが文貴にコブラツイストをかけてる写真とか(田島君が楽しそうに撮ってくれた)
二人で半分ずつお金出して買ったゲームとか、
とにかく色々。
そういえばこのくまのぬいぐるみ。
これは文貴と理由もわすれちゃってるぐらい些細なことで喧嘩しちゃって、ずーとずーと何日も口を聞かない日があって、
別れるんじゃないかって思ってたら文貴からのメール。
『家の前!!』
ただそれだけのメールで、でもあたしは一目散に玄関を飛び出した。
そしたら玄関のそばであたしの様子を伺うみたいにのぞいてたくまのぬいぐるみ。
心なしか寂しそうな目。
「ごめんね。ホントにホントにごめんね。」
ぺこりと頭をさげた。
その姿があまりに愛らしくて笑ってしまった。
そしたら文貴もちょこんと現れて「・・・・ごめんね?」と小さく言った。
その後は思いっきりラリアットかまして力いっぱい抱きしめて謝ったっけ。
意味わかんないけど。
それ以来喧嘩はしてない。
今そのくまを軽くこずいた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ああ、あたし今どんな顔してる?
きっと幸せなのに、なんか泣きそうな顔。
思い出を振り返れば振り返るほど、文貴があたしの頭の中で大きくなって大きくなって、
会いたい気持ちが募ってく。
だけどあたしはかわいくないから、
会いたいなんて言えないよ。
でも今日ぐらいいよね、文貴に会いたいよ。
会いたくなった。
大好きだから、メリークリスマスっていいたかったな。
一人でしんみりしていたとき、あたしの携帯がなった。
誰からかなんてすぐわかった。
特別な着信音。
「も、もしもし!!」
あわてて通話ボタンを押すと、聞こえてくる声はあたしが今一番聞きたかった声。
『もっしもーし!!?』
なんだコイツ。
以心伝心デスか?
嬉しくなって自然と笑みがこぼれた。
「うん。どしたの?」
『大変なんだよ!!ちょっと今から外出られる!?の家の前だから!急いで急いで!!』
「何〜?そんなあわてて〜・・・・わかった。すぐでるね。」
あたしは急いで玄関に向かう。
部屋の外は寒くて、靴下を履いていても足先がじんと冷えた。
だけどそんなの気にならないぐらいあたしの胸は騒がしい。
勢いよく玄関を飛び出せば、そこにはダウンジャケットにマフラーを巻いてそわそわした様子で文貴が立っていた。
「あ!!!大変大変!!」
「何。」
クリスマスイブそうそうなんなんだこの男はと呆れつつ、文貴のそばによる。
「なんかね!俺の家にこんなものが!!!」
「・・・・・・・・・・・・・・・は?」
拍子抜けした。
大変大変いうから何かと思えば・・・・・・
文貴の手のひらには小さい箱がひとつ。
ちょこんと乗っていた。
「なんか宛みたいなんだよねぇ〜。サンタ間違えて俺のところにとどけたみたいなんだよね、うん。」
「・・・・・・・・・・文貴・・・・・・」
「だってほら、これメッセージカードまでついてるよ!!」
「・・・・・・・・。」
そういって差し出された包みを開けてみるとそこにはシンプルな指輪が入ってて、
メッセージカードには完全に文貴の字で書かれている。
ちゃんへ
文貴君はこんなんで、野球ばっかやってて忙しいしで恋人らしいコトが全然できていないようだけど、
ちゃんの事をめちゃめちゃ大切にしてるんだよ。すっげーすっげー好きなんだよ。もうこんな小さなメッセージカードにかけないぐらい!!
僕へのプレゼントのお願いも、ちゃんがずっと俺を好きでいてくれますよーにって書いてあったぐらいだからね(笑)
だからどうか見捨てないでやってね。
サンタクロースより
「〜っ!!!」
あたしはその場にしゃがみこんだ。
「な、何!?!?」
文貴がびっくりした様子であたしに声をかける。
それでもあたしはしゃがんだまま。
だって、だって、
こんなの嬉しすぎるでしょ。
別に気にしてないっていってんのに。
野球やってる文貴も好きなのに。
こんなへんなサプライズまで用意して、
お金ないくせに指輪まで買ってくれて、
こんな流暢な日本語話すサンタクロースどこにいるんだよ。
かっこ笑いとか・・・・どこのサンタが使うんですか。
めちゃめちゃとかどんだけ若者口調のサンタなんですか。
こんなバカサンタ、
世界中探しまわったって
一人しかいないよ。
「えっと、・・・・?」
恐る恐るあたしの様子を伺う文貴。
あたしの横に一緒になってしゃがみこんだ。
「うぉわああ!!!!!!」
その文貴のこめかみをグワシと掴んだ。
驚いた文貴のアホ面に一瞬噴出したけど、少し呼吸を整えてあたしは「文貴!」と少し大きな声で自分を切り替える。
文貴の肩がびくっと強ばった。
「・・・・その、流暢な日本語でしかも一日早く、あたし宛のものをあんたのところに届けたバカでドジなサンタに伝えてほしいコトがあるんだけど。」
「え、あ、はい!!な、なんでしょう?」
「大好き。」
一言、涙声でそう伝えたら、
「了解しましたぁ」
とにっこり笑って文貴が言った。
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水谷編。
とりあえず、間に合わなかった。うん。すいませぇええええーーーーーん!!!!!!!!!
そんでもって意味不明だしくさすぎるしバカすぎるし。
さんの買ったプレゼントは!?どーなったのよこの野郎!とか文貴今まで何してたんだこの野郎とかはじめのメールであえないとか
言う意味あんの!?とか色々矛盾はありますが触れちゃいけません。
きっと午前中はプレゼント選んでたんだろうなとか思ってください。
許してください。
ではではここまで読んでくださって本当にありがとうございました。