ドナドナドーナードォナ〜



まさにあたしは今売られゆく子牛のような


そんな感じだ。



いや、どんな感じだ。



自分でもよくわからないけど、

まずいということだけははっきりと明確にわかっている。





周りがざわざわとどよめき、こちらを信じられないような顔をして見ている。
でもそんなものには目もくれず、彼はあたしの手を引いてずかずかと歩いていく。



全くもって意味がわからない。


何で?何々?
なんであたしこんなコトになってんの?
っていうか何で流川君はこんなに機嫌悪いの?
つーかまだ頭痛いんですけど。

色んなコトが頭を駆け巡るわりに、何一つ解決はしない。



気が付けばあたしと流川君は誰もいない校舎裏で二人っきりになっていた。
しかもあたしの背中には木、真正面には180センチ越えの大男。しかも超かっこよくてあたしなんかよりもはるかに力もあってスピードもある男。




逃げ場は何処にもない。






泣いていいですか。




あたしはいつの間にか頭部にあてていないアイスノンをぎゅっと握った。






「る、流川君?」

「・・・・・・。」

「えと・・・なんか怒ってる?」

「別に。」

「別にって・・・・練習見に来たから?それなら違うんだよ?別に練習をね、見に行ったわけじゃなくて」

「ちげぇ。」



驚いた。
流川君の声がいつもよりも、少しだけ強い口調になってあたしの言葉をさえぎった。
こんなこと今まで一度もなかったし、彼のイメージと微塵も結びつかないから。
風が青々と茂った葉を揺らす。
あたしと流川君にかかった影も少し揺れた。
この状況とは裏腹に陽気だけは無駄に心地よくて変な気分。





「流川君。手首いったい・・・・」

「逃げんだろ。」

「うん、まぁ・・・・」

「にがさねぇ。」

「・・・逃げられる気がしない。」

「・・・・・。」

「じゃなくてっ!!!つーかなんでそんな不機嫌なんですか!!!」

「お前がわりぃ。」

「はぁ!?」






彼から発された理不尽な言葉に驚きの声が漏れた。
それでも流川君はいままでどおりの表情であたしを見下していた。






「んで仲良くなってんだよ。」




・・・・仲良く?

彼の言葉にはいつも何かかけていてわかりにくい。
最近はずいぶん慣れてきたけど、やっぱり理解するのに少し時間はかかった。



「花道君のこと?」

「意味わかんねー」

「いや、あの子いい子だし。」

「あーゆーのが好きなのか?」

「はっ?」




今日の流川君はよく喋ると思ってはいたけど、彼からは予想もしていなかった言葉にあたしは耳を疑い眉をしかめる。


その刹那の事。





強い風が吹いて



髪の毛がばさばさと揺れて






気が付けばあたしはあの大きな体の真ん中、少し汗のにおいのする胸に顔を押し当てられていた。



つまりそれは


抱きしめられてるという状況。









あたしの手からはアイスノンがボトリと落ちる。















「る、流川君!?」



なんだなんだなんだ!?
急に発情したんですか?いや、あたしで発情するわけないよね?じゃあなんで?何?なんなの?

意味がわからない!!

今まで以上に意味がわからない。
安いプレステ3でプレステ2のゲームができないくらい意味がわからない。
とにかくあたしの頭は混乱するばかりだ。



とりあえず必死に抵抗してみるものの彼にはあたしの力なんてミジンコみたいなもんなのか、ピクリともしない。




しかも「暴れんな。」と一言ささやかれさっきよりも強い力で抱きしめられる始末で。
もうあたしも意味がわからないまま、この状態が早く、早く終われと願うだけだった。
全身から火がでてるみたいに熱い。
くらくらする。
流川君の匂い、体温、力強い腕に自分がとかされてゆくみたい。

どうしよう。
どうしよう。

気持ちの悪い汗が体中から噴出す。
でもそんなことはお構い無しに流川君はさっきから少しも動かない。




どうしよう、
どうしよう、

もうそれ以外の言葉があたしの頭に浮かぶことはなかった。
いい加減にはなしてもらわないと・・・・・。
そう、これはアレだ。
事故なんだ。
流川君がなんらかのアレで・・・まぁあれで急にあたしのような女に発情したんだ!
あたしなら顔みしりだし・・・まぁいいだろうぐらいに思ったんだよ。
そう、年頃の健全な男子だもんね、流川君も!!
こんなの今時の若者のあいだならコンビニのおにぎりのビニールを海苔を切らずに上手にあけるぐらいあたりまえのことなんだよ!!
全然普通のことなんだよ!!!だから動揺するなあたし。落ち着けあたし。

