どうしようか
『いい!』
いや、どうしようもないんだけど
『ちゃんと流川君に言うんだよ??』
いったい
本当に
そんなことで
『赤点回避したらーあたしからキスしてあげるから頑張って★(キャルン)って!!』
あの男はやる気を出すのだろうか
「おい」
「へぇ?」
「どこ行く」
流川君はトイレの前でしかめっ面をしてあたしを見た。
あああ、うっかりしてた。
「ごめん」と小さく謝って女子トイレに足を向ける。
ううう・・・・・
やっぱりそんなんじゃ
絶対だめだと思うんですけど。
用を済ませて手を洗いながら思った。
冷たい水がばしゃばしゃとはねる。
すっと顔をあげると大きな鏡に自分が映った。
「もし赤点回避したら、あたしからキスしてあげるから頑張って★きゃるん」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
おうぇえええええええええええええええええええええええええーーーーーーーーーーーーーー
なし!!
なしなしなし!
こんなん罰ゲームでしょ、あたしも流川君も。
っていうか大丈夫だよね!?誰も見てないよね!?
きょろきょろと周りを見渡す。
誰も見てないと分かってホッと胸をなでおろした。
しかし
やっかいだ。
人を好きになるなんて何年振りだろうか。
中学1年生の時、優しくてよく笑う3年の先輩を好きだったことがあった。
ちょっかいかけられて、頭をよくなでてもらって、そのたび心臓がはじけ飛ぶかと思った。
結局告白できないまま、どの高校にいくかも聞かずに先輩はそつぎょうしてしまった。
悲しくて悲しくて毎晩枕を濡らす、なんてことはなかったけど
むなしさだけがずっとあたしの心に残った。
今となっては青臭い思い出で
もうそれ以来
こんな気持ちは味わっていない。
味わいたくなんてなかった。
よりによって
流川君なんて
「・・・・・好きになっても傷つくだけだよ・・・・・・・・・・あたし・・・・・・・・・・」
鏡に映る自分が
なんだか自分じゃないみたいで
本当に嫌になって目をそらした。
「おせぇ」
入口の前で不機嫌な声がした。
「すいませーーん。女子だから色々忙しくてー」
「生理か」
「黙れ小僧。そーゆーのはオブラートに包むものですよーまったくもう」
「・・・・・・・・・・・・流川君?」
さあ、行こうと歩き出して3歩目。
あたしの左手にスルリと絡みついてきた指に驚いて足が止まった。
「・・・・・・・・・・・。」
「・・・だめだよ、戻らないと」
そんな顔しても
だめなんだから
だめだよ
そんな
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
気付けばあたし達はトイレのすぐそばの資料室でしゃがみこんでボーっとしていた。
絡みあった指はそのままで
な に を や っ て る ん だ あ た し は
「もう!!休憩終わり!ほら!帰る!!!」
すくっと立ちあがってもグイッとそれ以上の力でまた座らされる。
もうこれが4回目だったりして
実は若干あきらめてる。
「るーかーわーくーんーみんな心配してるよーそろそろ戻らないとさー」
時計がないからわからないけど
たぶん結構時間はたってると思う。
背中の窓から差し込む光がオレンジ色だ
「ねえ流川君ーちょっとー?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
返答がない
と思っっていた矢先
ずしっとももに重量感を感じた。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
うそでしょ
流川君の頭が
あたしの足にふってきた。
焦って「ちょ、起きて!起きて流川君!!」とゆすっても、彼の眼はあかない。
それどころか「んー」と言ってもぞもぞと動く。
そのたびにサラサラの毛が直接ももに当たってぞくぞくした。
これは
まずいよ
二人きりの資料室
あたしの心臓だけがうるさかった。
くそう
もうこれは
恋する乙女かバカヤロウ
がらじゃないけどさ
完全に
君が好きだよ
「流川君・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
顔にかかる長めの髪をなでる。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
釣り目の整った顔がよく見えて、余計にドキドキしてる。
乾いた口が
震えた。
「流川君が、赤点回避したら、あ、あたしからキス・・・・・・・・・・・」
するからさ・・・・・・・・・
そんなんで流川君は
頑張って
くれる?
わからないけど
あたしはどうしたらいいのかな・・・・・
流川君
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・ホントか・・・・?」
ん?
流川君からそらしていた視線
きゅっと目を閉じて、考えた。
「今しゃべったのは だぁーれ?」
「俺しかいねーだろ」
両頬を大きな手で挟まれて、ぐいっと下を向かされる。
そこにはぱっちりと目を開けて、あたしを見る彼がいた。
「っ!」
「ホントか?」
「起きて・・・・・・ちょ、ひどいぃいい」
「」
わーわー言って暴れるあたしの顔をさっきよりも自分の顔に近づけて
今にも唇がかさなってしまいそうな距離
「・・・・・・ホント、です・・・・」
あたしの小さい小さい小さい返答に
「楽しみにしてる」
と小さい声で呟いた。
そのあと会議室にもどると
にやにやとした三井との視線が痛かったのは言うまでもない。
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久しぶりの更新!
長い割に内容薄いのは・・・ぶ、ぶらんくですかね!?
なかなかうまいペースで進展できなくって申し訳ないっす
ここまで読んでくださって本当にありがとうございました!