君が好きだーと叫び―たい


ズンチャカズンチャカとヘッドフォンからは音が流れる。


でも全部






「キャーーーーーーーーーーー!!!!!!!!流川くぅーーーーーーーん!!!!!!!!!!」








黄色い声援にかき消されていった。










ああ、だる。
帰りたい。
あたしは二階のギャラリーからぼーっとバスケ部の練習を眺めていた。
いつも隣にいてくれるは「ごめん今日はバイトなんだ」と言って先に帰ってしまい、完全に場違いな空気。

そもそもなんであたしがこんなところに座っているか。
しかも一人で。












「・・・・・・・・おい。」


「あー、何〜?」




お昼休みのこと。
屋上であたしがご機嫌に友達から借りた漫画を読んでいた時。
横に座る流川君が珍しくあたしに声をかけてきた。



「・・・・・・・・今日なんかあんのか。」

「え、今日?あー今日あれだ、昼ごろからの2時間サスペンスのビデオ撮りためてたやつを鑑賞する予定がある。」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

「に、にらまないでよ・・・・なにさ・・・」







「一緒に帰る。」










耳の病にかかったのかと思った。

そのぐらいびっくりして、あたしは彼に視線を移すといつもどおりのクールな表情でパンをもぐもぐと食べている。




「は?」

「練習おわんの待ってろ。」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・は?」

「何度も言わせんな。」


流川君は焼きそばパンの最後のひとかけらを口の中にほおり込んで袋をくしゃくしゃと丸めた。


え?
とりあえずツッコミ入れたいところたくさんあるな。
一緒に帰る?
いやいやいや!!君ほんとにあの流川君ですか?そんな青春みたいなことしたいんですかあなた。
っていうか最後"る"で終わってるけど、え?クエスチョンじゃなくて?決定?
そんでもって次の待ってろ。ろってことは命令形?会話にならないんですが。
よくしゃべってることもびっくりだし、会話になってないところもびっくりだし。


それでもどうやらあたしに拒否権はないらしい。


この男はいつだって「俺が絶対なんだよ」ということを








「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」






無言の視線で訴えてくる。



せめて、
せめて言葉を使おうよ・・・・・・・・・。






「あー・・・・・・・わかったよ、待ってる。」




あたしは頬を引くつかせながら空を見上げて言った。




























その場の勢いっていうのもあったけど、
さすがにこのアウェーな空気は辛い。
たまに花道君があたしに気がついて「さぁあーーーーーーん!!!」なんて手を振ってくれてあたしの緊張をほぐしてくれる。
けれど、そのたび流川君はあたしをキッと睨んで花道君を挑発したりして色々大変だったりする。


あー、早く帰りてぇー・・・・・。

しみじみそう思ったとき、ピーピーピーといやな音。
まさかとは思って音楽プレーヤーを見てみれば充電切れで。
あたしのテンションを降下させた。

なんだ、のろいか?
いじめか?
神様でも人の好き嫌いするんですねー
まぁ私はあんたなんて大っ嫌いだけどね。
あ、でもたまに好き!たまに好きだからみすてないで!!






さんっすか?」

「へっ?」


ドスンとあたしの横に腰かけたのは整った顔のリーゼントみたいな髪型の男の子。
こわもてのお友達をぞろぞろ連れていた。



「え、・・・っす・・・。」

「あ、ビビんないでくださいよ!俺ら花道のダチなんで!!!」




花道君の・・・・・・・・友達・・・・・・・・・?



「ああ、じゃあ大丈夫だわ。」

「ぶっ!!!」

「え、な、なぜに笑う!?」

「いやーなかなかいないっすよ〜俺ら見て大丈夫だって判断する人。」

「え、そ、そうかな?」



だって

花道君の友達が悪い人なわけがない。
あんなことつるめるのは心優しい人だけだわ。



「えーと、」

「水戸っす。」

「水戸君!はじめまして!っす!」



そのあと続いて自己紹介をされる。

水戸洋平君、
高宮望君、
大楠雄二君、
野間忠一郎君。
みんな見た目は怖いけど笑顔がとってもかわいくてすごくいい人そうに感じた。






「いやいや、噂はかねがね。」

「えぇ!?噂!?あたし?」

「はい、さん流川と付き合ってるんすよね?」


水戸君が気を利かせたのか声をひそめて言った。


「えっ・・・・・・・・・・」

「学校中の噂になってますから。」

「マジで!?」

「まぁまだデマだろうって説の方が強いみたいっすけど・・・・」

「あ、ああ・・・・そうなんだ・・・・。」

「実際のところどうなんですか?」

「・・・うーん・・・・・半分あってて半分違うって感じかな・・・・・・。」






付き合ってるっていうことは事実だけど・・・・・・・
ラブラブー!みたいな感じではないし・・・・どちらかといえば脅迫されて付き合ったみたいなところもあるわけで。
あたしが苦笑していると何かをさっしたのか水戸君はそれ以上は追及してこなかった。
その後もみんなはあたしが退屈しないように色んな話をしてくれる。
主に花道君のバカ話だけど。
すごく面白くて楽しくて嬉しくて、時間を忘れて笑った。







