殿!!今日はいい天気でござるな!!」



「・・・・・そうだね。」









なんか








殿!!今日は某、昼食をパンにするでござるよ!!殿はお弁当でござるか?」




「・・・・・・・うん、お弁当かな・・・・・。」













なんか違う気がする。











「・・・・・・・・はぁ・・・・・・。」

「ため息つくと幸せ逃げるぜぇー。」

「佐助・・・・・。」




机に頬杖を付いたまま、視線だけを声がする前方に視線だけを移す。


昼休み中ごろ、
ボーっとしていたあたしに気が付いて、佐助がパンをかじりながら前の席に横向きに腰掛けた。





「なんか最近疲れてるねぇ。」

「ちょっとねー・・・・・・」

「旦那だろぉ〜?」

「・・・・・・・わかる?」

「わかるもなにも・・・・っつったらそれぐらいしか思いつかないけど?」

「マジすか。」

「おう。」

「うーーーん・・・・・」




あたしはもう一度長いため息をつく。




「なんかさ、違うんだよね。」

「違うって?」

「・・・・一応、あたしさ、幸村の事好きなんだけどさ。」

「うん。知ってる」

「あ、あたしが言うのもなんなんだけど・・・・幸村も多分・・・」

「あぁ。多分って言うか絶対好きだぜ、の事。」

「うん・・・・でさ・・・・・なんか、違うんだよねぇ・・・・・」

「何が。」

「なんか一向に近づく兆しが見えない。」







全部ホントの事。



あたしは幸村が好き。


そんでもって多分、幸村もあたしが好き。



あんだけアピールされたらクソ鈍いあたしもさすがに気づく。



でも、なんかそれ以上踏み込んでこない幸村に最近はどこかもどかしさを感じていた。







「そんなのが告白すればいい話じゃねーか」


口にパンの最後の一口をほおり投げながら佐助が言った。
その言葉にあたしはバンと机を叩いた。
佐助は目を丸くしてあたしを見る。


「バカ!!!そんなの恥かしいからやだよ!!」

「・・・・・なんかそれ矛盾してない?」

「・・・・・うるさいなぁ!!」

「・・・・はぁ・・・・まぁようはが告白されたいって言う話なわけね・・・・。」

「まぁ・・・・そういう事です。」





あたしは口を少し尖らせて静かに言った。
すると佐助はニヤリと悪戯な笑みを浮かる。


「それなら俺様にいい考えがあるぜ?」









そんな時タイミングがいいのか悪いのか、ドタバタと五月蝿い足音。
それは言わなくても誰だかわかる。






殿ォオオオーーーーー!!!!!」




「噂をすればか・・・・」

「だね・・・・・・。」





殿!!む、佐助?」

「お〜旦那〜パンは買えましたか?」

「なっ!お、おぬし!!!」

幸村が動揺するのも無理はなかった。
というかぶっちゃけあたしが動揺している。


「さ、佐助?」

「ん?」







妙に佐助が密着しているというか、


さっきまで目の前にいたはずの彼がいつの間にかあたしの真後ろに立って、

あたしの首に腕をまわして



なんか軽く抱きしめるみたいなそんな感じになってるんだけどぉおおおーーーー!!!?



あたしが口をパクパクさせて佐助を見上げると彼は軽くウインクをしてみせる。



まさかコレがさっき言ってた




いい考え




ってやつですか?




とりあえずあたしはわけもわからぬままに彼に任せて冷静を装う。



「また甘いパン?好きだねー幸村。」

「あ、え・・・まぁ・・・・そうでござるな!・・・・と、というかさ、佐助ぇ!!」

「なんですかぁ?旦那ぁー」

「お、おぬし何故そんなにも殿にみ、密着しているのだ!!は、破廉恥でござる!!」

「密着って旦那〜小学生じゃねーんだから、スキンシップじゃないですかぁ。これぐらい普通ですよ?なぁ?」

「へぇ!?あ、ああああ、うん!普通普通。普通だよ。」

「む、むむ・・・・そ、そうなのでござるか・・・・?」

「そーそー。なんなら旦那もやってみるかい?」

「なっ!そ、某は遠慮するでござる!!!」

「・・・・・・そうですかぃ。」

「・・・・・。」

「・・・・。」

「・・・・・。」

「・・・・・・・・・。」




気まずいぃーーーーーーーーーーーーーー!!!!


佐助はいったい何を考えてんの!?ちょ、これ気まずいって!!

