「・・・・・・・・っ!!」


すっと手からた離れた鞄はドスッと鈍い音を立ててカーペットの上に落ちた。




「んな顔でみんなっての・・・・・・・」





「だって、だ・・・・わ・・・・・か・・・・お・・・・」




あたしは目の前の光景に驚かずにはいられなかった。



本来そこにいるはずのない幼馴染が、
久しぶりに人のベットに座って雑誌を眺めていたのだから。


しかも





長かった髪をばっさり切って。







「ひ、ひひひひ・・・・・・」

「・・・・んだよ、気持ちわりぃーな・・・」

あたしのあまりの驚きように眉をしかめる寿はまだ慣れないのか短くなった髪をガシガシと触っている。



「髪が短くなってるーーーー!!!!」


「おう、まーな。」



あたしが指をさすと少し照れた様子でそっぽを向く彼。
久しぶりの幼馴染らしいやり取りのせいか、見慣れない髪型のせいか、なぜだか笑いがこみ上げてきた。


「あははははーーーーーー!!!」

「ちょ、おいコラァ!!笑うんじゃねぇ!!!」

「アハハハハハハーーー!!!」

「だから笑うんじゃねーって言ってんだろ!しめるぞコラァ!!」

「しめるってあんた・・・そんなスポーツマンみたいな髪型で・・・・よくいうっつーの・・・」

「まぁ・・・・・・スポーツマンだからな。」

「へぇ?」




思ってもいなかった言葉にあたしはうっすら目に浮かんだ涙をぬぐいながら寿を見た。
真剣な目に息を呑む。







「バスケ、もっかいはじめることにした。」





思わず耳を疑った。







「・・・・不良は?」


「足洗った。」


「これからは・・・バスケットマン?」


「まぁ一応な。」


「へ、へぇ・・・そ、か・・・」

「んだよ・・・・。」

「別に?でも、・・・うん・・・!よかったよかった!そっちの方が寿らしいよ!」




寿らしい



その言葉に一瞬目を丸くした彼だったが、


「おう!ありがとな。」



その後みせた笑顔は昔の変わらない少年の笑顔だった。






寿が・・・・・また・・・・コートで見れるんだ。

思うだけで、体から喜びがあふれてくるみたいで
足がぴりぴりして
胸のあたりがぞわぞわする。
涙が出てきそうになった。
だって、あたしが寿を
男として
人として
魅力的だと思った元はバスケットだから。
彼の流す汗が、
コートで走る姿が、
シュートを打つ横顔が、


あたしの胸をぎゅーっとしめつけた。


彼の試合を見たその日から、
あたしの中で幼馴染なんて感情は消えていたから。










「あ、そだ。お前どーせ放課後暇だろ?」


ふと思い出したように寿が言った。
どうせって!なんで常に暇だと思われてるんだ・・・・とは思ったものの別に間違っては無い。
あたしはコクンと頷く。


「何、急に。暇だけど。」


「練習見にこいよ。」

「えー。」

「なっ!お前久々にこの俺の華麗なスリーポイントが見られるんだぞ!?その誘いを断るつもりか?」

「なんだそれ。もちろん見に行くよ!幼馴染の久しぶりの晴れ姿だもん。当たり前じゃーん。」






そんなん誘われなくても見に行くっちゅーに!!!



とか思いながらもくだらない冗談を交えてあたし達は笑いあう。
落とした鞄を拾って机の上に置いた後、首につけていたリボンを外す。
ぎしぎしとベットのスプリングが音を立てるのが聞こえた。