「あ、んじゃあ俺達下行きますね。」

「えっ、もうそんな時間?」

「もう終りっすよー練習!」

「ホント!?いやー楽しかった!マジありがとう!!」

「いえいえ!こちらこそ〜」

「バイバーイ!」




にこやかに手を振り別れた時にはっと気がついた。




「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」








流川君
めっちゃこっちみとるがな。


鋭い双眼があたしを射抜く。



「・・・・・・・・・・。」



ど、どうしよう・・・・・・・・・・・
とりあえずあれだ、練習はもうおしまいなわけだし、あたしも下に降りよう。うん。それが一番いいはずだ。
慌てて鞄に荷物を詰め込んであたしはギャラリーを降りた。
入口には人が群がっていてなかなか出られない。
は?何?出待ち?あたしいつからそんな人気者?
人をかき分けてたどり着いた先には流川君が立っていて(探す必要もなく頭がひょっこり出ていた)
あたしを見つけるとズカズカとこっちへ歩いてきた。



あああ、なんかやな予感すんな・・・・・・・・・。


その予感は見事に的中して



流川君はあたしの手をつかんでずるずると外へ引っ張っていく。


みんなの前で


女子たちの前で。








せっかくデマなんじゃないかって説の方が有力なのに・・・・・
なぜ君はこういうことをするんだね・・・・・。
もはや嫌がらせの領域だよ!!!
明日学校行きたくないよー!!!

そんなことを本人に言えるわけもなく、
頭の中で訴えながらあたしはずるずるとそのまま引きずられていった。




もう日は沈んでいて外は暗い。
少しだけ肌寒かった。


自転車置き場で彼が自転車を出すところをぼーっと見ていると、流川君の動きがぴたりと止まった。










「・・・・・・・・・・・流川君?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

「・・・・・・・・ど、どした、の?」

「乗れ。」

「え、あたしが乗って帰っていいの?」

「どあほう、後ろにだ。」

「え・・・・・・ぇええーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!」



なんですとぉおおおおおおーーーーーーーーーーーーーーーーーー!?



あたしの絶叫が人の少ない自転車置き場に響き渡る。





「乗れ。」

「いや、え、いや・・・でもさ、ほら、あの・・・・・・ねぇ?」

「乗れ。」

「でも!!でもさ!!」




君の自転車


後ろ乗るとこないんですけど。



流川君の自転車はハンドルがさかさまみたいになっててそんじゃそこらのままチャリじゃない。
あのなんか競技用みたいな、そんなやつで。
つまりこれの後ろに乗らなきゃいけないってことは、
100パーセント流川君の肩につかまらなきゃいけないってことで。




考えただけでおぞましい・・・・・・・・・・!


必死に言葉を探してあーだこーだ言ってみても「乗れ」の一点張りな流川君。



「・・・・・・・・・・乗れ。」



あたしの抵抗もむなしく





「・・・・・・・・・・・・。」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」



あたしを乗せた流川君の自転車は爽快に風を切って走る。




女子たちの前を華麗に。







ああああああああああああああああああーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!


だれかぁああああーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!


悪あがきとわかっていながらあたしは必死に「え、別にたまたま後ろに乗ってるだけなんで。彼女とかそういうんじゃないんで。」
みたいなオーラを出してそーっと肩に触れる程度に捕まっていても、たぶんあんまり意味がないことぐらいわかってるんだ。




「おい。」

「はい!」



「ちゃんとつかまれ。おちんぞ。」




そう言って流川君の手があたしの手の上にかぶさる。



硬くて大きくてでもきれいな手。



ドキン



胸が高鳴った。




あれ?

顔が熱くて、

胸が苦しい。







「だ、大丈夫・・・だよ・・・・」




その時はまだかっこよすぎる流川君への免疫ができてないだけ
そう思っていた。







「どこ行くの?」

「公園。」

「公園?バスケするの?」

「する。」



ああ、やっぱりこういうところは流川君らしいな、と頬が緩んでしまうことは
前を見ている流川君にはきっとわからない。






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久々の流川夢更新!!!いったいこのサイトに訪れてくれた人の何人が見てくれているんだろう?(笑)
てめぇ!!流川なんて待ってねぇーーんよ!さっさと笛orDBorおお振り更新しろやぁああ!!!!
ってな風に思ってる方の方が多いっすよね(笑)趣味丸出しすいません!
もうこれを気にみなさまも流川君を好きになればいい!他サイト様の小説の流川君はほんとかっこいいんですから!!
(自慢げ)

とにもかくにもここまで読んでくださって本当にありがとうございました!!