人は誰かを大切に想える心を持ってる


そしてそれは優しさにも変わり



醜い嫉妬にも変わる












「・・・・痛い。」

「何、頭まだ痛むの?」

「んー・・・違くてさ。」



あの衝撃的な事件からやっと一週間がたった。
いつも通りあたしとは昼食をとっている。


ある事を除いては。




「・・・視線が痛い。」

「あたしはもう慣れたけど?」

「うー・・・・・。」



そう。あたしはあの日からほぼ全校女子生徒を敵に回してしまったらしい。


あれだけ人目を避けて行動していたのに。
流川君のナンセンスな行動のせいであたしは一気に恰好を浴びる事になった。
今までお喋りくらいはするレベルの女友達はいなくなり、話したことも無い別の
クラスの子には睨みを利かされ、派手めな子には悪口を影でたたかれ、机には不
幸の手紙がいつもそっと入れられている始末。


あたしは別にいじめられている気はしないしこういう陰湿な事は嫌いだから悲し
いだのつらいだのというよりはイライラした。でもここで怒ったら向こうの思う
壷だよ!とに言われてあたしもぐっと堪えている。
それにこれ以上彼女には迷惑はかけられないと、そう思った。




「・・・ごめん」

「何が。」

「巻き込んだ。」

「ばか。いつでも巻き込め。」

「・・・嫌になったらいつでも友達やめていいから・・・。」

「なろうと思ってなったわけじゃないし、辞めようと思ってやめられるわけもな
い。」

「・・・。」

「馬鹿。」

「サンキュ」




やっぱりはあたしの自慢の友達だよ。
ありがとう、大好き



あらためてに感謝しつつあたしは一口ご飯を口に運んだ。





「何しんみりしてんだよっ!!二人して!」

「うぉわぁあ!!!」

「おぁあ!!み、三井!!!」



突然の後ろから元気のいい声が飛び込んで来て、あたし達はビクリと肩を強張らせる。


三井がの肩に手を乗せてニッと笑っていた。
その笑顔からはこの間までの不良姿は想像できないくらいに爽やかで気持ちのいい笑顔。



「寿!!!びっくりさせないで!!!」

「わりぃ!んな怒んなよ!!」

「アハハ!相変わらず仲良・・・・・・」

「・・・?」







しまったと思った。


お喋りに夢中になっていればよかったのに、あたしは気が付いてしまった。



いや、遅かれ早かれ声はかけられていたのかもしれない。







「流川君の事で話があるんだけど、ちょっと来てくんない?」






流川親衛隊なんかよりもたちの悪い
5人くらいのきつめの女子集団。










あたしの精神の許容範囲はもうすでにギリギリ。
これ以上何かあれば、あたしだっておだやかじゃない。
冷静を装うために短いため息をついてから視線は合わさずに箸をおいた。





「用があるならここで言ってよ。もうすぐ授業も始まるし。」


「あぁ?いいからこいっつってんだろ!?」

「何こいつ、超めんどくさいんだけど。」

「つか意味わかんねぇ。」




クラスの注目を集めながら女子達が舌打ちをしたり機嫌悪そうにぼそぼそとしゃべる。
もちろんあたしの耳に届くように。
いや、めんどくさいのも意味わかんないのも全部お前らだから。
ホントいい加減にしないとあたしの堪忍袋の緒も切れますけど?
拳をぎゅっと固めてあたしはこらえる。
と三井の心配そうな視線が少し気になるも、あたしたちはシカトする。
諦めてくれ。立ち去れ、立ち去れ!!悪霊退散!!!
必死に祈りを捧げるも彼女達はあたしのそばを離れる様子もなく、イライラした様子でどんどん罵倒もひどくなっていった。




「え、って言うかマジキモイ。」



え?ほめ言葉ですけど?



「ありえないんだけど!!うける!!」


いや、お前のそのスカートの短さの方がありえないんだけど!もはやうけない!!


「っていうか流川君はアンタで遊んでるだけだから。相手にされてると思ってんじゃねーぞ。」


なんていうか流川君は女遊びなんて微塵も興味ないしそんな遊びしないから。
そしてそんな相手にもされないお前らってどうなの?



「マジ調子のんなよブス。」


はいはいブスで結構。調子も別に乗ってないしね。
つーかあんたらきかざる前にその内面どうにかした方がいいよ。
そんでそんなんでホントに流川君の事好きなの?
毎日練習張り付いてストーカーみたいに見てるわりには彼の事わかってないね、気持ち悪。ただのおっかけじゃん。
言いたいことは口が腐るほどあるけどあたしはぐっと飲み込む。



すべてを穏便に済ませるため。

噂も七十五日っていうからね。
まぁ噂じゃなくて事実なんだけど・・・・。
とりあえずさっさと昼休みよ終われぇえーーー!!!



今何時ぐらいなんだろう、
そう思い携帯のディスプレイを確認した時。







一人の女があたしにとって一番言っちゃいけないことを言った。









「っつーかコイツもよく体育館きてね?」





こいつ?


瞳孔が開いた。
ゆっくりと彼女達を見ると、



一人の指がをさしていた。







「お前も友達もブスだな。こいつら見てるとマジ目が腐る。もう体育館くんなよ。」

「ちょ、うける!!おなか痛い〜!!」









あ?






誰がブスだって?
















