クリスマスイブ、街は恋人達であふれ返っている。
家族づれも多い。
みんな幸せそうだ。
きっとクリスマスには人を幸せにする力があるんだ。
特別な力があるんだもんね。


そんな特別な日。
あたしの家では壮絶な戦いが繰り広げられていた。







「ちょーーーーーーーーーーーーーー!!!!てめぇーその薄汚い手をどけな。」

「無理。」

「無理じゃない。坊や。その手をどけないと痛い目見るよ。それはあたしのかわいいエンジェルだからね。」

「・・・・人のケーキ横取りしといてよくそんなこというな・・・。」

「関係ないね!!うるさい!!準太がボーっとしてるからいらないのかと思ったんだもん。」

「そんならがボーっとしてたからこのチキンは俺がもらうことにする。」

「こいつは・・・あー言えばこういうなぁ!!高校生にもなって恥ずかしくないのか!?」

「俺は毎日部活で消費するからエネルギー源が必要なんだよ。お前はなんもしてねぇーんだから諦めとけ!太るぞ。」

「いいよ、別に。将来の夢力士だから。」

「はいはい。じゃーその有望な芽をつみとらせてもらうわ。」

「ぁあああああーーーーーーーー!!!!!あたしのあたしのマイリトルラバーが!!!」



必死なあたしの抵抗も空しく、てかてかのチキンは準太の口の中に収められた。


この戦いは今に始まったことじゃない。
あたしと準太が幼馴染として生まれてきたときからずっとだ。
毎年毎年人のケーキを食べるだの、チキンを食べるだの、壮絶なバトル。




その場で戦いがエスカレートしつかみ合いの喧嘩になって母親に半殺しにされたこともあった(二人そろって土下座した)
「毎年毎年あきないわねぇ・・・」と母親に呆れられながらも食器をかたす。


こんな馬鹿なクリスマスは昔からの恒例行事。
でも、そろそろこんなこともなくなるんじゃないかと思う。




だってあたしも準太も

もう「子供」じゃない。




















「・・・・・・・・・・・・・あ。」



いけない。


コントローラーを握ったままあたしはポツリとつぶやいた。
画面にはゲームオーバーの文字。

背後で準太がクックックと笑う声がした。




なにしてんの。」

「・・・・考え事してた。」

「はぁ?なんか悩みでもあんの?」

「別に・・・悩みってことでもないけど・・・。なんていうか・・・・今更だけどさ。」

「ああ。」


スッと雑誌をめくる音がした。




「なんで準太って彼女いないの?」

「は?」



ゲーム機の電源を切って振り返ると準太は豆鉄砲でも食らったようなそんな顔をしてあたしを見ている。



「野球部ってもてるんじゃないの?」

「・・・・なんだよ・・・急に。」

「いや、クリスマスにいまだに我が家に来てるから・・・・。彼女いないのかなぁって。」

「・・・・・・・・・・・・・・。」




もう高校2年生だよ。
あたしたち。
あたしはどうあれ準太はわりと顔も整ってるしスポーツってか野球ですごいし人気あるらしいし、
そろそろ彼女と過ごすクリスマスが訪れてもいいはずだと思う。





あたしの唐突な質問にあ〜う〜とうなっている準太。
ベットのスプリングがぎしぎしと音を立てる。




「そー言えばあたしのクラスの子で準太の事好きな子いるよ。」

「はっ!?マジ?」

「うん。結構かわいいし・・・・なんならきっかけぐらいはつくってあげようか?」



あたしもベットに乗っかり隣に腰掛ける。
準太が小さな声で「うお」っといった。



「・・・・いい・・・・。」

「・・・ふーん・・・いいならいいけど。何?今は野球に専念したいからーみたいな?」

「ち、違うけど・・・」

「はぁ?・・・・ああ!もしかしてゲイ?」

「お前マジはっ倒すよ?」

「ごめんごめん!嘘!!」

「・・・・・・・・。」

「・・・準太?」





準太は雑誌を見たまま何も言わない。
雑誌を見ているが読んではいない。
あきらかにおかしい。


まさかからかいすぎて怒った?
いやでもこんなことで怒るはずは・・・・・









「じゅ、じゅーんたぁ・・・?」



あたしがそぉーっと肩をぽんぽんと叩いてみる。
すると準太はゆっくりあたしの方に首を向ける。
ゆっくりゆっくり視線が絡む。
昔から見ていて見慣れているはずなのに
一瞬ドキリとした。


かっこいい・・・・・・・・・・・・











。」

「う、うん!?」




「俺来年は彼女と過ごすよ。クリスマス。」

「・・・・・う、うん・・・・・。」




なんだ急に。
いやあたしがふったのか。
それにしてもこんな風にきりだされるとなんだなぁ。
お眼鏡にかなう女性がいるってことか?
準太が好きっつーか自信満々に彼女にするって・・・どんな子だろう。
それとも来年のクリスマスに適当に彼女作ってすごすってことかな?


まぁどっちにしても来年は家にはこないってことで。

さっきまではなんとも思ってなかったのに、
ちょっとだけ寂しく感じた。








「よっし。」

「帰る?」

「ああ。自主トレもしたいし。時間も時間だし。」

「うん。」

「・・・来週の金曜日試合あるんだけど。」

「へー。」

「・・・へーって・・・・見にこいよ。」

「準太投げるの?」

「投げるよ。」

「じゃー見に行くよ。でも急にどうしたの?」


初めての事だ。
準太が自分の試合を見に来いだなんて。
少し驚いたけどあたしに自分の勇姿を見て欲しいだなんて・・・・・・
かわいいやつめ。




単純にそう思った。





準太は立ち上がってドアの前で振り返ってあたしを見た。















「俺の彼女になりたくなるよーにって。」













あれ?






「来年までにはを俺の彼女にするよ。」








おかしいな。




「んじゃ。」









バタンと戸が静かにしまる音がした。








さっきまで準太がかわいいって思えてたのに。



急に胸がドキドキして
苦しくて
顔が熱いのは何でだろう。






それに気づくのにそう時間はかからなかった。








「来年まで・・・・ね。」




もっと早いかもしれないよ、準太。

でもそれはあたしのプライドが許さないから、


準太があたしに彼女になってくださいってちゃんというまでこの気持ちは秘密にしておくことにした。




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準太編。

うはああーーーーーーーー!!!!!
やっとクリスマス企画コンプリートー!!!
準太が似非なコトよりもそれが嬉しい。
似非なんて今更ですもんね☆
うふふw


ごめんなさい。


ここまで読んでくださって本当にありがとうございました!!!