「久々に見る俺がかっこよすぎて惚れんじゃねーぞ?」

「アハハ!馬鹿言わないでよ!」


ずっと前から惚れてるよ、だなんて口がさけても言えない。
幼馴染の壁とあたしの意気地の無さがその言葉を言わせないし。






。」

「んー?」








鞄の中を整理しながら寿を見ないで返事をした。




「・・・色々心配かけて悪かった。」













その言葉にあたしは鞄をあさっていた手を止めて、バッと寿の方に振り返る。

寿はもう一度低い声であたしに「ごめん」と言った。
頭を下げて。
ゆっくりとあがってくる顔、
彼の真剣な目に



絶対に泣かないと決めていた決心は音を立てて崩れ去った。



ずっとせきためてたせいで一度あふれたらまるで洪水のようどばどばとあふれ出てくる涙。



もう止めることなんて出来なくて、


あたしはワンワン子供みたいに声を出して泣く。





「お、おい!」


寿の困ったような声も今のあたしには関係なかった。



「バガーーーー!!」

「なっ、泣くんじゃねーよ!」

「ひざ・・じが・・・悪いんだもぉーーーん!!!ばがぁーーー!!」

「わかったわかった!・・・悪かったって・・・・」

「ばがばがばがーーーー!!!おぞい、よぉ・・・・あやまる、ぐらい、なだ・・・・はじめっがら・・・・」






涙と驚きと嬉しさと、懐かしさと、愛しさと、悔しさと、もう色々こみ上げてきて言葉に出来ない。




もうこんな風に寿と一緒に話せるなんて思っていなくて

もう二度と寿がバスケをやる姿をみれないと思っていたから





大好きな幼馴染はもう帰ってこないとそう思っていたから。




何も出来ない自分が悔しかった。
寿のそばにいて苦しんでる彼をみても
何もいえない自分がもどかしかった。
家に帰って泣いてるだけの自分が情けなかった。


そして今日、





寿の口から望んでいた奇跡みたいな
でもずっと望んでいた言葉が出てきて



あんな俺様な彼があたしに頭を下げた事が信じられなくて。






どうしていいのかわからなくって




あたしはただひたすら手の甲で自分の涙を拭き続けることしかできなかった。








「・・・・だーーーーもぉ!!!!」



寿のその声が聞こえてから感じた暖かいぬくもりにあたしはやっと我に返った。
硬くてゴツゴツした腕があたしの腰あたりをギュッと抱きしめてくれていて、
大きな手が何度も何度も頭をなでてくれた。





「ック・・・ひ、さ・・・」

「泣くんじゃねーよ・・・。お前に泣かれたらどーしていいかわかんねーだろーが・・・。」

「ごめ、ごめん・・・ね・・・」

「バカ。お前が謝まんじゃねーよ・・・。」



抱き寄せる腕に力がこもるのがわかった。


「ホント悪かった。」

「・・・かっこ悪い。」

「・・・・・。」

「そんなんじゃ、許せないから・・・・・」

「・・・・・・・・。」




「・・・・バスケで死ぬほどかっこいいところみせてよね・・・・。」





あたしのこの言葉に寿はしばらくの沈黙のあといつもの憎たらしい言い方で

「・・・・そんなの言われなくても見せ付けるっつーの。惚れんなよ?」と笑いながら言った。


「馬鹿。何を今更・・・」



もーその手の冗談は聞き飽きてるよ。



そう思ったのに。







「・・・・ああ、そうだな。」









寿があたしの後頭部をぎゅっと胸に押さえつけた。


は昔っから俺に惚れてるもんな。」







「・・・・・・・・・・・・・・・・!」

しばらく驚きのあまり言葉も出なかった。



だ・・・な・・・・えぇ!?どういうこと!?なになになに!?






「なっ!ちょ!!」




講義しようとして頭を持ち上げようとするも寿の手に押さえつけられていてピクリともしない。



「素直になれって。」

「いやいやいや!何それ、おかしいだろ!!違うから!」

「ちがくねーよ。」

「ひ、寿?」



いつもと同じやりとりのはずなのに、


いつもと違う寿の切り返しにあたしから間の抜けた声がでる。






「つーか・・・・違ったら俺が困る。」




その言葉にあたしは心臓が爆発するんじゃないかと思うぐらいにドキッとした。







それは、
つまり・・・・

その言葉の意味





寿の大きな手がゆっくりとあたしの頭から頬に下りてきて、優しく上を向かされる。


真剣な目にあたしは息を呑んだ。


ねぇおねがい。
冗談ならいつもみたいにニーって笑って?
「何マジになってんだよ」って頭叩いてよ。

でなきゃあたし

勘違いしちゃうよ。



いつの間にか止まった涙。
血液が沸騰してるんじゃないかと思うぐらいに全身が扱った。










「俺の事、好きだって言えよ。」














こんなときまで上から目線ですか?
馬鹿寿。
そんなの言われなくったって



「寿が、好き・・・・デス・・・。」






わかってたくせに。
悔しさと羞恥がこみ上げてきた。
多分耳まで真っ赤になってると思う。
そんなあたしをみてクスリと寿は笑った。



「じょーでき。」









そうつぶやくように言った後

寿の顔がゆっくり近づいてきて


あたしの唇に彼の唇がそっと重なった。
何度も何度も角度を変えて、今までのお互いの止めていた時間を取り戻すように。
お互いの気持ちを確認するように。
しばらくしてすっと唇が離されて、

あたしたちはまた抱き合う。

今度はちゃんとあたしも彼の背中に腕をまわして。













「寿。」

「あー?」

「お帰り。」


「・・・・おう。ただいま。」








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いや、やりたいことがあったんですけど自分の文章能力の無さに悔しさがこみ上げてきましたね。
お前スラダン嫌いだろ!!絶対嫌いだろ!!?アンチだろ!!!?
思われてもしょうがないです・・・・!本当に申し訳ないです・・・・!
でも愛だけはホントなんで信じてくださいぃいいーーーー!!!!

すべての罪にアイムソーリー。



ここまで読んでくださって本当にありがとうございました!!!