「いけいけいけーーデミグラス富士〜」

「・・・。」

「踏ん張れアラブ山ーー!!!」


「・・・・おい・・・・」


「あい?」


「うるせえ。」


胡坐をかいて膝に頬杖をついて呆れたような目をして流川君が言った。

それもそうだろう。
あたしは一人で紙相撲であそんでいたのだから。


「悪いけど・・・・」

「・・・・。」

「これ超楽しいよ。」

「・・・・本物だな。」

「いや、なに本物て。それ本物ってなんの本物!?大体意味はわかるけどぉーーー!!!」



呆れてゴロンと横になる彼を尻目にあたしはまた一人トントンと数学のプリントで作った紙相撲で遊ぶ。
心地いい陽気にあたしと流川君はわりとご機嫌で5時間目をたんのうしていた。


アドレスを交換したあの日から、あたし達はちょこちょこと会っては話をしたり(あたしが一方的に)おこしに行ったりとそんな感じの関係を築き上げていた。
そんな感じってどんな感じだ。とか自分でも思うけど、もう流川君は怖くない。いや、怖いけど恐怖は感じなくなったし・・・

それに彼をもっと知ってみたいと思う自分がいた。

仲良くなりたいっていうかね、楽だなぁーって。
いや全然楽じゃないんだけど・・・めんどくさくないって言うか面白いって言うか他の男子との居心地のよさが違うって言うか・・・
とりあえず別に恋愛感情なんてものは持ち合わせていなくて。
っていうかそんなものがあったらあたしと彼はこんな風にアドレスを交換してはいないと思うし。
男女間の・・・友情・・・というかサボり仲間というか・・・なんというかそんな感じの関係。


ほぼ真上からさんさんと差し込む光にあたしは目を細める。
ああ、気持ちいなぁ・・・・


そんな時、ブーブーとコンクリートの上であたしの携帯が振動した。



「・・・・・。」


からだ。
一度伸びをしてからあたしはのろのろとメールボックスを開く。



「・・・・・っ!!!」












なんてこった。



そのメールの文面にあたしは言葉を失った。




『かわいい後輩とサボるのもいいけど次の時間は来た方がいいよ!前の授業の時にいい加減が来なかったら課題出す〜みたいなこと行ってたから!』



か、課題?え、課題?
・・・・・え、課題?


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


いやいやいや。ちょ、無理無理無理!!
課題なんて無理!!

ぶんぶんと頭を振った。

絶対出よう。うん。


そう思ったとき、ふと気がつく。



「・・・・・・・あああああああああ・・・・・」



横においてある鞄をあわててガサガサとあさってみるもお目当てのものは見つからない。
さかさまにしてひっくり返しても制服のポケットをパンパンしてみても。


当たり前だった。



教科書・・・・
持ってきてねぇ・・・・・。


ジェノサーーーーイドゥ!!!!


普段から嫌いな授業。
つねにサボることしか考えていなかったせいか、教科書を持ってくるのを忘れていた。
テスト前だけ勉強すればなんとかなるだろみたいなそんなノリで持って帰ったきり。
ああああ、ほとんどの教科を置き勉してるくせになんでこういう時はもって帰ってんのあたし!!馬鹿!!

しょうがない・・・。隣のクラスの子から借りよう。
土下座してくれれば誰かしらはかしてくれるよね。
人に声をかけられるのは別にたいしてなんとも思わないのに人に声をかけるのは苦手なあたし。
人見知りが激しいせいで付き合いがある友達なんてぐらいしかいない。
そんなあたしが誰かに教科書をかしてと頼むんだから・・・・

少し憂鬱になりながらも「ありがとう・・・」とに返信した。



はぁ・・・とため息をついてからちらりと横に寝転がる彼に視線を移す。
すうすうと寝息を立てていつもどおり気持ちよさそうに寝ていた。


ああ、いいな・・・まだ一年生だから卒業とか進路とか考えないでいいしさ。
それに一生懸命になれるものがあって、
しかもバッチリ結果に残せてて。

「しかもこんなにかっこいいんじゃなぁ・・・・・」


彼の生き方が憎たらしくてうらやましくて、でもちょっとあこがれた。


・・・・あれ?
っていうか・・・・。
あたしはふともう一度から来たメールを見直す。



『かわいい後輩とサボるのもいいけど次の時間は来た方がいいよ!前の授業の時にいい加減が来なかったら課題出す〜みたいなこと行ってたから!』

さっきと変わらない文面。
でもさっきは気にならなかったところが目に付いた。



・・・かわいい後輩・・・ではないよな・・・。


あたしは思わず目を細める。

そういえば彼はあたしに敬語を使ったことが無い。
はじめはアンタ呼ばわりだし今もお前とかアンタだし。調子のいいときはかな。

っておい!呼び捨て!!!

