どなどなどーなーどぉなぁ〜
まさに売られゆく子牛の如く・・・・・
ってこのくだり前にもあったって!!
デジャブかこれ。
でも、やっぱり気分は子牛で(どんな気分だ)
あたしはぐいぐいと手を流川君に引かれるまま、屋上へと連れられて来た。
重たいドアを軽々と流川君が開けるとビュンとあたしの前髪を風がかすめる。
流川君は何も言わない。
だからあたしも何も言えない。
無言のまま、流川君はあたしをいつもの場所まで引っ張ってきた。
そこで手をつかんだままあたしと向き合う。
いつも通り無表情なんですけど。
いや、わっかんねーよ!!!!
その静けさにもつっこみつつあたしはおずおずと口を開いた。
「流川君・・・・・。」
「・・・・・・・・。」
「あの・・・・」
「なんで言わねぇ・・・」
「へっ?」
「嫌がらせのことなんで言わねえ。」
眉間に皺をよせて流川君はあたしの手をさっきよりも強く握る。
「いや・・・・別に大したことじゃないし。あたし平気だし。」
「嘘つけ。しばらく元気なかったくせに。」
「嘘ついてないし!しかもなんかこう・・・・そういうの嫌いなんだよあたし!!!」
ダンダンと足をならしながらあたしはさっきの腹立たしい女たちを思い出していた。
「あーゆーのが一番ムカつくんだよ!!一人じゃなにもできないくせに!!そのくせ集団でいると強気だし?
しかもあいつら流川君をなんだと思ってんだって話なんだよね!!だってそうじゃん?流川君には流川君の意思があるわけだし?
それを勝手に流川君の迷惑だのなんだの言ってあんた流川君のなんなのだのなんだのギャースカギャースカうるさいし!!!
テメェー等がなんなのって話じゃん!!!もし今流川君に泣きついたり、流川君を突き放したりしたら・・・・・
あいつ等に言われたからどーにかしたっていうか・・・・あいつらに言われたからこーやって流川君に接したっていうか・・・・
そんなの悔しいじゃん!つーかそんなの違うじゃん!!!あたしはあたしの意思で流川君と仲良くしてるのにさ!!!!」
思い出して口に出したら止まらなくて
あたしは息が続くかぎりどなり散らして、わめいた。
それを少しびっくりした様子で黙って見ていた流川君は聞き終えたあと少しだけ口角をあげて笑う。
「・・・・。」
「何。」
「・・・オメーがよくても俺がよくねぇ。」
「・・・・。」
「一応、彼氏。もっと頼れ。」
「・・・・・・・・・・・・ごめん。」
「どあほう。」
流川君は手を握ったまま、軽く引き寄せて、もう片方の手であたしの頭をくしゃりとなでる。
大きな掌があたしの頭をわっしゃわっしゃとなでるたび胸がドクン、ドクンと大きな音を立てて。
どうしよう。
なんかすっごい嬉しいかもしれない。
「る、流川君!あのね!!あのね!!」
この喜びを伝えてやろう!!!
フハハハハハ!!!
私ってなんて優しい先輩なんだろう!!!
照れ隠し、
そんな言葉はあたしは認めない。
だって、別に流川君のこと好きなわけじゃないし?
これはあれだ。
吊り橋効果みたいななんかそういうのなんだ。
その時の雰囲気にのまれてみただけなんだ。
だからこの気持は好きとかなんかそーゆーんじゃなくてあれなんだ。うん。
とりあえず素直にありがとう!と伝えればいい。
恥ずかしがることでもなんでもないし?
どうせ相手は後輩の流川なわけだし?
うん、どうってことはないんだ。
うん。・・・・うん。
あたしはいったん頭の中を整理してから「ありがとう!嬉しいよ!」と何度かシュミレーションをする。
そしてさっきまで少し伏せていた顔をぐっとあげると、
すぐ10センチ先には整った流川君の顔があって
頭をわしづかみにしていた手はいつのまにか頬を固定させるように添えられていて
あたしの唇に、
そっと唇が触れる。
あたしの頭は思考停止。
強制停止。
「・・・・・・・・・・・・・。」
抵抗しないのをいいことに
その唇は角度を変えて何度も何度も重なる。
しばらくして、口の隙間からぬっと滑り込まれてきて、ようやく思考再開。
気がつけば、もう抱きしめられているような状態で。
あたしは必至に彼の胸をどんどんと叩く。
そしてようやく離された唇からは「ハァッ」と新鮮な空気が吸い込まれる。
「何考えてんだあんたは!アホか!本物のアフォか!!」
「オメーには負ける。」
「こらテメェー殴るぞ。」
「・・・んだよ。」
「んだよ!?んだよってこっちがんだよだよ!!読みずら!!!」
「・・・・・・・・・・・。」
不機嫌そうにしながらまた顔を寄せてくる彼に一瞬ひるむもすぐに我に返り流川君のおでこにチョップをかます。
「何キスしてんだコラァアアアアーーーーーー!!!アホ!!!」
「何がわりぃ」
「・・・・・本気で言ってんの?前も言ったでしょ!?あたしはキスとかそーゆーのは好きな人としたいんだっつーの!!!忘れたか!?」
「覚えてる。」
「じゃあなんでだ!?なんでだコラ。」
「が言った。」
「何を!」
名前知ってたのか!!!
でもやっぱため語か!!
そこに突っ込みを入れつつもあたしはキッと彼を睨む。
その様子に流川君はちっと舌打ちをした。
(こっちが舌打ちしたいぐらいだよ!!)
「・・・・・・・・惹かれたって・・・・・」
「ぇえ!?そんなこと言って・・・・・・・・・」
『あたしは彼のそんなところに惹かれたわけじゃない!!!!』
いいましたね。
はい。
「・・・・・・・・・・・あれは、あれだよ。うん。」
「・・・・なんだよ・・・。」
「・・・・その場の勢いというか・・・惹かれたって意味にも色々あるわけだし、人としては凄い、うん・・・・魅力的だと思うし・・・・」
「・・・・・・・・。」
「だから、なんつーか好きとか、そういう・・・・意味では・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
しどろもどろになるあたしを横目にため息をつく流川君。
ガシガシと自分の髪をかいたあと、また溜息をついた。
「・・・・・じゃあなんですぐ抵抗しねえ。」
「・・・思考停止してました。」
「・・・・・・。」
「ご、ごめんなさい・・・・・。」
「ゆるさねぇ。」
「ぇえ!?えー・・・じゃあこの間一人で紙相撲やった時に優勝したアラブ山あげるから許して。」
「・・・・・・。」
「いだぁああああああーーー!!!流川君レディーレディー!!」
おでこにきれいに決まったチョップに涙しつつも流川君をちらりと見る。
少し、
寂しそうに見えて心が痛んだ。
でも同情とかそんなんじゃない。
自分でもよくわからない感情。
「流川君・・・・。」
あたしが名前を呼ぶと首は動かさず、そのまま眼だけであたしを見た。
「ありがとう。」
にっと笑って見せれば、
少しだけ、
ほんの少しだけ
優しい目であたしを見てくれた気がした。
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もう流川君が好きで好きでしょうがないのにうまく文章に表わせられない自分が
もどかしい。ど畜生!私!!!
ここまで読んでくださって本当にありがとうございました!!