重たい沈黙が続く中、「で、ではコレで某は失礼するでござるよ!」といって幸村が教室から出て行った。
彼の背中は逃げ出すようにも見えて、なんだか心苦しい気持ちでいっぱいだ。

幸村の背中が見えなくってからすぐ、あたしはバッと佐助の方に振り返る。
彼の手がっぱっとあたしから離れた。




「佐助ぇえええええーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!」

「まだまだ序章だぜ?あれは」

「なっ!!絶対嫌われたよ!どーしてくれんの!?」

「大丈夫だって!旦那は危機感がなさすぎるんだよ・・・・。ヤキモチ妬かせるなんてレベルじゃたりねーんだよ。だからまだまだおいつめねぇーとなぁ・・・・」


え?ホントに幸村の事慕ってるんですか?あなた。
そう思わせるぐらいに彼の笑みは黒かった。



いや、黒いのは



笑みだけじゃなかった。









殿!おはようで・・・・ご、ざる・・・・。」




朝も



殿!お昼でござる・・・・よ・・・・」


昼も



殿!テストはどうだ・・・・たで・・・・・ござ・・・・」


授業と授業の間ですらも






「旦那ぁ〜!!!」





佐助はあたしのそばで幸村に手を振っていた。
しかも必ずと言っていいほどあたしの体のどこかに触れながら。

腹も黒い!コイツ!!





「・・・・佐助ぇ〜・・・・」

「ん?」


そして今日、また前とおなじようにパンをほおばりながら佐助はあたしを見た。


「今日で三日目だけど・・・・」

「そーだなぁ〜」

「効果出てんの?これ!!」

「でまくりだって」

「あたしには日に日に幸村から元気がなくなってるようにしか見えないんだけど・・・・」

「・・・今日でラストにするからまぁ待ちなって。」


「んじゃまた後で!」と手を上げて彼はチャイムとともに自分の席へと戻っていった。





授業が始まってからもしばらくあたしは前の方でぐてぇーっと机につっぷす(そして先生に怒られる)幸村の事ばかり考えていた。

いつも幸村の事ばかり考えてるけど。
でも今日はわけが違う。



嬉しいような心苦しい作戦。
幸村は態度に出やすくてわかりやすいから嬉しいけど、その分こっちとしては罪悪感でいっぱいになる。


やっぱりあたしから告白するべきなのかな・・・・・


そんなことが頭をかけめぐった。
これ以上やって嫌われちゃったらどうしようとか、
他の子を好きになったらどうしようとか、


いやなことばかりが頭を過ぎって授業なんて集中できるわけもなく、一日が終わろうとしていた。









「ごめん!!なんか俺呼び出し食らっちゃって!!!先に帰ってて!」





ホームルームが終わってすぐに佐助があたしの席に来て申し訳なさそうに手を合わせる。
あたしはぶんぶんと横にかぶりを振った。


「全然!!!大丈夫だよー・・・・っていうか待ってようか?別に用事も何もないし。」

「マジ?やった!俺様急いで帰ってくる!!」

ニッと笑うと彼は鞄をしょって走って教室を出て行った。
あたしは黙ってその背中に手を振る。




それからどれくらい時間がたったのだろう。




ダンダンと教室からは人がいなくなっていき、
いつのまにかあたし一人になっていた。

ぼーっと席に座ったまま頬杖を付いて前を、幸村の席を見ていた。




そういえば最近幸村の笑顔見てなかったっけ。
あいつがすっごい嬉しそうに笑ってあたしのそばに駆け寄ってくるだけで自然と笑みがこぼれる、
単純な自分。
大好き。
いつからスキとかそんなことは忘れちゃうくらい、気が付いたら教室であの笑顔を探してる。


告白してもらおうなんて高望みだったのかな・・・・・・

あたしがため息を漏らしたその時だった。




ガタ



後ろのドアの方で音がした。





「佐助?」


ずいぶん早く用事がすんだね。と思いながら、あたしが振り返ったとき、



そこにたっていたのは佐助じゃなくて





「・・・・・・・・・。」








「・・・・・・・ゆ、き・・・・・むら?」









息を切らた


あたしの一番会いたかった人。





走ってきたのか、彼は肩で息をしながら膝に手を置き前かがみになっていた。
あたしが「どうしたの!?」と椅子を引き彼のそばへと近づこうとしたとき、あと2メートルと言ったところで幸村ががばっと前を向き視線がぶつかった。
りりしい眉にまっすぐな瞳。
あたしの足は自然と止まる。