別にぱしられてくれるわけでもないし・・・・むしろあたしがぱしられてるぐらいじゃん。
コイツあたしの事先輩って知らないんじゃないかな・・・・。

落ち着いて考えれば、仲良くなったというよりは打ち解けただけなのかもしれない・・・しかもあたしが一方的に。
多分流川君はあたしの事をよく喋る目覚まし時計ぐらいにしか思ってないのかも。
そう思うとちょっと空しくなってきたな・・・・


そんな時調度あたしの頭にピリオドを打つかのようにチャイムが鳴って
はっとした。
こんなコトを考えてる場合じゃない!
さっさと教科書を借りて10分前ぐらいから座っておかないと!



そんなことを思いつつもあたしはいつもどおり彼に声をかけようとしたとき。




「・・・・・・。」




彼が珍しく自分でむくりと起き上がってあたしを見ていた。
半目のぼーっとした顔は幼さが残っていてかわいらしい。


「うわっ!!めずらしい。自分で起きるなんて。」

「・・・別に。」

「別にってなんだ別にって・・・・まぁいいや。あたしちょっと今日は急ぎの用があるから先行くね。」


バイバイと軽く手を振って背中を向ける。
2歩目ぐらいのところで「おい」と低い声があたしを呼び止めた。




「うわ・・・な、なに?」


びっくりした。流川君があたしを呼び止めるなんて今までなかったもんだから、体がビクッと強ばる。
彼は頭をぼさぼさとかきながらただあたしをボーっとみていた。



いや、ホントになに?
だんだん怖くなってきた・・・。







「・・・なんでもねぇ。」

「・・・・え、」

「やっぱなんでもねぇ。」

「あ・・・そうすか・・・」




余計に怖いわボケーーー!!


思ったけどこんな事言ったらきっと不機嫌になるだろうからあたしは何も言わず屋上をあとにした。



バタバタと五月蝿い音を立てて階段を駆け下りる。
あああ、誰にかりよう誰に借りよう!!?
そればっかりを考えながら走っていたあたし。

前も見ないで。




「うわあ!!!」


余所見しながら走るもんじゃありません!
何回も言われてはずなのに。
何度も人にぶつかってるはずなのに。
人って学ばないのね。
いや、それはあたしだけか。




気づけばボンと大きな体にぶつかって跳ね飛ばされていた。
あはは、車だったら死んでたわ。
反省しつつものんきな気持ちで打ち付けたお尻を摩ってぶつかってしまった人物に「ごめん」と小さく言った。


か。・・・大丈夫か?」

「あ、赤木君!!」

そこには大きな体のバスケ部主将、赤木君があたしを見下ろして立っていた。

なんてタイミングがいいんだろう!!

ありがとうマイゴット!地球に生まれてよかった!!

あたしはすっと差し出してくれた彼の手をギュッと握った。




「赤木君!調度良かった!!」


「な、なんだ?」

「倫理の教科書貸して!!!」



赤木君とは実は二年生のときにクラスが同じで席も近かった。
はじめは近寄りがたかったけど真面目で結構優しい彼にはすぐに心を許すことが出来た。
今もすれ違えば挨拶や世間話ぐらいは交わす中。
そんな赤木君に今出会えた事に感謝。
これは教科書借りるしかないでしょ!!!


ギュッと握った手に困惑しながらもコクリと彼は頷いてくれた。


「うはーー!!ありがとう!助かるよ!」

「別にかまわないが、明日の朝までに返してくれよ?」

「あ、もしかして明日一時間目?」

「ああ。」






「ほら。」といって彼はあたしに使い込んだ教科書をぽんと渡してくれた。
あああ、聖書に見えてきた。

誠心誠意をこめて「ありがとう!!」と頭を下げてあたしは自分の教室に戻った。











!!」

「・・・やだよ。」

「まだ何も言ってないじゃん!!」


授業が終わって帰りのHRが終わって、学校が終わった、その直後。
はあたしの前の席の椅子に足を組んで、しかもまんべんの笑みで座る。

そんな親友の顔をみてあたしはお願いを断らないわけがない。



「バスケ・・・でしょ?」

「うん!」

「やーだーよぉーーーー!!!」

「ちょ!今日ぐらいはいいじゃん!!いつも一人で寂しいんだから!!」

「一人じゃないじゃん!三井がいるじゃん!」

「寿は練習してんだからギャラリーでは一人じゃん!!お願い!ね?」

のお願い。
それは一緒に男子バスケ部の練習風景を見ることだった。
にしてみれば彼氏の三井がバスケをする姿をみて、その後一緒に帰ってといい事ずくめなのだが・・・
人が沢山いる場所をこよなく嫌うあたしにとってそれに付き合うのは苦痛以外のなにものでもない。
いつもは絶対に断ってるところ・・・・なのだけれど・・・