誰が聞いても頷けないこじつけの理由で自分に平静を取り戻そうとするもそんなの出来るわけもなく。


あたしは彼の腕の中でただただ硬直するしかなかった。




それからどれくらい時間がたったのだろうか。


自分ではとても長い間彼に抱きしめられている気がした。

冷静になれるわけもなく、あたしはずっと40度の高熱をだしている状態みたいなままじっとしていると、すっと体が離される。

おお!ようやく発情期終了か!?


なんていうあたしの願いは空しく砕け散る。









「キスしてぇ」









パードゥン?







「させろ。」













おぉおおーーーーーーーーーーい!!!





「んの・・・・いい加減にしろこのエロぎつねがぁあああーーーーーーーーー!!!!」




すっと降りてくる整った顔を力いっぱい押し返した。
とうの本人はそれでも涼しい顔をしたまま「うるせぇ」なんて言ってあたしの両手首を掴む。
まったくもって意味がわからない。
なんなんだコイツ!!!
さっきまで不機嫌そうにしてたくせにいきなり抱きしめてしかもキスしてぇだなんて!!!
ずうずうしいにもほどがある!!仮にもあたしは女子だぞコラ!!!
先輩だぞコラ!!!



「もぉおーーーー!!いい加減にしろ!!だいたいなんであたしなの!?流川君とそーゆーやましいことしたい女子なんて死ぬほどいんだからそっちにでもその発情的なあれをぶつけてよ!!!」


あたしの懇親の叫びに彼も少し驚いた表情をする。



「別にあたしじゃなくてもいいじゃんか!!意味わかんないし!!あたしは・・・・こんなんヤダし!そーゆーのは彼氏としたいの!!」

「・・・彼氏いんのか。」

「うるせーな!ぶん殴られたいかコラァ!これから作る予定なの!!」

「じゃあ、俺がなりゃいい話だろ。」

「いいわけあるかボケ!!お前はそんなに女と一発やりたいのか!どーせならもっとかわいい子標的にしろっつーの!!そんなんあたしじゃなくてもいいじゃんか!!」

「お前がいい。」

「は?」

「お前じゃなきゃだめだ。」

「なっ・・・・」

「だからする。」








サラッと大胆なことを言う彼に一瞬ひるんだ。


「いやいやいやいや!!!!ちょっと待ってよ!!」

「まだなんかあんのか?」


うっとおしそうな顔をして流川君が言う。


「大アリだ。アホかお前は!!」

「んだよ。」

「だからあたしは・・・」

「彼氏、じゃなきゃやなんだろ?」

「そ、そう!そういうことです」

「俺がそれになりゃいいだけの話だ。」

「だから!本末転倒!それさっきも話したじゃん!」

「俺の事嫌いなのか。」

「いや、嫌い・・・じゃないけど」

「じゃあ別にいいじゃねーか」

「いいわけあるか!」

「別に、そのうち好きになる。」

「どっからくるんですかその自信は・・・・」

「じゃあお前が俺の事を好きになりゃいいんだろ。」

「・・・まぁ・・・そう・・・いうことでも・・・・あるけど・・・・・」

「付き合えば好きになる。」

「いや、だから・・・・」

「付き合って嫌いになればわかれりゃいいだろ。」

「・・・・・・・・・。」

「・・・・・・・・・。」

「・・・・・・・・・・。」

「・・・・・・・・・・。」

「・・・・・・・・・・わかったよ。」



無言の訴えに負けたあたしは




いきなり話がぶっとんで




自分でもわけがわからないまま





流川楓と



付き合うことになってしまいました。












ボールがぶつかった部分がじんわりと痛んだ。
それはこれからあたしの身に降り注ぐ災難を暗示しているような、


そんな気がした。





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別にスランプとかそんなんじゃないです。
もともと私に文章能力的なものがないだけなんで。
ほんとね、なんでこんなのあっぷするかなぁ・・・・・
死ね!!私に誰かメラゾーマ的なものをぉおおーーーーー!!!!!


ここまで読んでくださって本当にありがとうございました!!