「「黙れクソアマァアアアアアアアーーーーーー!!!!!!!!!」」






バァァアアアアアアン




教室中に響き渡るのは机のひっくり返った大きな音と、あたしと三井の雄たけびみたいな罵声だった(しかも息ぴったり)
一瞬にしてあたりが静間にかえり、さっきまで楽しそうにおしゃべりをしていた5人の女子達もみをたじろわせている。







「おいおいおいおい。」

「誰がブスだって?あ?もう一回言ってみなよ。」



元不良のドスの聞いた声。そして今まで黙っていたあたしからも信じられないくらい低い声が出た。
一歩ずつ彼女達に歩み寄る。

一瞬で空気が凍りついたようだった。
クラスの誰一人として言葉を発せない。
言葉どころか息の音だって聞こえないくらいの静寂が包み込む。





「つーかオメェーら鏡で自分の顔見たことあんのか?あ?」

「そんなんだから流川に相手にされねぇーんだよ。ブス。どーせあったま悪そうな腐った男としか付き合ったことねーんだろ?」

「まあまあ二人とも。こんな人間以下の可等な奴らにお話してもどうせ理解できるほどの脳みそ持ち合わせてないんだからさ。落ち着いて?」


穏やかな、それでいて冷酷なの声に一人は目に涙を浮かべている。



「だいたいお前らはなんなんだ!!」


こうなったらあたしはもう止まれない。
ぐっとこらえていたものが爆発する。




「流川君のなんなの!?あんたらこそなんなの!?何!?母親!?姑!?あたしが流川君と一緒にいるのはあの容姿だからとか、バスケが凄いからとかそんなんじゃない。」



そう、違う。


あたしにとっての流川君は、別にアイドルなんかじゃない。




「あたしは彼のそんなところに惹かれたわけじゃない!!!!」




別にバスケが上手なところが好きなわけじゃない。
背が高いところが好きなわけじゃない。
顔がかっこいいところが好きなわけじゃない。

流川君って


そんな単純な構造の人間なんかじゃない。






「大体なんであんた達にとやかく言われなきゃいけないわけ!?流川君の自由じゃないの!?流川君は友達作るのも彼女作るのも誰を好きになるかも、全部制限されなきゃいけないの!?」




初めて会った流川楓は



無愛想で無口で


でもなんだか嫌いになれないただの男の子だった。





「流川君がやだったら自分でやだって言うし、そんなことは流川君が自分の意思で決めることだし、そんなことは流川君個人の問題じゃないの!?」





バスケに夢中で四六時中バスケの事しか考えてなくて、
そんな真っ直ぐなところがうらやましかった。
好きなコトを一生懸命頑張れて、それで結果を残せる彼に憧れを抱いた。
普段はむすっとしてるくせに寝顔は幼い高校一年生ですっごいかわいくて。
無言でもぐもぐパンを食べてて、さりげなくあたしの玉子焼きを狙ってきて取り合いになっちゃうぐらいにクソ餓鬼。
全然クールなんかじゃない。






「流川君は目立つしモテるし凄い有名人だけど、ただの普通の男の子なんだよ!?そんな普通の男の子の流川君をあたしは好きなんだからぁああーーー!!!!!」



・・・・・。」

よく言った。」




二人がうんうんと頷くなか、女子達はあたしに何も言い返すことも出来ずにぐっと悔しそうな顔をしていた。




「あたしは自分の好きだって思う人は自分で決めるし、一緒に居たいと思う人とは自分の意思で一緒に居る!!!あんた達にとやかく言われる筋合いはない!!!」





最後にひっくり返した机に右足を乗せて言い切った。
色々言い過ぎて酸欠になりそう。
くらくらする。
でも死ぬほどすっきりした。
ふうと息を吐く。





「そうそう。の言うとおり。つーかこれ以上にちょっかいかけてみな?」


「俺らが黙っちゃいねーぜ?」



「・・・・・・!」



「・・・二人ともぉ・・・・・」



「黙っててあげてたって事わかるよね?あたし達って優しいでしょ?」

がにまりと笑う。もちろん目は笑っていない。

「つーかホントこいつら性格悪いな・・・。こんなんじゃ相手にされるどころか眼中にねーだろ、な?流川?」


廊下側の壁にもたれて三井が言った。
うっすらと笑みを浮かべている。



・・・・・・・・・・・・ん?ちょっとまった。え、三井さん?
今なんて・・・・・・・?




軽い酸欠で頭がボーっとしてるからきっと聞き間違えだよね?

だってここ三年の階だし、








「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・そーゆーことだ。」







この声も幻聴だよね?
あの5人の驚いた顔も


ドアのところに見える大きな真っ黒い



流川君も





幻覚だよね?









「アハハハハハ。」

「・・・・、現実逃避はだめ。」



バシっとに頭をはたかれてもまだあたしはこの現実を受け入れようとはしていなかった。
だって、


こんなところに


こんなタイミングで




この男が現れるなんておかしいでしょ?









「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」










気が付けば左手首がヒヤッとして、彼に掴まれているコトに気が付いた。



そしてぐいぐいと引っ張られ


教室から連れ出される。






どうやらあたしはコレを現実だと




受け入れなくてはならないらしい。



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流川全然ででこうへんがなぁああーーーーーー!!!!!
次はぐいぐい出てきますんで!!!すんまへん!!


ここまで読んでくださって本当にありがとうございました!!!