「今日授業でないとって教えてあげたの誰だっけ。」

「・・・・・。」

「いつもノート見せてあげてんの誰だっけ。」

「・・・・。」

「あれ?それ赤木君の教科書じゃない?返した方がいいんじゃない?ほら、体育館に赤木君もいるわけだしさ。」

「・・・・・。」

「ねーねーみっちゃーんこの子さあのスーパールーキーるか「是非お供させてくださいぃいいーーーーーー!!!!」

「ホント?ありがとう☆」



あの笑顔に

悪魔がやどっている。




あたしは熱気のこもったギャラリーでため息をつく。
手すりですらなんかもう湿気みたいなもので軽く濡れててしかもあっつ!
こんなところでよくも三井を見れるなぁ・・・と感心するものの


「きゃーーー流川くーーーん!!!」

「かっこいぃいーーーー!!!!」





うるせ。

超うるせ。
耳取れる。



流川君に向けられた鼓膜がはちきれそうな黄色い声援に眉をしかめていた。
いや、なんていうか・・・これ・・・いやがらせ?流川君いやがらせにあってるんじゃないの?
そう思わずにはいられなかった。すごすぎる。
これ無理、あたしはたえられない。
赤木君にノートを返したらさっさと帰ろう。
かえって録画してまだ見てないダイハードでも見よう。
うん。

そう思ってあたしは次の休憩まで耐えることにした。




!」

「んー・・・?」

「流川君はどう?いつもと全然違う彼をみてときめいたりなんてしてんじゃないの〜?」

身をそっと寄せてコソコソとが声を潜めてあたしに言ってきた。

今更・・・・とうなだれながらも視線を流川君に移す。




「・・・・っ!」




一瞬あんだけ五月蝿く感じた周りの女の子の絶叫が聞こえなくなった。



ギャラリーには死ぬほど人がいるはずなのに


流川君とあたしは

バッチリ目が合ってしまったから。


腕につけたリストバンドで汗をぬぐいながらも射抜くような鋭い目であたしを見ている。

・・・ように見えた。


「きゃぁ!!今流川君と目があっちゃった!」と後ろの子が高めの声で言った。
そのときふっと時間が動き出すみたいに周りの五月蝿い声が耳に届いてあたしもバッと視線をずらした。

そりゃそうだよね。
こんな大勢人がいるなかで
あの流川君があたしを見てるわけ無いっつの。
っていうか来てることにも気づいてないでしょ!!
今目が合ったって思ったのだって多分気のせいだ。
あたしは勝手に流川君と仲良くなれたなんて思ったから勘違いした。


じゃあ

なんでこんなに顔が熱いの?

体育館の熱気のせい?

それとも

流川君が

かっこよく見えたせい?

気持ちを落ち着かせるように俯いたまま、自分に問いかけた。
それでも答えは出てこない。
鼓動が早く感じる。
いつもの自分じゃない。


あたしの異変に気がついたのか「?」とが声をかけてきたときだった。


体育館中に響き渡るバァアンという激しい音に「きゃああーあーーー!!!!」という女子達の悲鳴のような声。
ダムダムダムと床にバウンドしながら転がるボールにバッシュがきゅっと床をする音。


バッとコートの方を見ると


「・・・・・・・。」



見てろ


といわんばかりに流川君が不機嫌そうにこっちを見ていて。


さっきの頭の中の疑問が確信に変わった。

勘違いなんかじゃない。
あたしと流川君は目が合ってる。
さっきも合ってた。
絶対。



それがわかった瞬間
かぁーっと顔が熱くなった。
普段とは違う彼にドキドキしてる。
その後、あたしの視線の先は流川君だった。

しなやかなでもスピード感のある動きにバスケを知らないあたしでもすごさが伝わってきた。




ピピーーーっという笛の音が響き渡るその瞬間まで彼には魅せられっぱなしだった。

あたしは赤木君の教科書をギュッと握ってギャラリーの階段を駆け下りる。



これが噂のファンタジスタ!
ちょっと感動した!タメ口でも許してやろう!!
あしたもしメールがきたら凄かったと伝えよう!ドキドキした!興奮した!バスケが面白そうと思えたと。
にやにや顔でコートに出る。


「赤木くーーん!おつーーー!!!これこれ!!」




と叫びながら近づいたとき









「わんぎゃ!!!」




頭を思い切り鈍器で殴られたんじゃないかと思うぐらいの衝撃を感じて。
それから目の前が真っ暗になった。


----------------------------------------------------------------------------------
私この流れ好きだな!おい!!自分でいっちゃったけどこんなんばっか。
ホントさ、頭の中単純ですんません。
文章構成能力無くてすいません。
言葉使い悪くてすいません。
生まれてきてすいません。


ここまで読んでくださって本当にありがとうございました!!