「・・佐助が・・・教えてくれたのでござるよ!」

「何を?」

殿が、ひ、一人で教室にいると・・・・・・。」

「・・・・え。」


それってわざわざあたしに、あたしに会いにきてくれたってこと?
そんなに息を切らせて?
そう思っただけで、体中が暑くなった。



「・・・・・・・・・殿!!!」

「は、はいっ!!」

「そ、某は・・・・某は・・・・・・・!」



顔を真っ赤にさせて、
それでもあたしから視線をそらさない彼にぎゅうと胸が締め付けられる。


「某は・・・・・っ!!!」


ぎゅっと拳を握る、幸村。


「幸村・・・・?」





「・・・・・そ、それ、某は・・・・・・!」

「幸村・・・・。」


「・・・・くぅ・・・な、情けない・・・・!こんな簡単な一言が、口から出てこないとは・・・・・」


「幸村、もう・・・・・・・」


殿・・・・・殿が・・・・・・・・・・・」


もうあたしはいてもたってもいられなくなって




「・・・・・馬鹿幸村!!」


「うぬぅ!!!!?殿!!!?」







勢いをつけて彼に飛びついた。
トレードマークの赤い鉢巻がヒラヒラとゆれて


そのまま二人冷たい床に倒れこんだ。
誰もいない教室にどさっと静かな音だけがこだまするように響く。




殿!?な、な・・・・・」

「うるさい。破廉恥でござる!は今はなし。」



思いっきりぎゅーっと抱きしめると、彼もおずおずとあたしのジャケットの裾をギュッと掴んでくれる。
そんなかわいいところも大好き。そう思ってあたしはもう一度彼を抱きしめなおした。



「こ、これは・・・・普通の友達なら・・・・あ、あたりまえの事なのでござるか?」






「んーん、違うよ」






「し、しかしこの間佐助が・・・・!」

顔は見えないものの、きっと頬を紅潮させているであろう幸村はへろへろした声で小さく言う。
少しだけ開いた窓からは柔らかな風がそっと入ってきて、あたし達の頬をなでた。







「これは特別な人にしか出来ないことなんだよ。」






「・・・・・・っ!、殿は・・・・佐助を想っているの、で、は・・・・ないのでござるか?」




「違うよ。」

「さ、佐助を、佐助を好いているのではござらんのか!?」

「佐助は好きだけど、特別な好きじゃない。」





ゆっくりと体を離せば、顔を真っ赤にして、口をパクパクとさせる幸村の顔が飛び込んできて、
自分のやったことの恥かしさなんてどっかに飛んでいくぐらいかわいいと思えた。

あたしは小さく深呼吸して、幸村を見る。






「あたしがずっと想ってたのは前も今も幸村だよ。・・・・・・大好き。」






彼は目を見開いた。




今までずっとためらって言い出せなかったこと。
バカみたいに思える。
なんでもっと早く自分から言わなかったんだろう。
変なプライドが邪魔してずっとずっといえなくて
告白するんじゃなくて絶対されたい!なんて思ってた自分がホントにあほすぎる。
今はどうでもいい。




ふう、と一息ついてから、そろそろどいてあげようと思い、身を少し後ろに持っていこうとした時、
手首ををつかまれ軽く引き寄せられる。





「ゆ、幸村!?」


突然の事であたしの頭は真っ白になる。
掴まれたところが熱い。
心臓がこれでもかといわんばかりにドクドクと脈打っていた。






「い、今は破廉恥でござるは・・・・な、なしなのだな!?」

「う、うん・・・・」




小さく頷くと、幸村は頬を赤く染めながらふうと息を吐く。




二人の間には今までにない緊張感が張り詰める。












「それ、がし・・・・は・・・・・某はずっと殿を好いておりましたぁ!!」





「・・・・・・・っ!」
















あたし達以外には誰もいない教室に幸村の声が響き渡る。


あたしにしか聞こえない言葉。


あたし以外には響かない告白。




嬉しくて嬉しくて




殿!?」





もう一度幸村に抱きついた。







幸村以上に真っ赤になった顔は



前の扉のそばでにっこりと笑ってみせる佐助以外にはきっと誰も見ることの出来ない顔だと思う。




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すしこちゃんへ捧げる学園バサラ夢。
やったことは愚か、見たことないため似非度は半端ないけど
愛だけはたっぷり込めて作りました。
だから一言言わせて。
嫌いにならないでぇええーーーー!!!!!

ここまで読んでくださってホントにありがとうございました!!!